034 闇属性
「俺のターン! ドロー!」
シャッ、と小気味良い音を立てて山札からカードを引き抜く。
俺が組み上げたのは、低コストユニットを大量に並べる軽量ゴブリンデッキだ。序盤から息つく暇も与えず、数とスピードで相手を圧倒する。
「いけ、『ゴブリン・ライダー』! さらに『ゴブリン・ファイター』を2体召喚だ!」
「チッ、相変わらずせっかちな戦い方だな。だが、甘い」
対するシュウが操るのは、エルフデッキ。マナを溜めて強力なユニットを展開しつつ、陣形を整える中速特化の構成だ。
シュウは手札から流れるような手つきでカードを場に置いた。
「俺は『深緑のトレント』を召喚。さらに『エルフの弓兵』の能力で、お前のゴブリン・ライダーを迎撃する」
シュウの場に分厚い装甲を持つ樹木兵と、鋭い矢を番えるエルフが現れる。あっという間に俺のゴブリンが1体、矢の餌食となって墓地へ送られた。
だが、俺の狙いはそこじゃない。
「樹木兵は防御が硬いが、火には弱いって相場が決まってるんだよ! 俺は魔法カード『狂乱の松明』を発動! 全てのゴブリンの攻撃力をアップさせ、さらに木属性ユニットへの特効を付与する!」
「なっ、全体バフだと!?」
「質より量だ! 燃やし尽くせ、総攻撃!」
強化されたゴブリンの群れが、松明の炎でトレントの防御をあっさりと突破し、そのままシュウのライフポイントに直接攻撃を叩き込んだ。
ピピピッとシステム音が鳴り、シュウのライフがゼロになる。
「……負けたか。押し切られるとはな」
「へへっ、どんなもんだ」
シュウが悔しそうにカードを片付けていると、隣のテーブルから何やら不穏な声が聞こえてきた。
「うふふふ……さあ、テツさん。もう終わりですよ」
「おいおい、嘘だろ……」
視線を向けると、コントロールデッキを握るテツが、額に脂汗を浮かべていた。
テツの戦術は、打ち消しや除去で序盤の攻撃を凌ぎ、強力なクリーチャーや魔法で盤面を制圧するという堅実なものだ。しかし、その盤面は今、見るも無残な状態になっていた。
対するリンの場には、禍々しいオーラを放つ闇属性のカードがズラリと並んでいる。
「魔法カード『サキュバスの囁き』で、あなたが大事に抱え込んでるその手札、2枚捨てなさい」
「くそっ、またハンデス(手札破壊)かよ! 俺の切り札が……!」
テツが泣く泣く手札を墓地へ送ると、リンは恍惚とした笑みを浮かべた。
先ほどまで「希望がー」と床に突っ伏していた女と同一人物とは思えない。完全に悪役の顔になっている。
「お前、初心者だろ……なんでそんないやらしいプレイングができるんだよ……」
「システムのアシストが優秀なのよ! 『このカードが最善手です』って、教えてくれるんだから!」
「そのシステム、性格悪すぎないか!?」
テツの悲痛な叫びも虚しく、リンはさらに追撃の手を緩めない。
「とどめよ! 『精神崩壊』! あなたのデッキの上から5枚を墓地に送るわ!」
「ああっ! 俺のデッキが空に……!」
ライフポイントが残っているにもかかわらず、テツに敗北のシステム音が無情に鳴り響いた。
「勝ったぁー! なにこれ、すっごいストレス解消になるわね!」
両手を挙げて歓喜するリンと、灰のように真っ白になって燃え尽きているテツ。
俺とシュウは顔を見合わせ、ただ無言で苦笑するしかなかった。
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