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020 シルバーバイソン

オヤジさんからの依頼を受け、肉不足解消のために俺は行動を開始した。

まあ、鶏が出荷できるまでの間は、頑張ろう。


初めてスライム討伐に向かった時のように、ガチガチの装備で行くのはやめて、王都の店売りの一番良い軽鎧とマントに身に包み狩りに行く。


王都郊外の平原に出た俺は、テイムモンスターである『レッドホース』の背に跨り、風を切って草原を駆けていた。


「おっ、いたいた」


遠くの草むらに、銀色の毛並みを持つ立派な野牛――『シルバーバイソン』を発見した。

俺はレッドホースの足を止めさせ、魔法銃を構える。スライムを消し飛ばしたような一撃必殺の狙撃銃ではなく、今回は威力を抑えたほどほどの強さの魔法銃だ。


パーンッ!


乾いた銃声が響き、麻痺が付与された弾がシルバーバイソンに着弾する。シルバーバイソンの体が横倒しになり麻痺の効果で身動きが取れなくなる。


「よし、今だ!」


俺はすかさずテイム用の『モンスターボックス』を取り出し、弱ったシルバーバイソンに向かって投げつけた。


ポンッ! という軽い音とともに、巨大な野牛が光となってボックスの中に吸い込まれ、見事に捕獲完了の合図が点灯する。


なぜこの場で倒してしまわないのか。

実は、モンスターを倒して『ドロップアイテム』として肉を狙うのは、完全な確率ドロップなのだ。運が悪ければお目当ての肉は落ちない。


だが、こうして生け捕りにして『解体場』に持っていけば、ドロップアイテムで肉を狙うことなく、肉や革といった素材が部位ごとに確実に手に入るのである。ドロップアイテムでしか手に入らないアイテムは入手できなくなるが、どうしても肉や革が大量に必要な時には、この『生け捕り&解体場持ち込み』が一番効率のいい方法なのだ。


ちなみに、この手のラノベでお馴染みの『解体スキル』なんてものもこの世界には存在するんだが、スキル習得のために血生臭い作業を延々と繰り返すのは、現代日本で都会暮らしをしていたサラリーマンの俺には、難易度が高すぎた。餅は餅屋、解体はプロに任せるのが一番である。


「よし、この調子でもう少し狩っていくか」


次なる獲物を探して再びレッドホースを走らせていると、初夏を思わせる少し暖かな風が草原を吹き抜けていった。


心地よい風を全身で受けながら、ふと考える。

俺たちがこの世界に転移してきたのが、ゴールデンウィークの初日である五月三日。そこから炊き出しやら日本人街の建設やらでドタバタと過ごしてきたが、暦の上ではもう五月の後半に差し掛かっている。


「……そういえば、五月後半といったら『お田植え祭』の時期か」


子供の頃、曽祖父が住んでいた田舎で見た『お田植え祭』を思い出し、思わず独り言が漏れる。

本来なら農家にとって、田植えは一年の豊穣を祈る重要な神事であり、季節の風物詩だ。


「すっかり忘れてたな。ノームたちの植物成長魔法を使って、季節なんか完全に無視して毎日大量の米を作ってたから、すっかり感覚が狂ってた」


便利すぎるスキルのおかげで、季節感というものが完全に欠落してしまっていたらしい。


だが、せっかく思い出したのだ。

日本人街建設で忙しいプレーヤー、過酷な現実を突きつけられて塞ぎ込んでいるプレイヤーたちも、日本の懐かしい祭りがあれば、少しは気晴らしになるかもしれない。


それに、美味いものを食べて騒ぐのは、平穏なスローライフの醍醐味でもある。


「よし! 肉の調達が終わったら、シュウやテツたちに相談して、『お田植え祭』を開催してみるか!」


新たな目標ができたことで、俺の狩猟ペースは自然と早まっていった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『星評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


7:00・12:00・18:00に投稿予定。

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