012 魔法の鍋
昼。
高く昇った太陽が、開墾されたばかりの広大な農地を照らしている。
俺たち三人は休憩時間のノームたちに、鶏肉と卵を入れた『親子がゆ』を木製の器に次々とよそっていた。
ずんぐりとしたノームたちは、器を受け取りハフハフと美味しそうに熱々のおかゆを頬張っている。
「ほーら、熱いからヤケドしないように食べるんだぞ」
「いやー、初期の料理系イベントで手に入れた『魔法の鍋』が、まさかこんな形で役に立つとは思ってもみなかったよ」
湯気を立てる鍋をお玉でかき混ぜながら、シュウがホクホク顔で笑った。
王都での炊き出しの相談をするため、シュウがフレンドの料理人プレイヤーたちとメッセージをやり取りしていたところ、その中の一人が「そういえば、昔のイベントで配られたあの鍋が使えるんじゃないか?」と提案してくれたらしい。
ぶっつけ本番で二万人の炊き出しに使う前に、まずは試しにと、労働で腹を空かせた百体のノームたちに振る舞っているところだ。
この鍋の使い方は、驚くほど簡単だった。
鍋の中に一食分の水と米、具材を入れ、「鍋よ鍋! 煮ろ!」と魔法の言葉を唱えるだけ。すると、なんと鍋から無限におかゆが湧き出してくるのである。
湧き出すのを止めるときは、「鍋よ鍋! 止まれ!」と唱えれば止まる仕様だ。
魔法の鍋を感心したように眺めながら、テツが腕を組んでぽつりと呟いた。
「魔法の鍋から、おかゆが無限に湧き出す……。元ネタは、グリム童話の『おいしいおかゆ』だったかな」
「え!? これ、グリム童話が元ネタだったの?」
シュウが目を丸くしてテツを振り返る。
「運営が『おかゆしか作れない変なアイテム配るなぁ』って当時は思ってたんだけど……。そうだったんだ。そういう童話があったのか」
「まあ、日本ではマイナーな話だからな……」
無邪気なシュウに対し、テツはちょっと苦笑するのだった。
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7:00・12:00・18:00に投稿予定。




