038 祝勝会
道を塞いでいた大木をかたづけ、隠れ家ギルドに戻った俺たちは、カウンター席でささやかな賞金首討伐成功パーティーを開いていた。
「どうなることかと思ったが、何はともあれ無事に帰って来て良かったな」
ヒゲのオヤジさんがジョッキを片手に、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。
「オヤジさん、笑ってないでこいつ、なんとかしてよ!」
「ゲン殿ー、お祝いのチューしてー。頑張ったご褒美にチュー」
俺の腕にべったりと張り付いているのは、くノ一のアザミだった。頬を真っ赤に染め、とろんとした目で俺を見上げながら、遠慮なく体をすり寄せてくる。
「エール1杯で酔いすぎだろ! それでもくノ一か!?」
「ううー、ゲン殿ぉ。くノ一だからって嫌いにならないでー。何でもするでござるからー」
「こ、これだから酔っ払いは……!」
俺が必死に引き剥がそうと格闘していると、オヤジさんがチャリン、と鍵をカウンターに置いた。
「ゲン、これを使え。二階の一番奥の部屋だ。明日の朝まで好きに使っていいぞ」
「いやいやいや! 酔っ払いを連れ込んで何かしようなんてしないよ!」
「でもなー。もう寝ちまったし、誰か部屋まで運んでくれると助かるんだがなー」
オヤジさんの言葉に横を見ると、ついさっきまで俺に絡みついていたアザミが、カウンターに突っ伏して寝ていた。
「お前、騒ぐだけ騒いどいてこんなとこで寝るなよ……」
「ムニャムニャ……」
「はぁ、仕方ないか。ベッドに運ぶだけだからな」
俺はため息をつき、アザミを背負い上げる。
ふとフロアのテーブル席を見ると、リンがまだカードゲームで爆死したショックから立ち直れず、机に突っ伏してピクリとも動いていなかった。あっちもあっちで世話が焼けるが、今は酔っ払いのくノ一が先だ。
階段を上り、二階の一番奥の部屋へ。
そっとベッドにアザミを下ろそうとした、その瞬間だった。
ガシッ!
「ア、アザミ!?」
寝転がった彼女の腕が、俺の首に力強く絡みついてきた。そのままベッドに引きずり込まれる。
「ううー……もう1人は嫌……どこにもいかないで……ぐずっ……」
耳元でアザミが、小さくしゃくりあげる。
クランで居場所をなくし、ずっと一人でソロ活動をしていた彼女の孤独が少し見えた気がした。
「……よしよし、どこにも行かないよ」
俺は彼女の頭を優しく撫でた。
すると、アザミの腕の力がさらに強まる。
「お、おい! 強いって、首が、おい!」
「スゥ……スゥ……」
「ギブ、ギブ! 首絞めは、ほんとに……ッ!」
ギリギリと首が絞め上げられる。
くノ一の見事なホールドから抜け出すことはできず――そのまま、俺の意識はゆっくりと遠のいていった。
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