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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。
ウィル17歳

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クソ女神めええっ!!

「今じゃねえんだよおおーーーっ!」


 光の終息と共に響き渡る俺の怒声。


 分かった。俺は今、前代未聞の「ダブル特殊スキル持ち」だ。大盤振る舞いしすぎだろうがよ、クソ女神!


 しかも新たなスキルは「勇者」! 俺が欲しかった「勇者」!

 確かに憧れていたけれど。欲しいと思っていたけれど。


「今じゃねえんだってええええ!」


 こんなに簡単に授与できてしかも何のスキルなのか分かるんなら、スキル授与式いらなくないか?

 などというつもりはない。

 だがしかし。

 なぜ12年前にこっちをくれなかった? 

 俺の美貌が生来のものだったとしても、このスキルがあれば俺の身は安泰だっただろうに!

「特殊スキル『美』」がこの時代に必要だったとしても、ダブルスキルにできるんなら最初から「勇者」もセットにしとけよ!  クソ女神めっ!


 また罵ってしまったが、俺の顔に免じて赦せ、面食い女神!




 ガクリと床に崩れ落ちる俺。


「ウィル⁈ 大丈夫か⁈」


 すぐさまアイスが助け起こしてくれる。

 みんなあの光については口を開こうとはしない。

 俺の奇声にも。


 薄々察しているのだ。アレは12年前に見た光と同じものだと。



 口火を切ったのは母だった。


「ウ、ウィル? ま、まさかあの光って……」


 そういう母の瞳はすっかり光を失っていた。信じたくない、とその目が語っている。

 だろうなあ。俺のスキルで苦労したのは母も同じだもんなあ。


 だが、言わぬわけにもくまい。


「あー……。母上、まずはもう一度ソファに座って貰えますか?」


 察した皆の顔が一気に強張った。

 青ざめた顔で無言でソファに崩れ落ちるように座る母。


 アイスとメルが一切の表情を失くした顔で黙ったまま頷いた。


「どうやら俺『特殊スキル勇者』も授かったみたいだ。大陸統一を女神も応援してくれるってさ! あははは!」


 なんとか場を和ませようとした俺の乾いた笑いが部屋に響く。


「あははは……は? あの、さっきの俺の『大陸をこの国に併合し、女神の恩恵を大陸全土に行き渡らせてみせる』っての、女神が気に入ったみたいでさ……俺、ダブル特殊スキル持ちにされちまったみたい」




「「はぁああ⁈」」




 ぱたん。

 ついさっきまで覇気溢れる姿を見せていた母が、ぱたりと倒れた。

 これ、何回目だろう。

 …………ソファで良かった。


 すまん。冒険譚なんで読むもんじゃない。

 母上だってさっきノリノリだったじゃないですか!

 だから俺のせいじゃない。たぶん。







 アイスが鬼気迫る表情で王城に戻っていった。

 しかも馬車ではなく自ら馬を駆って。(ちなみに公爵家で一番の駿馬を奪っていった)

 つまりはそれほどの事態。


 母は壊れた人形のようにひたすら宙を見つめたまま呟いている。

「うふふ……勇者ですって……! うふふふ! 息子がダブル特殊スキル! ええ! いいことだわ! だって勇者ですもの! これでウィルも怖いものなしよね! うふふふ!」

 短時間にショックを与えすぎたようだ。

 戻ってきてくれ、母上!


 メルは諦めきった顔で淡々と膨大なメモを書き出した。


「新しい衣装が必要だな。夜会用10着、外歩き用10着。留学先の制服の手配。勇者というのなら、鎧やアンダーアーマーもそれなりのものを新調しないと。いっそ純白のレザーアーマーを作って……」


 小さな頭の中が高速で稼働している。

 有能な従者、というよりもこれは現実逃避だ。

 実務をすることで現実から逃れようとしている。


「えっと……純白よりも漆黒の方がいいかな」


 一応希望を言ってみたら「両方作りましょう」と言われた。マジか。




 たんに「このスキルで制御したこの美貌を使って他国を誑し込み、この国(この俺)に手出しさせないようにする」だけのつもりが、とんでもない方向に進んでしまった。


 …………勇者、か。


 美貌の勇者………。


 うん。カッコいいな!

 よし! 四の五の言っても仕方がない。もうスキル授与されてしまったものは、どうしようもないのだ。


「美」だけよりも「勇者」もあるほうがマシであることは間違いないのだ。

 だって強いし! 史実では魔王だって倒しちゃったらしいし!

 なんといっても「箔」が付く。

「特殊スキル美」を持つ令息を手に入れたいとたくらむ輩はいても、過去の教訓から「勇者を倒そう」と考えるものはいないからな。


 あれ?

 今回に限っては、女神、いい仕事をしたんじゃないか?

「クソ女神」訂正、これからは「面食い女神」と呼ぶことにしよう。


つくづく不憫なお母様。


お読みくださいましてありがとうございます!

よろしければイイネやコメントなどをいただけると、とても喜びます。


作者別作品、

「キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!」

「悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。」

もよろしければぜひ♡

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