第14話 合格
いよいよ、次回はベルクとミュレの再会編です。 0話のラストシーンですね!
できれば明日、伸びても明後日、日曜には投稿予定です。
お楽しみに!
試験から二十日後。
救護院に一通の合格通知が届いた。
三通でなく、一通。
合格通知を見た時、ビビとトイルは肩を落とした。
あの日、試験の帰り道。
話題は自然とテストのことになった。
ビビとトイルは、あの問題が難しかったとか、この問題の正解はこうだったとか、そんな話をしていた。
それから、ミュレにもどう思うか聞いてきた。
ミュレは、その全てに正確に答えてみせた。
ミュレは子供にしては表情の変化に乏しい。
けれどその時だけは、少しだけ得意げだった。
だからビビとトイルは願っていた。
届くなら、二通以上であって欲しいと。
「開けますね」
グレーテが、静かに封を開いた。
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初等学院 一般選抜試験 合格通知
受験番号 87番
氏名 ミュレ
上記の者、一般選抜試験において
合格基準を満たしたことを通知する。
学費 全額免除
入学届出については追って通知する。
本状を届出の証とすること。
ハンクフェン初等学院
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ミュレが文面を覗き込んだ。大きく、目を見開く。
うれしい。
「……やった」
「やったーーー!」
通知を両手で握りしめる。
ミュレは、満面の笑みで飛び跳ねた。
子供にしては感情をあまり表に出さない子が、その時だけは、年相応の子供に見えた。
その姿を、ビビとトイルは少し俯いて見守っていた。
トイルが、小さく「おめでと」と言った。
ビビは何も言わなかった。
唇を引き結んで、横を向いた。
それでも、部屋を出ていくことはしなかった。
グレーテは、通知をもう一度見た。
胸の奥が熱くなった。
ビビとトイルには申し訳ない。
それでも、グレーテは嬉しかった。
グレーテは、ミュレに報われて欲しかったのだ。
勉強を嫌っていたあの子が、なぜあそこまでしたのか。
心当たりがないわけではないが、本当のところは分からない。
ただ、あの子の努力が尋常でなかったことを、グレーテは知っている。
だから報われて欲しかった。
努力や献身は無駄ではないのだと。
昔の話だ。
娘の薬代を賄うため、グレーテの夫は身を粉にして働いた。
怪我をしている日もあった。体力が尽きて、歩くのもやっとという日もあった。
そんな体で、粗末な家のドアを開けて。
「ただいま」
そう言う夫が、愛おしかった。
夫が死んだ時、彼の遺体を前に心底世界を呪った。
こんなことがあって、たまるかと。
こんなにも報われないことは、あってはいけないのだと。
だから今日、私は少し救われた。
全部ではないけれど、救われた。
ひたすら何かのために身を粉にして進むこと。
何かのためだけに、自分を使い果たすように進むこと。
それがいつも報われるわけではない。
そんなことは、嫌というほど知っている。
それでも。
報われることも、あるのだ。
もう少し後、あの世に行ったら夫に話してやろう。
あなたは正しかったのだと。
グレーテが顔を上げると、ミュレはまだ通知を握りしめていた。
皺がつくほど、強く。
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