019 肉
ある日、リンから「ギルドマスターが呼んでるわよ」と連絡が入った。
ここ最近は日本人街の建設やで忙しく、隠れ家ギルドにすっかり顔を出していなかった。
「最近行ってないし、何だ?」
「依頼なんて、最初に行ったスライム討伐しか受けてないぞ……」
「まさか、受けてくれないからって高レベルの依頼を強引に押し付けられるんじゃ……」
三人で顔を見合わせ、あれこれと心配しながら、俺たちは隠れ家ギルドへと足を運んだ。
古びたドアを開けて店内に入ると、カウンターの奥から白ヒゲのオヤジさんが太い声をかけてきた。
「おう、よく来たな! まあ、座れや」
俺たちは恐る恐るカウンターの丸椅子に腰を下ろした。
「久しぶり、オヤジさん」
テツが挨拶を返すと、オヤジさんは手元のジョッキを拭きながら言った。
「なんか、忙しいらしいな。ニホンジンガイってのをつくってるらしいな。住民の間でも話題になってるぜ」
「おお! そうなのか!」
俺が驚いて声を上げると、オヤジさんはニヤリと豪快に笑う。
「おう、うまい飯が食えるって話題だぜ」
「俺も近くで店を出してるんだ、食べに来てくれよ」
シュウがすかさず自分の店をアピールすると、オヤジさんは太い腕を組んで頷いた。
「おう、またな」
世間話が一区切りついたところで、テツが単刀直入に尋ねた。
「で、今日俺たちを呼び出したのは、何の用だ?」
「おう、そうだった」
オヤジさんは思い出したように手を叩くと、一転して渋い顔つきになった。
「実はな、肉が不足してるんだ」
「今度は、肉か……」
野菜や穀物の供給が落ち着いたと思ったら、次の課題が浮上したらしい。俺が思わずため息をつくと、オヤジさんがすがるような視線をこちらに向けてきた。
「ゲン、おめーさん農場を経営してるんだろ? なんとかならねーか?」
「ニワトリ、ウサギ、ブタを飼い始めたが、まだまだ成長してないぞ。ニワトリは、もう少し待ってくれ」
大規模農園で畜産も始めてはいたが、出荷できるほど育つにはまだ時間がかかる。
「何でもいいから肉を調達する依頼を出しては、いるんだがな……」
オヤジさんが困ったように頭をかく。
「とりあえず大豆でタンパク質を取ってくれ」
肉の代用品として俺が提案すると、オヤジさんはポカンと首を傾けた。
「タンパクシツ? 何だそれは?」
タンパク質の説明したところで信じてもらえるかどうか。
「試しに雁擬き(がんもどき)でも作ってみるか」
雁擬きは本物の肉を求める王都の住民に、受け入れられるのか。
困ったなー、と俺たちは揃って腕を組み、頭を抱えるのだった。
ちなみに後日、シュウが雁擬きを作ってオヤジさんに食べてもらったところ、「美味いことは、美味いが、肉ではないよな」と至極もっともな感想をもらうこととなった。
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