045 宴会
俺は新たに、農業を手伝ってくれるテイムモンスター、ノームを増やすことにした。
「テイムモンスターを同時に操作できるのは、百体までなんだろ? これ以上増やしても意味ないんじゃないか?」
目的の山へ向かう道中、テツがもっともな疑問を口にした。
「実は近々、農業教室を開こうと思っててな。そこでノームを使った大量生産を教えたいから、プレゼント用に少し数を増やしておきたいんだよ」
「なるほどな。相変わらずマメなこった」
シュウが感心したように頷く。
やがてノームが生息する山に到着する。
俺はアイテムボックスから大きな布を取り出して地面に広げる。
「それじゃシュウ、頼んでたやつを頼む」
「はいよ」
シュウは布の上に、アイテムボックスから取り出した料理を次々と並べていく。香ばしく煎られた木の実、ホクホクのジャガイモ料理、瑞々しい果物に焼きたてのパン、そしてとろけるような甘さのハチミツ菓子。たちまち辺りに甘く食欲をそそる匂いが漂い始めた。
準備を終え、俺たちは少し離れた木陰に腰を下ろしてのんびりとくつろいだ。
「これでノームたちが出てくるのを待つだけか?」
「そういうこと。……どうだ? 2人も少し農業やってみるか?」
俺が軽く誘ってみると、テツは少し考えてから答えた。
「やるとしたら、お祭り実行委員会の仕事が落ち着いてからかな」
「俺は自分で使う分だけこだわって作ってみてもいいが……結局、ゲンに頼んだ方が美味しい野菜ができそうだからな」
シュウが笑いながら肩をすくめる。
そんな他愛もない雑談をしていると、いつの間にか布の上にはわらわらと大勢のノームたちが集まり、勝手に大宴会を始めていた。
「おい、いつの間にか来てるぞ。捕まえないのか?」
シュウが身を乗り出すのを、俺は手で制した。
「まだだ。あいつら、腹いっぱいになって満足してからテイムしないと、忠誠度が低いんだよ」
「へえ、宴会が終わるまでこのまま待つのか」
「そういうこと」
美味そうにハチミツ菓子を頬張る小人たちを眺めながら、俺はふと気になっていたことを口にした。
「なあ、2人は国外……つまり、このグランパレス王国の外にフレンドっているか?」
「うーん……俺は初期位置の王都からずっと動いてないからな」
「俺も同じく」
「そうか……」
俺が小さく息を吐くと、シュウが不思議そうに首を傾げた。
「どうした?」
「ん? いや、他の国の食料事情はどうなってるのかなと思ってな」
伯爵から聞いた国内の深刻な食糧危機。もし他国も同じ状況なら、いずれ国境を越えた大きな問題になりかねない。
「今から俺たちが心配しても仕方ないだろ。もう、なる様にしかならないさ」
テツがひどく現実的な意見を言う。
「そうなんだけどな。先手が打てるなら打っときたいなって思ってさ」
「まあ、俺たちにできることと言ったら、今のうちに食料を多めに備蓄するぐらいしか対処法はないかな」
「……それしかないよな」
楽しげに飲み食いするノームたちの宴会をぼんやりと見つめながら、俺たちは答えの出ない話をぽつぽつと続けるのだった。
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