017 神社
数日後。
順調に資金が集まった『日本人街開発組合』は、王都南門外の広大な土地を正式に購入した。
そしていよいよ、計画の第一歩である神社の建設に取り掛かることになった。
まずは地鎮祭だ。
転移したプレーヤーの中に神主さんがいるか探してみたが、残念ながら見つけられず、現場監督であるテツが見様見真似で神主を務めることになった。
祭壇には、酒、餅、魚、塩の他に、俺が育てた米と縁起物である『ん』がつく野菜――れんこん、にんじん、なんきん(カボチャ)が供えられている。
俺とシュウ、そしてリンも組合員として列席し、テツが「かしこみー、かしこみー」という少し胡散臭い祝詞を奏上する。
ファンタジー世界でやるにはかなりシュールな光景だったが、何事もなく無事に地鎮祭は終了した。
「よし、それじゃあ始めるぞ」
テツが神社の設計図を取り出した。
「――建築スキル【神社】!」
建築スキル。建築に必要な知識と技術を習得していれば、設計図と材料さえあれば短時間でどんなものでも建築可能なご都合主義スキルだ。
ホワイトビーバーたちが切り出してきた木材が、眩い光の粒子とともに勝手に組み上がっていく。
ものの数分で、何もなかった更地に立派な神社が完成した。
「鈴と縄を取り付けて、完成!」
「よし早速、参拝するか」
二礼拍手一礼で参拝した俺は、神社の境内を見渡しふと首を傾げた。
「……なぁテツ、ちょっと境内のスペースが広くないか?」
神社の前は、不自然なほどに広いスペースが余っている。
すると、腰に手を当てたテツがニヤリと笑った。
「ここで将来、祭りとかをやる予定だからな。屋台を並べるスペースや、盆踊りの櫓を組む場所として広く取ってあるんだ」
「なるほど、そこまで見越した都市計画ってわけね」
隣で話を聞いていたリンが、腕を組んで感心したように頷く。
「ま、そういうことだ。……さてと、少し時期は遅くなったが、こいつを上げるかな」
テツはアイテムボックスから長い木の棒と、色鮮やかな布の束を取り出した。
手際よく木の棒を突き立て、スルスルと紐を引いていく。
青空に向かって高く舞い上がり、風をはらんでバタバタと音を立てたのは、大きな『鯉のぼり』だった。
俺たちがこの世界にやってきたのは、ゴールデンウィークの初日である五月三日。確かに遅めの端午の節句だ。
異世界の澄み切った空を優雅に泳ぐ鯉のぼりを見上げながら、俺たちはほんの少しだけ、懐かしい故郷の風を感じていた。
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7:00・12:00・18:00に投稿予定。




