031 チャグチャグ馬コ
6月の第2土曜日。
予定通り『チャグチャグ馬コ』が開催された。
チャグチャグ馬コとは、日頃の農作業で活躍する馬の労をねぎらい、無病息災や豊作を祈る岩手県の伝統行事だ。鮮やかな衣装とたくさんの鈴で飾った馬を引き連れて行進する、なんとも風情のある祭りである。
「かしこみー、かしこみー……」
神社の前にずらりと並んだモンスターたちの前で、すっかり神主姿が様になったテツが、朗々とした声で祝詞を詠み上げる。祭壇の前には、今日のために集まった参加者とテイムモンスターたちが静かに首を垂れていた。
厳かな雰囲気の神事が終わると、いよいよパレードの開始だ。
「よし、行くぞ」
先頭を務めるのは俺だ。
俺は色鮮やかな衣装で豪華に着飾られ、体に無数の鈴を取り付けた相棒のレッドホースの手綱を握り、ゆっくりと歩き出した。
シャンシャン、チャグチャグ……。
レッドホースが踏み出す一歩ごとに、首元や鞍に取り付けられた無数の鈴が賑やかな音を奏でる。この心地よい鈴の音が祭りの名前の由来というわけだ。
俺のすぐ後ろには、ダチョウのような巨大な鳥型モンスターにこれまた綺麗な飾り付けをしたシュウが続く。
そしてその後ろには、祭り参加者たちのテイムモンスターがずらりと列をなしていた。巨大な狼や兎、恐竜のような蜥蜴、大きな角を持つ鹿まで、多種多様なモンスターたちが思い思いにドレスアップして歩く様は、まさにファンタジー版チャグチャグ馬コだ。
そして大行列の最後尾を締めくくるのは、これまた立派な飾り付けをされたデカい黒ヤギを曳くテツだ。
今回の行進ルートは、王都の城壁の外周をグルリと回るコースである。
「おい、見ろよ! なんだあの集団は!?」
「魔獣たちが綺麗な服着て行進してるぞ!」
ド派手な大行列と、響き渡る鈴の音に引き寄せられ、王都の住民たちが次々と顔を覗かせてきた。
何事かと目を丸くして見物している彼らに向かって、俺たちは笑顔で手を振る。最初は呆気に取られていた住人たちも、次第に笑顔になり、楽しそうに拍手や歓声を送ってくれた。
爽やかな風が吹き抜ける中、鈴の音と人々の歓声に包まれながら、行進はゆったりとしたペースで進んでいく。
広大な王都の城壁をぐるりと一周し、出発地点の神社へ戻ってきた頃には、参加したプレイヤーもテイムモンスターも、そして見物の住民たちもみんな大満足の表情を浮かべていた。
「お疲れさん、よく頑張ったな」
愛馬の頭を優しく撫でてやると、レッドホースは嬉しそうに鼻を鳴らした。
異世界でモンスターの労をねぎらうというのも不思議な感覚だが、誇らしげな相棒の顔を見ていると、参加して良かったなと心から思えた。
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7:00・12:00・18:00に投稿予定。




