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052 祭りラッシュ

まさに怒涛の祭りラッシュだった。


二日間にわたる『東北祭り』は、王都の住民たちの度肝を完全に抜き、そして王都全体をかつてない熱狂の渦へと巻き込んでいった。




初日の口火を切ったのは『盛岡さんさ踊り』だ。

「サッコラチョイワヤッセ!」という威勢の良い掛け声とともに、数え切れないほどの太鼓と笛の音が、王都の石造りの街並みに反響した。揃いの浴衣を着たプレイヤーたちが、軽快なリズムに合わせて一糸乱れぬ群舞を披露しながら大通りを進む。やがて見よう見まねで住民たちも踊りの輪に加わり始め、街中が凄まじい一体感と熱気に包まれた。




そして日が落ちてから登場した『青森ねぶた祭』は、まさに圧巻の一言だった。

建築クランが文字通り寝食を忘れて作り上げた巨大な武者人形の山車(ねぶた)が、内側に仕込まれた魔法の光に照らされて、暗闇の中に鮮烈に浮かび上がる。「ラッセラー、ラッセラー!」という腹の底に響くような掛け声とともに、跳人(はねと)と呼ばれる踊り子たちが乱舞し、巨大なねぶたが王都の大通りを睨みつけながら練り歩く。その勇壮で大迫力な光景は、異世界の人々にとって間違いなく未知の衝撃だったはずだ。




続く二日目。


夕闇が迫る王都を華やかに彩ったのは『山形花笠まつり』だ。

「ヤッショ、マカショ!」という威勢のいい囃子ことばとともに、真っ赤な紅花をあしらった無数の花笠が、波のように一斉にひるがえる。力強くも艶やかな群舞が、提灯の明かりに照らされ始めた通りを鮮やかに彩り、沿道を埋め尽くした住民たちから割れんばかりの拍手と喝采を浴びていた。




そして夜もすっかり更けた頃、祭りの熱気を締めくくったのが『秋田竿燈(かんとう)まつり』である。

数十個の提灯が連なる十メートル近い巨大な竹竿を、プレイヤーたちが手のひら、額、肩、腰と見事に移し替えてみせると、観衆からは幾度も感嘆のどよめきが上がった(中には密かに身体強化系のスキルを使っていた奴もいただろうが)。「ドッコイショー、ドッコイショ」という掛け声に合わせ、黄金の稲穂のように夜空で大きくしなる光の列は、幻想的でありながらどこか神聖な美しさすらあり、住民たちの目を釘付けにしていた。




――そして今。


俺は、神社の前に広がる日本人街の通りに立ち、風に揺れる優雅な飾りを見上げていた。

通りを埋め尽くすように頭上から垂れ下がっているのは、色とりどりの紙で作られた巨大なくす玉や、豪華絢爛な吹き流し。『仙台七夕まつり』の装飾だ。




シュウが苦労して取りまとめた屋台からは美味そうな匂いと活気ある声が響き、浴衣姿のプレイヤーと、見慣れない食べ物を片手にはしゃぐ王都の住民たちが、笑顔でこの空間を共有している。

心地よい疲労感の中、俺は腹の底からじんわりと湧き上がってくる充実した達成感を噛み締めていた。


俺たちプレイヤーのただの郷愁から始まったこの異世界での祭り。


それが、いつかただの『異邦人の奇祭』で終わるのではなく、この王都の住民たちと俺たちの間に新しい文化として深く根付いてくれたらいいと、心から思う。


「さて、来月のお盆の準備も手伝ってやるか……」


涼やかな風に揺れる色鮮やかな吹き流しを眺めながら、俺は次の途方もない祭りラッシュに思いを馳せ、静かに微笑んだ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『星評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


7:00・12:00・18:00に投稿予定。

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