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行き止まりの神 —全能のパラドックス:封印された僕が世界を終焉させるまで—  作者: Daikon


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23/23

それでも笑おうとした日

アパートは静かだった。


シュウは子供をソファに寝かせた。その体は小さく、足を曲げなくても十分収まるほどだった。胸が上下していた。かろうじて。まるで体が正しい呼吸の仕方を忘れて、習慣でやっているかのように。


シュウは子供に毛布をかけた。子供は動かなかった。丸くもならなかった。温もりを求めもしなかった。ただそこに横たわり、目を閉じ、顔は仮面のように無表情だった。


シュウはしばらくそこに立って見つめていた。


それからマヤを見た。


彼女はまだベッドにいた。呼吸は浅かった。彼女の手は毛布を握りしめていた。何かが逃げていかないように掴んでいるかのように。


二人とも。それぞれ別の方法で壊れていた。


シュウは床に座った。壁に背を預けて。毎晩同じ場所。


左手の平が痒かった。


在る


まだそこにあった。まだ薄れていた。


彼は子供を見た。マヤを見た。カーテンの隙間から漏れる薄明かりを見た。


目を閉じた。


何日ぶりだろう——彼は眠った。


---


光が顔に当たった。


シュウは目を開けた。


アパートは明るかった。明るすぎた。太陽は高く昇っていた。彼は思っていたより長く眠っていた。


マヤはベッドに座っていた。目は開いていた。赤かった。しかしはっきりしていた。


彼女はソファを見ていた。


子供を見ていた。


シュウは体を起こした。


「マヤ——」


「あの子誰?」彼女の声は静かだった。怖がっているのではなかった。ただ——困惑していた。


シュウは立ち上がった。ソファに歩いた。子供はまだ眠っていた。同じ姿勢。同じ無表情な顔。同じ浅い呼吸。


「見つけたんだ。昨夜。赤灯区域で」


マヤの目が見開かれた。「赤灯区域?」


「ただ座ってた。一人で。寒い中で。靴も履かずに。親もいなくて。誰も見ていなかった」


マヤは子供を見つめた。彼女の手はまだ毛布を握りしめていた。


「この子は——」彼女は止まった。唾を飲み込んだ。「私と同じなの? 何かを見たの?」


シュウは首を振った。


「分からない。話さないんだ。音も立てない。ただ——存在してるだけ」


マヤは長い間黙っていた。


それから立ち上がった。ソファに歩いた。子供のそばに立った。その小さな無表情な顔を見下ろした。


「ただの子供じゃん」と彼女はささやいた。


「ああ」


「ここにいるべきじゃない。このアパートに。この混乱の中に。私たちと一緒に——」彼女は自分の手を見た。「——私たちと一緒にいるべきじゃない」


シュウは答えなかった。


マヤはソファの横に跪いた。子供には触れなかった。ただ見つめた。


「名前は?」


「知らない」


「親はどこ?」


「それも知らない」


マヤは再び黙った。


それから——ゆっくりと——優しく——彼女は子供の手に触れた。


冷たかった。


彼女は引っ込めなかった。


「この子の面倒を見ないと」と彼女は言った。「どうすればいいか決めるまでは」


シュウはうなずいた。


「俺もそう思ってた」


---


子供はさらに一時間ほど起きなかった。


シュウはコーヒーを入れた。マヤは机に座って壁を見つめていた。二人ともあまり話さなかった。ここ数日の重みが霧のように二人の間に漂っていた。


その時——音がした。


小さな。静かな。


ソファの布地が擦れる音。


シュウとマヤの両方が振り返った。


子供は起き上がっていた。目は開いていた。虚ろだった。動かなかった。彼は部屋を見回した。ポスター。フィギュア。空のエナジードリンクの缶。


それから彼らを見た。


認識もなく。恐怖もなく。好奇心もなく。ただ——見ていた。


マヤが最初に立った。


「ねえ」彼女は優しく言った。怖がっている動物にするような声で。「おはよう」


子供は応答しなかった。


「私はマヤ。あっちがシュウ」彼女は指さした。「ここは私たちのアパート。安心していいよ」


子供は瞬きをした。


一度だけ。


それが唯一の反応だった。


マヤはシュウを見た。彼女の目は彼が答えられない質問をしていた。


シュウはキッチンに行った。コップに水を注いだ。子供のところに持っていった。


子供はコップを見た。受け取らなかった。


シュウはそれをソファの横のテーブルに置いた。


「話さなくていい」とシュウは言った。「何もしなくていい。ただ——ここにいて。休んで。食べたかったら食べて。眠たかったら眠って」


子供はコップを見た。


それからシュウを見た。


それから窓を見た。


外では街が目を覚ましていた。車。鳥。遠くで吠える犬。普通の音。日常の音。


子供はそれらのどれも聞こえていないようだった。


---


マヤはベッドの端に座った。シュウは壁にもたれた。


子供はまだソファにいた。まだ動いていなかった。まだ話していなかった。


「一日中ここに居られない」とマヤは言った。「気が狂いそう」


シュウはうなずいた。


「考えてたんだ」


「何を?」


「——」彼は子供を見た。それからマヤを見た。「——外に出ようと思って。三人とも。ほんの数時間だけ」


マヤは眉をひそめた。「どこに?」


シュウは考えた。この街のことをあまり知らなかった。カフェ。公園。コンビニ。それだけだった。


その時、何かを思い出した。電信柱に貼ってあったチラシ。鮮やかな色。キャラクター。


「遊園地がある」と彼は言った。「街の反対側。ポスターを見た」


マヤは彼を見つめた。


「遊園地?」


「ああ」


「乗り物とか? わたあめとか? 叫ぶ子供たちとか?」


「だいたい遊園地にはそういうものがあるな」


マヤは子供を見た。それからシュウを見た。それから窓を見た。


「あなたは——あの全てがあった後に——遊園地に行こうって言ってるの?」


シュウは肩を竦めた。


「普通の日を一日過ごしたいんだ。ただ一日だけ。緋色の悪魔も、吊るされた男も、一兆の死もなし。ただ——乗り物とわたあめと偽りの笑顔だけ」


マヤは長い間黙っていた。


それから彼女は笑った。


小さな笑い声だった。疲れていた。しかし本物だった。


「あなた、正気じゃないよ、シュウ」


「たぶんな」


「今までで一番馬鹿なアイデアだ」


「じゃあ行かない?」


マヤはもう一度子供を見た。その無表情な顔を。虚ろな目を。膝の上に置かれた小さな手を。


「行く」と彼女は言った。「行こう」


---


準備には予想以上に時間がかかった。


子供は靴を持っていなかった。マヤは古いスニーカーを見つけた——大きすぎたが、ないよりはましだった。彼女は靴紐をきつく結んだ。


子供は抵抗しなかった。手伝わなかった。ただそこに座って、彼女が自分の足に靴を履かせるのを許していた。


「はい」マヤは言った。「これでガラスで足を切らなくて済むね」


子供は自分の靴を見た。


それからマヤを見た。


無表情だった。しかし、彼は視線を外さなかった。


マヤは立ち上がった。目をこすった。


「まず店に寄らないと。この子の服を買うんだ。本当の服を。あの薄いパーカーじゃなくて」


シュウはうなずいた。


「金ならある」


「私もある」マヤはバッグを掴んだ。「行こう」


---


コンビニは明るかった。明るすぎた。蛍光灯がブンブンと唸っていた。音楽が隠しスピーカーから流れていた。店員は退屈そうだった。


マヤはパーカーを選んだ。子供が着ているものより厚いもの。濃い青色。無地。彼女それを掲げた。


「これでいい?」


子供はそれを見た。


反応はなかった。


マヤはそれを了承として受け取った。


靴下も買った。下着も。スウェットパンツも。シュウは歯ブラシと、全てを入れるための小さなバックパックを掴んだ。


店員はレジを通した。質問しなかった。子供を見なかった。


誰も子供を見なかった。


シュウが払った。


彼らは外に出た。


太陽は高く昇っていた。暖かかった。通りは混雑していた。歩く人々。話す人々。笑う人々。


子供はシュウとマヤの間を歩いた。彼の新しい靴が舗道でキュッキュッと鳴った。誰の手も握らなかった。誰も見なかった。ただ歩いた。


マヤはシュウに目配せした。


「この子、幽霊みたい」と彼女はささやいた。


シュウは答えなかった。


なぜなら彼女の言う通りだったから。


---


公園は街の端にあった。


大きな門。カラフルな旗。遠くでは観覧車が青い空の下でゆっくりと回っていた。


音楽が隠しスピーカーから流れていた。明るく。陽気に。精一杯あなたを幸せにしようとしている種類の音楽。


子供たちが笑いながら走り去っていった。風船を持って。親たちはベビーカーを押していた。十代の若者たちは写真を撮っていた。


普通。


日常。


完璧。


マヤは入り口で止まった。観覧車を見つめた。


「子供の頃以来、来てないな」


「俺もだ」シュウは言った。「たぶん」


「『たぶん』ってどういう意味?」


シュウは微笑んだ。答えなかった。


彼はチケットを買った。三枚。店員が彼に地図を渡した。


「最初に観覧車?」シュウは尋ねた。


マヤは子供を見た。


子供は観覧車を見ていた。


色を見ているのではなかった。動きを見ているのでもなかった。


ただ——観覧車を見ていた。


「観覧車から」マヤは言った。


---


観覧車はゆっくりだった。穏やかだった。ゴンドラがきしみながら上昇し、彼らを公園の上へ、木々の上へ、街の上へと持ち上げた。


マヤは窓の外を見た。彼女の姿がガラスにかすかに映っていた。


「私は彼らが死ぬのを見た」と彼女は静かに言った。「一兆回。ありとあらゆる方法で」


シュウは何も言わなかった。


「でもあなたを見ていると——空を見ていると——何か本物を見ていると——」彼女は間を置いた。「——それらは消える。完全には消えないけど。でも十分に」


シュウは子供を見た。


子供も外を見ていた。下の街を。小さな車を。小さな人々を。小さな建物を。


彼の顔はまだ無表情だった。


しかし彼の手——小さくて冷たい手——は座席の彼らの間に置かれていた。


握っているのではなかった。差し伸べているのでもなかった。


ただ——置かれていた。


シュウは動かなかった。


子供も動かなかった。


彼らはそうやって乗り物が終わるまで座っていた。


---


マヤはわたあめを買った。ピンク。ふわふわ。彼女は一かけらをちぎって子供に差し出した。


子供はそれを見つめた。


「食べて」マヤは言った。「砂糖だよ。美味しいよ」


子供はそれを受け取った。


口に運んだ。


味わった。


何の反応もなかった。笑顔も。しかめ面も。


しかし彼は食べた。


マヤはもう一つ買った。シュウに渡した。


「食べて」彼女は言った。「私よりひどい顔してるよ」


シュウはそれを受け取った。


甘かった。甘すぎた。しかし美味しかった。


子供はわたあめを食べ終えた。指を舐めた。マヤを見た。


マヤは瞬きをした。


「今の——」


「気に入ったみたいだ」とシュウは言った。


子供は肯定も否定もしなかった。ただ——わたあめの屋台を見ていた。


マヤは三つ目を買った。


子供はそれも食べた。


---


メリーゴーラウンドは古かった。塗装の剥げた馬たち。同じ曲を何度も何度も繰り返すオルガン音楽。


マヤが指さした。


「あれに乗ろう」


シュウは眉を上げた。


「メリーゴーラウンドに乗るには年を取りすぎてないか?」


「メリーゴーラウンドに年は関係ないの」


彼らは乗り込んだ。マヤは馬を選んだ。シュウは彼女の隣に立ち、棒に掴まった。


子供はマヤの前に立った。馬を選ばなかった。ただ——立っていた。


メリーゴーラウンドが動き出した。


ぐるぐると回る。音楽が流れる。塗装の剥げた馬たちが上下に動く。子供たちが笑う。


マヤは目を閉じた。


シュウは彼女を見つめた。


何日ぶりだろう——彼女は——穏やかに見えた。


幸せではなかった。癒されてはいなかった。


しかし穏やかだった。


子供は馬を見た。灯りを見た。他の子供たちを見た。


彼の顔はまだ無表情だった。


しかし彼の頭は動いた。動きを追って。見ていた。


シュウは気づいた。


「そうだ」と彼は静かに言った。「何かを見ろ。何でもいい」


子供は応答しなかった。


しかし彼は見続けた。


---


太陽が沈み始めた。


公園は少し静かになっていた。家族連れは帰り始めていた。音楽は柔らかくなっていた。乗り物の灯りが輝き始めていた。


マヤはベンチに座った。シュウは彼女の隣に座った。子供は二人の間に座った。


誰も話さなかった。


風船が一つ浮かんでいた。赤い。輝いている。誰も持っていなかった。それはオレンジ色の空へと漂っていった。


マヤはそれが消えるのを見ていた。


「良くなった気はしない」と彼女は言った。「でも——前よりマシになった気はする」


シュウはうなずいた。


「今日はそれで十分だ」


彼女は子供を見た。


「あなたはどうなの? 何か感じる?」


子供は答えなかった。


しかし彼の手——あの小さくて冷たい手——が動いた。


ほんの少しだけ。


シュウの袖に触れるほどに。


シュウは見下ろした。


子供は彼を見ていなかった。何も見ていなかった。


しかし彼の手はそこにあった。


シュウは動かなかった。


子供は引っ込めなかった。


彼らは観覧車の灯りがともるまでそうやって座っていた。


---


バスで帰った。


子供は窓側に座った。マヤはその隣に座った。シュウは立って、天井の手すりを握った。


外を街が流れていった。ネオンサイン。街灯。暗い窓。


マヤは窓ガラスに頭を預けた。


「怖いよ、シュウ」


「知ってる」


「もう見たくない。死を。目を。吊るされた男を」


「今夜は見ない。大丈夫」


「どうして分かるの?」


シュウは子供を見た。その無表情な顔を。虚ろな目を。膝の上に置かれた小さな手を。


「今夜は、何か食べて、眠る。そして明日——」彼は間を置いた。「——明日は残りをどうするか考える」


マヤは目を閉じた。


バスがガタガタと進んだ。


子供は窓の外を見ていた。


街を。


灯りを。


建物と建物の間の、何も見つめていない隙間を。


そして初めて——


彼は瞬きをした。


人形の機械的な瞬きではなかった。


本物の瞬きだった。


ゆっくりと。不安定に。


まるで彼の内側の何かが目覚めようとしているかのように。


シュウはそれを見た。


何も言わなかった。


ただ手すりを握りしめて。


微笑んだ。


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