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行き止まりの神 —全能のパラドックス:封印された僕が世界を終焉させるまで—  作者: Daikon


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異世界へ


バスが去っていった。通りは静かだった。深夜の、自分だけが世界で起きている人間のように感じさせる種類の静けさ。シュウはマヤのアパートの前に立って、テールランプが角を曲がるまで見送っていた。マヤは隣にいた。子供は二人の間にいて、小さくて静かで、何も持たずに立っていた。


「中に入ろう」とシュウは言った。マヤはうなずいた。


階段を上がった。廊下は暗かった。廊下の端の灯りが一度、二度とちらついて、それから落ち着いた。シュウはドアの鍵を開けた。押し開けた。そして止まった。


そこはアパートではなかった。ドアは草原に開いていた。草。丘。彼らの街の星とは違う、満天の星。これらの星はもっと明るく、もっと近く、ゆっくりと、のんびりと、行く当てがないかのように動いているものもあった。シュウは戸口に立っていた。手はまだノブにあった。


背後でマヤが息を呑んだ。「やだ……また? また別の場所なんて……」「やめて」


シュウは振り返った。彼女の顔は青白く、手は震えていた。「マヤ」


「無理……またあの目とか死とか、私――」


「僕を見ろ」


彼女は彼を見た。


「今回は違う」とシュウは言った。「見ろ。ただ見てみろ」


彼女は顔を向けた。無理やりドアの向こうを見た。草は青く、空は濃い青、ほとんど紫で、星たちはきらめいていた――実際にきらめいていた、童謡に出てくるみたいに。柔らかい風が土といくつかの甘い何かの匂いを運んでいた。あの「間」の場所じゃなかった。吊るされた男もいなかった。ただの――別の世界だった。マヤの呼吸が落ち着いた。「ここ、どこ?」と彼女はささやいた。シュウは答えなかった。彼は戸口をくぐった。


草は足元で柔らかかった。本物だった。あの黒い地面とは違う。この地面には重みがあった。質感があった。命があった。


子供は続いた。躊躇もせず、怖がりもせず、まるで前から知っていた部屋に歩いていくみたいに。マヤは最後だった。彼女は戸口の縁に立って、片方の足をアパートに、片方を草の上に置いた。それから目を閉じて、息を吸って、戸口をくぐった。


後ろのドアは閉まらなかった。ただ――もうそこになかった。シュウは振り返った。アパートも廊下も建物も、全部消えていた。ただ草原と丘と星と、名前を付けられない何かの匂いを運ぶ柔らかな風だけがそこにあった。


「帰れないんだね」とマヤは言った。声は平坦だった。「今はな」とシュウは言った。「それであなたは平気なの?」


彼は考えた。白い砂漠。尖塔。エリの物語。終わりの後の無。カフェ。ベンチ。緋色の悪魔。一兆の死。もう一つの世界。どうして。


「平気なはずがない」と彼は言った。「でもパニックになるには疲れすぎてる」


マヤは彼を見つめた。それから笑った。小さな笑い声。壊れかけていた。でも本物だった。「それが今までで一番正直な言葉だよ」


---


彼らは歩いた。道があった。土の道。馬車一台分の幅。丘を縫って、遠くの灯りの集まりへと消えていった。風は新鮮だった。街の空気じゃない。いつもコーヒーと古い紙の匂いがするアパートの空気とも違う。この空気は澄んでいた。吸うだけで少し痛いくらいに。


星たちは頭上をゆっくりと動いていた。見ているみたいに。子供は二人の間を歩いた。新しい靴はもう埃をかぶっていた。顔はまだ無表情だった。でも頭は動いていた。草を見て、空を見て、小さな灯りみたいに浮かぶ蛍を見ていた。マヤが気づいた。「この子、ちゃんと見てるね」「ああ」「新しいね」


シュウは答えなかった。彼らは歩き続けた。


---


村は小さかった。二十軒もない家。木と石。煙突から煙が細く怠そうな螺旋を描いて立ち上る。どこかで犬が吠えていた。子供が笑う声。誰かが弦楽器を弾いている――下手くそだけど楽しそうに。


通りは空っぽだった。店のほとんどは閉まっていた。シャッターが下ろされ、軒先の灯りが暖かいオレンジの光を土の道に落としている。シュウは一軒の店の前で止まった。服屋だった。ショーウィンドウに布の反物。ドアの上の木の看板には彼の知らない文字が描かれていた。


中年の男が外に立っていた。肩が広く、手が厚い。シャッターを下ろしているところだった。閉店の準備。


シュウは彼に近づいた。男は振り返った。シュウを見て、マヤを見て、子供を見た。顔はあまり変わらなかった――眉毛が少し上がっただけで、驚いたけど気にするほどじゃない、みたいな。


シュウは口を開いた。何語を使えばいいのか分からなかった。日本語? 英語? この世界にそれらの言語があるかどうかさえ分からなかった。でも試さなければならなかった。


「すみません」


男は瞬きをした。それから笑った。「いらっしゃい。こんな時間にどうした?」


シュウの頭が止まった。日本語。この男は日本語を話した。


「どうして――」とシュウが言いかけた。男が首を傾げた。「どうしてって、何が?」


シュウは首を振った。「いえ、なんでも。ただ――」彼はマヤを見た。彼女も同じくらい困惑していた。「私たち、旅行者で。この辺りに詳しくなくて」


男はうなずいた。「旅行者か。変わった時間に着いたね。今頃みんな家の中だよ」「道に迷ってしまって」


男は笑った。深くて、気楽な笑い声。「よくあることさ」


シュウは道を眺めた。遠くの灯りを見た。「ここから王国まではどのくらいですか?」


男は眉を上げた。「王国? ヴァルドリスのことか?」


ヴァルドリス。シュウは頭の中で繰り返した。ヴァルドリス。


「はい」と彼は言った。「ヴァルドリス」


男は道の先を指さした。「歩きで半日。馬車ならもう少し早いかも」子供とマヤを見た。「今夜行くつもりか?」


「いいえ」とシュウは言った。「まず休む場所を探します」


男はうなずいた。「それがいい。ヴァルドリスへの道は危なくないが、長い。明日の朝、元気なうちに出たほうがいい」


シュウは頭を下げた。「ありがとうございます」


男は手を振った。「いいってことよ。気をつけて」


彼は最後のシャッターを下ろして鍵をかけ、店の中に入ってドアを閉めた。シュウはしばらくそこに立っていた。日本語。ヴァルドリスという名前の王国。彼はアイセカイアニメをたくさん見てきたから、これがどういう仕組みかは知っていた。でも仕組みを知っていても、不思議さは減らなかった。マヤが彼の袖を引っ張った。「シュウ。寝る場所、探さないと」


---


村には宿がなかった。小さすぎた。あるいは暗くて見つけられなかっただけかもしれない。でも村の端っこ、低い石垣の向こうに、牛舎があった。藁ぶきの屋根。木の柵。地面には藁。牛たちは眠っていた。身を寄せ合って、その脇腹がゆっくりとしたリズムで上下している。


シュウはマヤを見た。「これしかない」「牛舎だよ」「もっとひどい場所で寝たことある」「そうなの?」


シュウは考えた。ベンチのことを。あの寒さを。討論の翌日の夜のこと。「ある」と彼は言った。マヤは反論しなかった。


彼らは低い石垣を乗り越えた。藁は乾いていた。快適じゃないけど、最悪でもない。牛たちは起きなかった。一頭が耳をピクピクさせて、また眠りに戻った。子供は座った。あぐらをかいて、藁ぶき屋根の隙間から覗く星を見ていた。マヤは横になった。横向きに丸まって。彼女の目は長い間開いたままだった。シュウは木の柵にもたれて座った。


---


星は美しかった。街の星とは違っていた。あの星たちは遠くて、冷たくて、数学的だった。この星たちは温かくて、近くて、聞き耳を立てているみたいに寄り添っていた。シュウはそれらを眺めた。


白い砂漠のことを考えた。エリのことを。彼女が作った罠と、彼女が書いた物語のことを。彼はそこから逃げ出した。エピローグを抜け出した。天使に会って、光の目隠しをした女に会った。レオのことを考えた。十八層のことを。自分の手の平の文字のことを。在る。まだそこにある。まだ消えている。


マヤのことを考えた。一兆の死のことを。「あなたを見ていると、それらが消える」と言った時の彼女の目のことを。子供のことを。顔のあるべき場所にある仮面のことを。彼の袖に触れた、小さくて冷たい手のことを。緋色の悪魔のことを。目覚め。器。公園の男の言葉――「空っぽの者を見つけろ」という言葉を。


全部を考えた。


そして気づいた。自分が何をしているのか、全然分かっていなかった。計画もなければ、力もなく、答えもない。ただ――歩いている。ある世界から次の世界へ。ある問題から次の問題へ。自分では歩けない人たちを背負って。


(もしかしたら、それでいいのかもしれない)


(それで十分なのかもしれない)


彼は子供を見た。マヤを見た。


(まだここにいる。僕もここにいる)


(それは何かだ)


風が吹いた。柔らかくて、甘い。シュウは目を閉じた。


---


藁ぶき屋根の隙間から光が差していた。温かくて、黄金色だった。シュウは目を開けた。牛たちは起きていた。一頭が、感心しなそうな大きな目で彼を見つめていた。マヤは起き上がって顔をこすっていた。髪は藁だらけだった。ひどい顔をしていた。でも笑っていた。


「寝ちゃったね」「君もだ」「まあね」


子供はまだ眠っていた。藁の上で丸まって。小さな体は、呼吸のたびに上下していた。シュウは立ち上がった。伸びをした。背中が痛くて、首も痛かった。気にしなかった。「起こそう」マヤはうなずいた。シュウは子供のそばに跪いて、肩に触れた。「おい。朝だ」


子供は動かなかった。シュウはもう一度、優しく触れた。「行かないと」


子供の目が開いた。虚ろで。空っぽで。でも――焦点は合っていた。シュウに。彼の顔に。


「おはよう」とシュウは言った。子供は答えなかった。でも起き上がった。シュウは彼を肩に乗せた。子供は軽すぎた。でもしっかり掴まっていた。小さな手でシュウの襟を握りしめて。


マヤが立ち上がって、服についた藁を払った。「どうするの?」


シュウは道の方を見た。あの男が指さした方向へ。「ヴァルドリスに行く」「いきなり?」「いきなり」


---


彼らが道に向かって歩き始めると、声がかかった。「おーい。旅の人たち」シュウが振り返ると、服屋の男が歩いてきていた。別のシャツを着ていた。もっと清潔なやつ。ブーツも磨いてあった。どこかに出かけるみたいな格好だった。


「朝早いね」と男は言った。「あなたもですね」とシュウは言った。


男は笑った。「今日、ヴァルドリスに行くんだ。店の仕入れでね」彼は背後を指さした。馬車が道に停まっていた。二頭立ての馬。木の車輪。幌の荷台。


「よかったら乗っていかない?」


シュウはマヤを見た。彼女は肩を竦めた。「ありがとうございます」とシュウは言った。「お言葉に甘えます」


男は手を振った。「いいってことよ。十分広いから」彼らは馬車へ歩いた。男はマヤが乗るのを手伝った。シュウは子供をベンチに上げた。子供はシュウとマヤの間に座った。目は前の道に向けられていた。男は御者席に上がって手綱を握った。舌打ちを一つ。馬たちが歩き出した。車輪がきしむ。馬車が揺れる。風が吹く。ヴァルドリスが待っている。


シュウはそこで何を見つけるのか知らなかった。でも、長い間で初めて――怖くなかった。


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