誰でもない男
シュウはマヤのアパートには戻らなかった。
ただ歩いた。目的地もなく、計画もなく。この時間の通りは空っぽで、その静けさが彼の思考を助けた。討論のこと。マヤのこと。彼女が自分の手の平を見たあの様子のこと。
彼は公園を見つけた。小さな公園。建物と建物の間に挟まれていた。数台のベンチ、ブランコ、滑り台——どれもかなり年季が入っていた。
彼は座った。
ベンチは冷たかった。金属の肘掛けは露で濡れていた。彼は気にしなかった。
左手の平が痒かった。
在る
彼は文字を見た。かすか。まだそこにある。あとどれくらい持つだろうか。数週間? 数日? 数時間? その考えが石のように彼の胸に重くのしかかった。
公園の向こう側で、街灯がちらついた。一度。二度。それから落ち着いた。
街は静かだった。自分だけが世界で起きている人間のように感じさせる種類の静けさ。シュウは以前にもその感覚を味わったことがあった。白い砂漠で。終わりの後の無で。誰も存在すべきではない物語と物語の間の空間で。
今回は違った。この静けさは孤独には感じられなかった。ただ——空っぽだと感じた。誰かが入ってくるのを待っている部屋のように。
「ずいぶん考え込んでいるみたいだな」
シュウは顔を向けた。
男が隣のベンチに座っていた。近くではなかった。十フィートほど離れていた。シュウは彼が近づいてくる音を聞いていなかった。彼が話すまで全く気づかなかった。
男は年上だった。老けてはいない。三十五歳か四十歳か。はっきりとは言い難い。彼の顔には目と口の周りに線があった——正確には皺ではない。見てきたものの跡のように。髪は暗く、こめかみに白いものが混じっていた。長いコートを着ていた。濃い青色。暖かそうだが、おしゃれではない種類。彼の手はポケットの中に入っていた。
彼はシュウを見ていなかった。空を見ていた。
「大丈夫です」とシュウは言った。
男はうなずいた。反論しなかった。無理強いもしなかった。
彼らは一分、二分と黙って座っていた。風が強まり、ブランコの鎖をガチャガチャと鳴らした。
「今日、カフェにいたな」と男は言った。まだシュウを見ていない。「窓際で。何かを見つめていた」
シュウの胸が締め付けられた。
「外を見ていたんです」
「そこには何もなかった」男はようやく頭を向けた。彼の目は茶色だった。暗い。冷たくはない——ただ重い。長い間何かを運んできた人のように。「五分くらい見ていた。君は瞬きもしなかった。動きもしなかった。ただ——見つめていた」
シュウは何と言えばいいか分からなかった。
男は答えを期待しているようには見えなかった。彼は再び空を見上げた。
「何を見たのかは聞かない。知りたくない」彼は間を置いた。「でも一つだけ教えてやる。ただでな」
シュウは待った。
「この世界には、見られることを意図されていないものがある。そしてあるものは——」彼は立ち上がった。コートの埃を払った。「——無視されることを好まない」
彼は歩道へ向かって歩いた。ゆっくりと。気軽に。世界中に時間があるかのように。
シュウは立った。
「あなたは誰ですか?」
男は止まった。振り返らなかった。
「誰でもない」と彼は言った。「ただの読み過ぎる男だ」
彼は歩き去った。街灯の間の影の中へ消えた。
シュウは長い間そこに立っていた。ブランコがきしんだ。風が吹いた。街灯が再びちらついた。
彼は再び座った。
手の平が痒かった。
彼はそれを見なかった。
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シュウは眠らなかった。
空が灰色に変わり、ピンクに変わり、青に変わるまで、彼はベンチに座っていた。街が彼の周りで目を覚ました。車。鳥。イヤホンをしたジョガー。犬を散歩させる女性。
彼はカフェへ歩いた。
老女はカウンターの後ろにいた。彼女は彼を一目見て、眉を上げた。
「きつい夜だった?」
「そんなところです」
「いつもと同じ?」
「はい」
彼女は彼のコーヒーを作り始めた。
シュウはいつものテーブルに座った。窓際のあのテーブル。外の通りは普通に見えた。建物。車。人々。その間に何もない。隙間もない。間違った方向に動く影もない。
マヤが十分後に到着した。彼女の髪は濡れていた。服を着替えていた。眠れたように見えた。
「早いね」彼女は彼の向かいに座りながら言った。
「眠れなくて」
「討論の二日酔い?」
「そんなところ」
彼女はいつものものを注文した——泡とシナモンと音節が多すぎる何か。老女がそれを運んできた。マヤは両手でカップを包み込み、湯気を見つめた。
「考えてたんだ」と彼女は言った。
「何を?」
「あなたが言ったこと。キャラクターについて。作者について。彼らが実際に何を大切にしているかについて」
シュウは待った。
「あなたの言う通りだと思う。ほとんどの作者はパワースケーリングを気にしていない。彼らが気にしているのは物語。感情。何かを感じさせること」彼女は彼を見た。「でも私はスケーリングと物語は別物じゃないとも思う。レオの力は彼が誰であるかと切り離せない。それが彼が誰であるかそのものなんだ。彼の忍耐力。彼の諦めないという選択。それはステータスじゃない。それが彼の全てなんだ」
シュウはうなずいた。
「それは矛盾じゃない」と彼は言った。「ただの良い文章だ」
マヤは微笑んだ。小さく。疲れて。本物の笑顔。
「そうだね」と彼女は言った。「良い文章」
彼らはコーヒーを飲んだ。
---
シュウは公園に戻った。
なぜだか自分でも分からなかった。ただ——行った。ベンチは空っぽだった。ブランコは止まっていた。数人の子供たちが滑り台で遊んでいて、母親たちはブランケットの上から見守っていた。
男はいなかった。
シュウは昨夜と同じベンチに座った。木は太陽で温まっていた。街が彼の周りで唸っていた。車。会話。遠くのサイレン。
彼は待った。
一時間が経った。二時間。
子供たちは去った。母親たちはブランケットを片付けた。公園は再び静かになった。
シュウが立ち去ろうとしたとき、歩道で足音が聞こえた。
男だった。同じコート。同じ疲れた目。彼は何かを抱えていた——本。スマホではない。タブレットでもない。実際の本。ページ。インク。店で買う種類の。
彼はシュウの隣のベンチに座った。近すぎず。遠すぎず。
「戻ってきたな」と男は言った。
「あなたもですね」
「近くに住んでる」
「そういう意味じゃありません」
男は微笑んだ。その微笑みは目に届かなかった。
「分かってる」
彼は本を開いた。読み始めた。シュウは男が本の角度を変える前に、表紙を一瞬見た。
『大競技祭』
シュウの胃がひっくり返った。
「それをどこで?」
男は顔を上げなかった。「本屋だ」
「そんなはず——」シュウは止まった。息を吸った。「その小説は出版されていない。オンラインだけだ」
男はページをめくった。
「君のいる場所ではな」
シュウは彼を見つめた。
男は読み続けた。彼の目はページの上を動いた。彼の表情は変わらなかった。
「あなたは私が誰だか知っている」とシュウは言った。
男は本を閉じた。シュウを見た。彼の茶色い目は重かった。疲れていた。しかし驚いてはいなかった。
「君は誰であるはずかは知っている」と彼は言った。「問題は、君が実際に彼なのかどうかだ」
シュウは答えなかった。
男は立ち上がった。本をコートのポケットに入れた。
「気をつけろ、坊や。思い通りに終わらない物語もある」
彼は歩き去った。前と同じように。歩道へ。木々の中へ。彼を丸ごと飲み込もうとしているかのような午後の光の中へ。
シュウはベンチに座った。
ブランコはきしまなかった。
風は吹かなかった。
彼は左手の平を見た。
在る
まだそこにある。
彼は手を閉じた。




