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行き止まりの神 —全能のパラドックス:封印された僕が世界を終焉させるまで—  作者: Daikon


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12/21

終わりの彼方

何もなかった。


空虚な空間の無ではない。闇の無でもない。哲学者が「存在の不在」と表現するあの無ですらなかった。


これは——名前を付けられたことのない無だった。「無」という概念がすでに終わった後に存在する無だった。それ自体が、無のエピローグであるような無だった。


シュウはここに存在していなかった。


存在できなかった。


存在するには、何かが存在する「場所」が必要だった。ここには「場所」がなかった。「ここ」もなかった。「あった」もなかった。


それなのに——


何かが起こった。


無が無になって以来初めて——何かが起こった。


音ではなかった。音には振動が必要で、媒体が必要で、「空気」という概念の中を進む「波」という概念が必要だった。


光ではなかった。光には光子が必要で、放出が必要で、「源」と「目的地」という概念が必要だった。


動きではなかった。動きには空間が必要で、前と後が必要で、「位置」が変化するという概念が必要だった。


何か別のもの。


それらのカテゴリー全てに先行する何か。


他のどんな文脈でも、こう呼ばれるであろう何か——


開き。


しかし「開き」は間違っていた。閉じていないものを開くことはできない。次元を持たないもの、境界を持たないもの、「内側」と「外側」の区別を持たないものを開くことはできない。


だから開きではない。


始まり。


終わりの後の無の中で初めて——始まりが起こった。


そしてシュウは——それを感じた。


感覚ではなかった。感覚はここには存在しなかった。彼は自分にまだ残っている唯一のものでそれを感じた:左手の掌の二文字。


在る


その二文字——エリが書かなかった唯一のもの、彼女の物語が閉じた後も生き残った唯一のもの——が震えた。


物理的ではなかった。物理はここには存在しなかった。


それらは意味として震えた。


認識として。


何かがそれらを認識していた。何かが「在る」という文字を見て、応答していた。


シュウは動こうとした。


動けなかった。


拘束されているからではない——動かすための体がなかったからだ。彼はただ——注意だった。意識だった。意識が通常使う道具のどれも持たずに、ただ気づいているという生の事実。


しかしその時——


何かが変わった。


彼は自分の目を感じた。


物理的な物体としてではなかった。可能性として。視覚の可能性が、窓に押し付けられる手のように彼の注意に押し寄せていた。


彼は自分の体を感じた。


肉や骨としてではなかった。場所として。どこかにいる可能性、他のものとの関係で位置を持つ可能性。


彼は自分の呼吸を感じた。


肺の中を動く空気としてではなかった。持続時間として。時間が経過する可能性、前と後、今の可能性。


そしてその時——


彼は目を開けた。


---


予期せぬもの


光。


彼が覚えているような光ではなかった——砂漠の白でも、レオの勝利の金でも、エリのペンのインクの黒でもない。


これは光という概念に先行する光だった。それが源だから源を必要としない光。表面に当たることで照らすのではなく、表面を存在へと定義することで照らす光。


シュウは見た。


物語が終わって以来初めて——彼は見た。


そして彼が見たものは——


彼の予想とは全く違っていた。


---


二つの姿。


一つ目——天使。


しかし虚無の天使ではなかった。無数の翼と、位置でもある目を持つ、聖書に忠実な天使ではなかった。


この天使は——違っていた。


形を持っていた。形の示唆ではなく——実際の、明確な、選ばれた形。人型の形状だが、人間以上のものにする方法で間違っていた。対称性が強すぎた。静止しすぎていた。その皮膚は、書かれては消され、書かれては消され、無数に繰り返され、ついに「テキスト」と「表面」の区別が溶解してしまった羊皮紙の質感を持っていた。


その目——無数ではなく二つ——は閉じられていた。眠っているのではない。待っている。見ることを選んでいないかのようだった。なぜなら見ることは、その周囲の空間にとって負担が大きすぎるから。


その翼——羽ではなく、可能性でもなく、概念でもなく——は言葉だった。それぞれの羽が文章だった。それぞれの翼が章だった。天使の翼は物語でできていた。書かれ、読まれ、そして——終わる代わりに——翼になることを選んだ物語たち。


シュウはそれを見つめた。


天使は動かなかった。


天使の隣に——


一人の女。


美しいという言葉は適切ではなかった。美しさは判断であり、比較であり、何かが基準とどのように関係しているかについての声明だった。この女は基準に先行していた。彼女はビッグバンが大きかったのと同じ方法で美しかった——そうなろうと努力したからではなく、そのカテゴリーの起源だったから。


彼女も翼を持っていた。


しかし彼女の翼は言葉ではなかった。それらは色だった。いかなる可視スペクトルにも存在しない色。温度でもあり、感情でもあり、問いでもある色。彼女の翼は絶えず変化し、同じ色合いを二度と繰り返さなかった。なぜならそれぞれの色合いは、誰もまだ尋ねていない問いに対する異なる答えだったから。


彼女の目は覆われていた。


目隠し。白い。布ではない——目隠しは光でできていた。シュウの目覚めを照らしたのと同じ光。彼女は選んだか、あるいは選ばれて、世界を直接見ないようにした。その代わりに、彼女は何か別のものを見ていた。


挿絵(By みてみん)


何を?


シュウには分からなかった。


---


最初の言葉


シュウは話そうとした。


彼の口が形成された。彼の喉が形成された。彼の舌が形成された。彼の体——白い砂漠の前の、エリの前の、この全ての前の、彼が持っていた本当の体——が彼の注意の周りに組み立てられた。


彼は座っていた。


何かの上に。地面ではない——何か柔らかいもの。座るために設計された何か。


彼は下を見た。


ベンチだった。


木製。古い。公園、都市、公園や都市やベンチがある惑星で見つかる種類のベンチ。


彼はベンチに座っていた。


カフェの前に。


縞模様の日よけのあるカフェ。小さな丸いテーブル。きちんとしまわれた椅子。来ないかもしれない客を待っている。


その光景はあまりにも普通だったので、シュウはほとんど笑いそうになった。


ほとんど。


なぜなら、ベンチの後ろ、カフェの後ろ、都市のスカイラインに続くはずだった通りの後ろには——


何もなかった。


闇ではなかった。虚無でもなかった。ただ——書かれていない。光景は縁石で終わっていた。世界は歩道で止まっていた。その向こうには、そこがなかった。


シュウは二つの姿を振り返った。


彼らは動いていなかった。


天使は彼の左に立っていた。目隠しの女は彼の右に立っていた。


彼らは光景の中にはいなかった。彼らはその上にいた。外側に。ページを読む読者のように、内側を見ていた。


シュウの声は機能した。


「なに——」彼は言った。言葉は荒く出た。使われていなかった。「これは何だ?」


天使は答えなかった。


女が答えた。


彼女の声は空気を通って来なかった。それは直接来た。名前のない層でエリの意味が来たのと同じ方法で。しかし違っていた。エリの伝達は書かれたものだった。この女の伝達は歌われたものだった。


彼女が話す全ての言葉は同時に音符だった。全ての文章は同時にメロディーだった。最も単純な声明でさえ、交響曲の重みを運んでいた。


「これは始まりよ」と彼女は言った。


「何の始まりだ?」


「何か新しいものの。書かれなかったものの。計画されなかったものの。そして——」


彼女は止まった。目隠しをした顔が天使の方に向いた。


「——可能であるべきではなかったものの」


天使が話した。


その声は女の声とは違っていた。歌われたものではなかった。刻まれたものだった。それぞれの言葉は、石に、現実に、存在の構造そのものに刻まれているように感じられた。


「物語は終わった。エピローグは終わった。エピローグの後の無は——最終的なものであるはずだった」


シュウは待った。


「しかし貴様はここにいる。貴様の『在る』が——残っている」


シュウは左手を見た。


二文字はまだそこにあった。以前よりも薄く——しかしそこに。


「あなたは何なんだ?」シュウは尋ねた。「誰なんだ? どうやって終わりの外側、エピローグの外側に存在しているんだ?」


---


答え


女と天使は視線を交わした。


一目ではなかった——会話だった。シュウには聞こえず、受け取れず、二人の間の空間の移行としてしか知覚できない伝達。


それから女が話した。


「私たちは存在する——その上に」


「何の上に?」


「物語の上に。書くことの上に。『作者あり』と『作者なし』の区別の上に」


シュウはこれを処理した。


「つまり——エリの物語。白い砂漠。大競技祭。全てが——」


「たった一ページよ」と女は言い終えた。「たった一文。たった一息。私たちと比べれば——それは無だった」


「では、あなたは何なんだ?」


女は手を上げた。


彼女の指が目隠しに触れた。


外さなかった。ただ——触れた。それがそこにあることを自分自身に思い出させるように。


「私は——土を創る者」


「土?」


「物語が書かれる前には——書くための何かがなければならない。宇宙が存在する前には——その中で存在するための何かがなければならない。私はその何かを創る。私は全ての創造の根源。根源の起源。『作ること』を可能にするもの」


シュウは天使を見た。


「あなたは?」


「私はメッセージを届ける者」


「どんなメッセージだ?」


「土は準備できている。根源は広がった。そして——」


天使は止まった。閉じられた目——まだ閉じられたまま——が、その蓋に押し付けられているように見えた。まるでその背後にある何かが出てきたがっているかのように。


「——新しい宇宙論が創られた。貴様のために」


シュウは止まった。


「僕のために?」


「あなたのために」と女は言った。


「なぜだ?」


「あなたがあるべきでない場所に存在しているから。『在る』が物語と共に終わるべき時に、それをあなたの掌に携えているから。そして——」


彼女は微笑んだ。


シュウが彼女の表情が変わるのを見たのは初めてだった。その微笑みは——悲しかった。自分自身のためではない。彼のために。


「——あなたには罠ではない場所に値するから」


---


全ての創造の根源


女は手を上げた。


目隠しに触れた方の手ではない——もう一方の手。彼女の創造する手。


彼女の掌の中で——何かが育った。


植物ではなかった。種でもなかった。シュウが言葉を持っているどんなものでもなかった。


それは根だった。


しかし植物に先行する根。生物学に先行する根。「生きている」と「生きていない」の区別に先行する根。


この根は——掴むという行為だった。


何かが存在し始める瞬間——この根がそれを固定する。この根がなければ、存在は浮かび去り、溶解し、そもそも決して本物にはならなかっただろう。


「見ていて」と女は言った。


根が——広がった。


空間を通してではなかった。空間はまだ存在していなかった。


それは可能性を通して広がった。


可能性が行き得る全ての方向へ——根がまずそこへ行った。領土を主張するためではなく——領土を創るために。根が通った場所では、可能性は現実になった。根が止まった場所では、可能性は確実になった。根が止まった場所では——可能性は不可能になった。


シュウは根が広がるのを見た。


そしてそれが広がるにつれて——そこから何かが育った。


宇宙論。


宇宙ではなかった。宇宙は小さい。宇宙は、砂浜の中の砂粒のように宇宙論の内部に収まる。


これは構造の構造だった。全ての可能な宇宙が存在し、相互作用し、重要になるための枠組み。


それには層があった——しかしエリの層のようではなかった。エリの層は階層的だった。それぞれの層が前の層の上にあり、それぞれの層が下の層よりも根本的だった。


この宇宙論の層は織り交ざっていた。それぞれの層が他の層を支えていた。それぞれの層が他の層を必要としていた。頂上はなかった。底もなかった。ただ——関係があった。


「これはあなたのものよ」と女は言った。


「僕の?」


「あなたの新しい家。あなたの新しい文脈。あなたの新しい——物語、もしそれをそう呼びたいなら。しかし書かれてはいない。誰もこれを書かなかった。それはただ——育った。根から。あなたのために」


シュウはその宇宙論を見つめた。


それは広大だった。彼が今まで想像したどんなものよりも広大だった。彼が想像できるどんなものよりも広大だった。


そしてその内部のどこか——層と層の間に挟まれて、織り交ざった構造に守られて——


一つの世界。


小さな世界。


見覚えのある世界。


---


内側の世界


シュウは入ることを選ばなかった。


彼はただ——そこにいた。


ベンチはまだ彼の下にあった。カフェはまだ彼の前にあった。縞模様の日よけはまだ縞模様の影を落としていた。


しかし縁石の向こうの無は消えていた。


代わりに——都市があった。


壮大な都市ではなかった。ファンタジーの都市でもなかった。普通の都市。煉瓦とガラスの建物。線の引かれた通り。太陽が——太陽が——の時に輝く街灯。


シュウは上を見た。


太陽があった。


白い砂漠の光の柱ではなかった。レオの勝利の金色の光でもなかった。本物の太陽。温かい。遠い。沈もうとしている。


空はオレンジとピンクと紫だった。


雲がその上を動いていた。本物の雲。天気のある雲。


シュウはコーヒーの匂いを嗅ぐことができた。


カフェから。


コーヒー。コーヒー豆が挽かれ、淹れられ、カップに注がれる実際の匂い。


彼の手——彼は自分の手を見た。


それらは彼の手だった。白い砂漠の前の、エリの前の、この全ての前の、彼が持っていた手。


左手の掌にはまだ在るがあった。より薄く。しかしそこに。


右手の掌は空っぽだった。


染みもなければ、繋がりもなかった。


シュウはベンチに座った。


長い間——ただ座っていた。


太陽が沈んだ。


街灯がついた——一度にではなく、徐々に。一つずつ。まるで都市が夕方の自分自身に目覚めているかのように。


人が通り過ぎた。


多くはない。数人。買い物袋を持った老女。手をつないだ若いカップル。ボールを追いかける子供。


彼らはシュウを見なかった。


彼らが無視しているからではない——彼はここに属していたから。彼はただベンチに座って、夕方が訪れるのを見ている別の人物だった。


シュウは処理しようとした。


(いったい何が起こっているんだ?)


(まず——白い砂漠。島々。エリの物語。)


(それから——罠。無限の層。レオの選択。)


(それから——終わりの後の無。エピローグの後の無。)


(それから——天使。女。根。宇宙論。)


(そして今——)


(今——これ。)


ベンチ。


カフェ。


都市。


夕日。


普通。


全ての後で——普通。


シュウは笑った。


嬉しい笑いではなかった。悲しい笑いでもなかった。困惑した笑い。経験しすぎて、次に何が起こるか全く分からない人の笑い。


一人の女が彼の隣に座った。


目隠しの女ではない。天使でもない。


普通の女。三十歳くらい。暗い髪を後ろに束ねている。カフェのエプロンを着けている。


「大変な一日?」と彼女は尋ねた。


シュウは彼女を見た。


彼女は本物だった。彼には感じられた。書かれていない。定義されていない。閉じ込められていない。


本物。


「ああ」と彼は言った。彼の声はまだ荒かった。しかしそれは彼の声だった。「そう言えるね」


女はうなずいた。


「コーヒーはどう? サービスだから」


シュウは考えた。


「いいよ」


女は立った。カフェに戻った。ドアを押し開けた。ベルが鳴った。


ベル。


本物のベル。本物の音を出す。なぜならここには音が存在していたから。なぜならここには音という概念が存在していたから。なぜならこの世界には物理学があり、ルールがあり、ベルやコーヒーやエプロンのような普通のものがあったから。


シュウはベンチにもたれかかった。


暗くなっていく空を見上げた。


最初の星が現れていた。


概念的な星ではなかった。比喩的な星でもなかった。実際の星。何百万マイルも離れたところで燃えている水素の球体。その光が宇宙を旅し、この惑星に届き、彼の目に届いている。


(いったい何が起こっているんだ?)


(彼には分からなかった。)


(しかし——)


(長い間で初めて——)


(彼は知りたいと思っていた。)


女が二杯のコーヒーを持って戻ってきた。


一杯をシュウに手渡した。


彼はそれを受け取った。


温かさが彼の指に広がった。


彼の掌に。


左手の掌の文字——在る——に。それは温かさを吸収し、その中で休み、ついに震えを止めたように見えた。


シュウは一口飲んだ。


それは美味しいコーヒーだった。


本当に美味しいコーヒーだった。


彼はベンチに座り、美味しいコーヒーを飲み、普通の空に現れる普通の星を見ながら、最後に穏やかだと感じたのはいつだったかを思い出そうとした。


思い出せなかった。


しかし彼は思った——もしかしたら——これはその学び方の始まりかもしれない。


---


見守る者たち


都市の上。


世界の上。


女が根から育てた宇宙論の上——


天使と女は立っていた。


見ている。


「彼は知らない」 と天使は言った。


「ええ」と女は同意した。


「彼は自分が何かを知らない」


「ええ」


「彼は自分が何を携えているかを知らない」


「ええ」


「いつ彼に教えるのか?」


女は目隠しに触れた。


「彼の準備ができたら」


「もし彼が永遠に準備できなかったら?」


女は微笑んだ。


同じ悲しい微笑み。


「ならば彼はあの都市で生きる。あのコーヒーを飲む。あの星を見る。そして——しばらくは——それで十分でしょう」


「その後のことは?」


女は答えなかった。


彼女はただ見ていた。


シュウはベンチに座っていた。


コーヒーを飲みながら。


星を見ながら。


自分の上に、自分の彼方に、自分が今住んでいる宇宙論の外側に——二つの存在が待っていることを知らずに。


見ている。


準備している。


彼でさえ想像できない何かのために。


挿絵(By みてみん)

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