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第11話 ハンクフェン初頭学院設立

次回は数日ぶりに、ミュレ回です。

明日、明後日ぐらいで更新予定。

トー商会のミリーニャさんから、リストレインの開拓状況に関する報告書を受け取った。


俺がリストレインへ視察へ行った時、一際真剣な眼差しで俺を見ていた人だ。


その目からは、リストレイン開拓事業への責任感と、確かな熱意が感じられた。


以来俺は、ミリーニャさんのことを深く信頼している。


____________________________________

第一次 リストレイン開拓団 報告書 No.13


宛:ベルク・トルガ様


差出:トー商会 リストレイン開拓部主任 ミリーニャ


開拓団二百名のうち、現在の在籍者は百九十四名。


現地の士気はおおむね良好です。


当初から問題だった、木造の住居の強化補修が完了しました。


炊事場、共同倉庫、工具置き場、診療所については問題なく運用できています。


ラウゼ川沿いの排水路は主要部分が完成し、春蒔きの豆類、根菜、一部の麦については収穫まで確認しています。


収量はまだ多くありませんが、開拓地内の食料消費を一部補える程度にはなりました。


また、沿岸部の小魚、貝、干し魚の加工施設の稼働が開始しました。


周辺村からミルフェンへ入る荷も増えており、市場税、通行料、倉庫利用料にははっきりとした増加が見られます。


開拓団員のうち、定住希望を出している者は百三十八名。


家族の呼び寄せを希望する者も増えています。


問題は、読み書きと計算のできる者が少ないことです。


資材の受け渡し、収穫物の管理、工具の貸し出し、労働日数の記録、税と手数料の計算などで、毎日のように人手が詰まっています。


現状は商会側の人員で補っていますが、このまま開拓地が大きくなれば、必ず足りなくなります。


特に、家族の呼び寄せを認めるかどうか。

認める場合、その後の家族の扱いをどうするかは、早めに決める必要があります。


以上、開拓は順調です。

____________________________________


報告書を読み終えて、俺は少しだけ息を吐いた。


順調。


そう書かれているなら、ひとまず悪くはない。


実際、リストレインの開拓は、今のところ大きく崩れてはいなかった。


リストレインの開拓は、まずこのあたりで一番大きな街であるミルフェンの近くにキャンプを作るところから始まった。


近くの森林から木を切り出し、開拓団員が移り住めるだけの住居を用意する。


半年ほどで最低限の住居は完成し、そこから開拓の主軸は農地の拡大や加工施設の建設へ移っていった。


ただ、急いで建てた分、住居には問題も多かった。


乾燥の足りない木材を使った建物もあれば、継ぎ目の処理が甘い建物もあった。嵐で壁や屋根の一部が壊れたこともある。


そこは、農地整備や加工施設の建設と並行して補修してもらった。


七歳の終わりにこの開拓事業を始めた時は、飢饉対策の延長だった。


あれから一年と少し。


食い詰めた人間をただ放っておくよりは、仕事と住む場所を与えた方がいい。


ついでに、将来の領地が少しでも豊かになればいい。


そのくらいの考えだった。


だが、一年以上この事業に関わり、たまに現地へ足を運ぶうちに、リストレインという土地に自然と愛着が湧いてきている。


地図の上の土地ではなくなった。


住む人間がいる。


畑を広げる人間がいる。


魚を干す人間がいる。


家族を呼びたいと言い出す人間がいる。


そういうものを見ていると、もう数字だけでは見られない。


報告書にもある通り、課題はいくつもある。


中でも、頭脳労働者の不足は深刻だった。


開拓団の募集には、飢饉対策という側面があった。


参加者の多くは、飢饉で食い詰めていた人間だ。


結果的に、体力のある若者が多く参加してくれたのは良かった。


木を切るにも、土を掘るにも、荷を運ぶにも、とにかく人手と体力がいる。


ただ、読み書きや計算ができる人間は少なかった。


考えてみれば、当然ではある。


飢饉の時でも比較的安定した職があった人間は、わざわざ開拓団に加わる必要がない。


帳簿をつけられる者。


資材や金の出入りを管理できる者。


文章を書ける者。


そういう人間は、どこでも必要とされる。


生活が多少苦しくなっても、職を失うところまではいかない場合が多い。


だから、こちらとしては積極的に採用しようとしたにもかかわらず、二百人のうち、そういう人間は十人もいなかった。


今は、トー商会から人を借りることでなんとか凌いでいる。


だが、商会の人間は当然ながら安くない。


優秀な人間を借りているのだから、それ自体は当然だ。


当然なのだが、開拓資金から見るとかなり痛い。


医薬品にも金がかかる。


工具は消耗する。


鍬も斧も壊れる。


釘も縄も布も油も減る。


開拓というのは、思っていた以上に金を食う。


そのせいで、当初二年想定で組んでいた予算は、十三ヶ月目にして尽きかけている。


救いがあるとすれば、リストレインからの税収の増加分については、開拓資金に充てていいと父から言ってもらえていることだ。


市場税、通行料、倉庫利用料、加工品の取引。


まだ大きな金額ではないが、徐々に増えている。


このまま伸びてくれれば、想定外の出費を完全に補填することはできなくても、だいぶ助かる。


そういう理由もあり、俺は長期的にトー商会の職員依存を脱するため、人材を育成する学校を作ろうとしている。


ヴァルマには、王都ヴァルムブルクにある中央学術院をはじめ、いくつかの学校はある。


ただ、地方では教育は家庭教師によるものが中心だ。


家庭教師自体、そこまで多くはない。


そもそも教育に多くの金をかけられるのは、貴族や大商人くらいである。


理想を言えば、学びたい人が無償で学べる学校を作りたい。


読み書きと計算くらいは、誰でも学べるようにしたい。


そうなれば、領地全体の底上げにもなる。


だが、無償は無理だ。


俺が破産する。


夢を見るのは自由だが、請求書は現実の顔でやってくる。


なので、まずは家庭教師を雇う十分の一ほどの金を取ることにした。


一人の教師が、多数の生徒に教える。


それなら、家庭教師を一対一で雇うよりずっと安くできる。


もちろん、貴族や大商人の子ども向けの教育と同じ水準にはならない。


礼儀作法、詩文、法律。


そういうものまで教える必要はない。


まずは読み書き、計算ぐらいだ。


教師の確保がしやすいという理由もあり、対象は若年層に絞る。


将来を担う子どもたち向けの学校。


初等学院を設立することにした。


学院名はひねりはないが、ベルクたちが暮らすトルガ領の中心地。


ハンクフェンの名前を頭につけて、ハンクフェン初頭学院とした。


また、特別に優秀な人材を確保する目的で、実験的に五人だけ試験選抜による無料枠を設けることにした。


多少とはいえ金を取る以上、貧しい家の子どもは通いにくい。


だが、貧しい家の子どもの中に、見込みのある人間がいないとは限らない。


そうだ。


せっかくなので、救護院にも告知を出そう。


救護院に関しては、最近グレーテに任せきりで、自分ではあまり関わらなくなっていた。


だが、あそこでは一応、グレーテが授業のようなものをしている。


読み書きも、最低限は教えているはずだ。


案外、試験に受かる子どもが出るかもしれない。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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評価やブックマークが増えると、更新のやる気もかなり上がります!


引き続き、ベルクたちの物語をよろしくお願いします。

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