↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
18/53

018 攻略組

日本人街にできた初の娯楽施設(?)。


銭湯、松の湯。


この世界には【クリーン】という洗浄魔法があり、自分を対象に発動させればお風呂要らずなのだが、やはりそこは日本人、広い湯船でゆったり命の洗濯がしたいという欲求には抗えなかった。


肩までお湯に浸かり、火の精霊モンスター『サラマンダー』が沸かした絶妙な湯を堪能していると、隣でテツが声を潜めるようにして切り出してきた。


「ゲン、シュウ、聞いたか?」

「ん? 何かあったか?」


顔の汗を拭いながら尋ねると、テツは湯船の縁に腕を乗せて深く息を吐いた。


「攻略クランに、日本に早く帰還したい連中が合流してな。本格的に、アップデートで追加された場所の探索を開始するみたいだぞ」


「なるほど、まあ色々あったからな……。ところで、その追加された場所ってのはどこなんだ?」


「王都の北の山岳地帯だ。そこに新しいダンジョンが出来たらしい」


テツの言葉に、シュウがお湯の中で腕を組み、渋い顔を作った。


「攻略組もプレッシャーかけられて大変だな。連中だって、本当なら自分たちのペースで攻略を進めたいだろうに」


「そうだな……。で、その日本に帰りたがってる連中ってのは、前線で戦えるレベルなのか?」


「いや、戦闘には出ない。主に後方支援らしい」


「……安全地帯から口だけ出して、プレッシャーをかけるだけか。なんか嫌な感じがするな」


俺のぼやきに、二人も無言で頷いた。


死んでも復活するとはいえ、リアルの痛覚と死の恐怖を味わうリアル化したAWOで、他人のために戦うというのは、そう単純な話ではないはずだ。


「……まぁ、俺たちが首を突っ込む話じゃないか」


俺たちは湯船から上がり、脱衣所で火照った体を冷ましつつ、コーヒー牛乳をぐいっと飲み干した。腰に手を当てて飲むこの一杯は、やはり格別だ。






朝風呂を堪能し、銭湯の外へ出た時のことだった。


ガチャ、ガチャと重たい金属音を響かせながら、高レベルの武装に身を包んだ一団が、目の前の神社へと入っていくのが見えた。


「何だ、あいつら?」

「さっき風呂で話した攻略組だ」


テツが少し眉をしかめつつ教えてくれる。見れば、数十人規模の立派なパーティーだ。


「なるほど。これからダンジョンに向かう前に、神社に参拝して早く帰還方法が見つかるように祈願ってところか」


シュウが感心したように言うが、俺はどうにも気にかかることがあった。


「それにしても、あの攻略組の武装してるヤツら、随分と浮かない顔をしてるな」


彼らの顔には、未知のダンジョンに挑む高揚感も、先陣を切る誇りも見当たらない。ただ、重圧に押し潰されそうな悲痛な表情を浮かべている者が多かった。


「ただのゲームじゃなくて、他人の人生を背負う『使命』になっちまったからな」


テツがぽつりとこぼす。


「こんな世界に変わったんだ。攻略組の中だって、本音を言えば参加したくない、安全な街で暮らしたいってヤツもいるだろうに……」


シュウが気の毒そうに目を細めた。その視線の先は、武装した攻略組の後ろをぞろぞろと歩いている、普段着のプレイヤーたちだ。


「……後ろにいるあの武装してない連中が、例の後方支援組か」


神社へと歩を進める前衛たちに向かって、後方支援組の連中が口々に声をかけているのが聞こえてきた。


「絶対クリアしてくれよな!」

「早く日本に帰らせてくれ!」

「頑張れー!」


その期待と哀願が入り混じった無責任な声援は、これから未知のダンジョンへ向かう者たちの背中を、より一層重く沈ませているように俺には見えた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『星評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


7:00・12:00・18:00に投稿予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。