この愛の置きどころがどこか
今日も営業を200件ほどして帰ってきた。
最近は家具などもレンタルする人が増えてきたように思える。
持ち家の人ですらそうなのだから、借住まいの人は尚更引っ越しの手間が省ける。
まぁ、それは建前で、お金を持っていそうな家は高級家具を返却時に難癖つけて買い取らせたりもする。
そのマージンが結構ウマイ。
そういえば、上司にもうまく取り入らないと、もう27歳にもなるんだから、主任から脱却したい。
そういえば部長は茎ワカメが大好きだったハズだ。
僕は。
とびきりの逸品を手に入れて、部長のデスクへ向かった。
部長の頭にはネジ穴があって、手頃なプラスドライバーが無かった。
ちょうどいいマイナスのがあったので、ちょっと失礼して、開ける。
そこへ、おいしいおいしい茎ワカメを入れる。
あれ、なんかおかしいぞ?
あ、そうか。
全然違うじゃないか。
茎ワカメが好きなのは前の彼女だった。
僕はもう無くなってしまった茎ワカメの、逸品。
メーカーを忘れてしまった。
どんな色だったか、
どんな形だったか、
そもそも食べて味を確認したのか、
忘れてしまった。
なんだか、とても仕事をする気にならなくて、
家に帰って、
テレビをつけて、
落ち着かなくて、
ネットで履歴を追って、色んな茎ワカメのページが出てきて。
でも、もうあのメーカーのは生産してなくて。
似たようなのを仕方ないから探して、
注文して、
次の日届いて、
食べて、
僕は別にこれは好きじゃなかったな、と思った。
そして、苦しくなって、泣いた。
これを好きだった人を好きだったんだ。
仕事に逃げていた。
怖かった。
僕は茎ワカメが好きじゃなかったから。
だから、人は、
愛し合えるんだって、
その時は気づかなかった。
キライだよ、こんなもん。




