027 麻雀
数日後。
俺たちは、日本人街に新しく建てられた『ゲームセンター』に集まっていた。
ゲームセンターといっても電子音が鳴り響くアーケード筐体が並んでいるわけではなく、ダーツ、麻雀、カードゲーム、囲碁、将棋、オセロなどのアナログゲームが楽しめる娯楽施設だ。日本人街開発プロジェクトの一環として、最近オープンしたばかりである。
今、俺たち四人は雀卓を囲んでいた。
「ねえ、私麻雀のルール知らないんだけど、本当に大丈夫?」
配牌を見つめながら、リンが不安そうに首を傾げる。
「大丈夫、大丈夫。順番に取った牌を前に並べるだけでいいから」
俺が適当に教えながら自分の手牌を整えていると、リンが「じゃあ、これ」と牌を河に置いた。
「よし、それロン!」
「えっ!?」
俺がすかさず手牌を倒すと、リンは目を丸くしてフリーズし、次いでカッと顔を真っ赤にして両腕で胸を隠した。
「ちょ、ちょっと! 私服脱がないわよ!」
向かいの席でシュウが腹を抱えて笑い出した。
「ハッハッハ、ただのお遊びだよ。ナニ想像したの?」
「ここは賭けなしの健全な遊び場だから安心してくれ」
「ぐぬぬ……! 次までにルール覚えて、絶対にボコボコにしてやるんだから!」
涙目で宣言するリンを尻目に、俺は点棒を回収しながら切り出した。
「そういえば、あの後方支援組の連中、王都から姿を消したらしいな」
北門での攻略組解散騒動から数日。彼らは、いつの間にか街からいなくなっていた。
「今まで散々、他のプレーヤーに難癖つけて偉そうにしてたからな。後ろ盾を失って居づらくなったんだろう」
「お手本のような、虎の威を借る狐だったな」
俺の言葉に、シュウが牌をかき混ぜながら同意する。
「おかげで宿屋に大量の空きが出てな。組合長が頭を抱えてたぞ」
テツが渋い顔でため息をついた。
冬が来る前にプレイヤーたちに住まいを用意するため、ベッドが置けるだけの狭い部屋を大量に用意した宿屋だったが、住人が減れば当然その分の家賃収入にも影響が出る。
「まあ、宿屋の数はもう十分だから、次は娯楽施設を増やしたいんだが、何かいい案はあるか?」
テツが皆を見回すと、リンがパッと顔を上げて勢いよく手を挙げた。
「はい、はい、はい! オシャレなスイーツショップ、作ってよ! アフタヌーンティーができるやつ!」
「スイーツショップか……。趣味で菓子作りをしてるプレーヤーは沢山いると思うけど、趣味と仕事は別物だからなー」
最近はラーメン作りが飽きたと言って、本格スパイスカレーの開発に勤しんでいるシュウ。古参プレーヤーで資産がかなりあるため、気が向いた時だけ道楽で店を開いているシュウがツッコミを入れる。
「えーー! 今までスイーツショップとか無かったの?」
信じられないという顔をするリンに、俺は昔の記憶を辿りながら答えた。
「スイーツはな、大体どこかの企業が出店してて、『今月の新作です』ってタダで配ってたから」
「何そのめちゃくちゃうらやましい状況!」
リンがバンバンと卓を叩いて羨ましがる。
「企業コラボか、懐かしいな。ちょっと前までは当たり前だったのにな」
テツも遠い目をして頷いた。
五感のすべてを再現し世界的な大ヒットを記録していた『AWO』では、現実の企業がゲーム内でプロモーションを行うのはお馴染みの光景だったのだ。
「広場とかで、新商品のジュースなんかもよく配ってたよな。ポーション代わりになるから、初心者だった頃はずいぶん世話になったな」
シュウも懐かしそうに目を細める。
「不味すぎて死んだほうがマシっていうジュースもあったな」
「ははは、あった、あった懐かしー」
「おっ、そういえば……」
俺はふと思い出し、アイテムボックスを検索した。
「その伝説的に不味いジュースが、まだアイテムボックスの中に残ってるんだけど……これ、飲めるかな?」
俺が取り出したペットボトルのジュースを見て、リンは心底ドン引きしたような顔を作った。
「……何年前よ、絶対にお腹壊すからやめときなさい」
「アイテムボックスの中なら時間は止まってるはずだから、いけると思うんだけどな……」
「何の罰ゲームだ!」
「うわ……味の記憶が蘇ってきた……」
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7:00・12:00・18:00に投稿予定。




