クソ女神めええっ!!
「今じゃねえんだよおおーーーっ!」
光の終息と共に響き渡る俺の怒声。
分かった。俺は今、前代未聞の「ダブル特殊スキル持ち」だ。大盤振る舞いしすぎだろうがよ、クソ女神!
しかも新たなスキルは「勇者」! 俺が欲しかった「勇者」!
確かに憧れていたけれど。欲しいと思っていたけれど。
「今じゃねえんだってええええ!」
こんなに簡単に授与できてしかも何のスキルなのか分かるんなら、スキル授与式いらなくないか?
などというつもりはない。
だがしかし。
なぜ12年前にこっちをくれなかった?
俺の美貌が生来のものだったとしても、このスキルがあれば俺の身は安泰だっただろうに!
「特殊スキル『美』」がこの時代に必要だったとしても、ダブルスキルにできるんなら最初から「勇者」もセットにしとけよ! クソ女神めっ!
また罵ってしまったが、俺の顔に免じて赦せ、面食い女神!
ガクリと床に崩れ落ちる俺。
「ウィル⁈ 大丈夫か⁈」
すぐさまアイスが助け起こしてくれる。
みんなあの光については口を開こうとはしない。
俺の奇声にも。
薄々察しているのだ。アレは12年前に見た光と同じものだと。
口火を切ったのは母だった。
「ウ、ウィル? ま、まさかあの光って……」
そういう母の瞳はすっかり光を失っていた。信じたくない、とその目が語っている。
だろうなあ。俺のスキルで苦労したのは母も同じだもんなあ。
だが、言わぬわけにもくまい。
「あー……。母上、まずはもう一度ソファに座って貰えますか?」
察した皆の顔が一気に強張った。
青ざめた顔で無言でソファに崩れ落ちるように座る母。
アイスとメルが一切の表情を失くした顔で黙ったまま頷いた。
「どうやら俺『特殊スキル勇者』も授かったみたいだ。大陸統一を女神も応援してくれるってさ! あははは!」
なんとか場を和ませようとした俺の乾いた笑いが部屋に響く。
「あははは……は? あの、さっきの俺の『大陸をこの国に併合し、女神の恩恵を大陸全土に行き渡らせてみせる』っての、女神が気に入ったみたいでさ……俺、ダブル特殊スキル持ちにされちまったみたい」
「「はぁああ⁈」」
ぱたん。
ついさっきまで覇気溢れる姿を見せていた母が、ぱたりと倒れた。
これ、何回目だろう。
…………ソファで良かった。
すまん。冒険譚なんで読むもんじゃない。
母上だってさっきノリノリだったじゃないですか!
だから俺のせいじゃない。たぶん。
アイスが鬼気迫る表情で王城に戻っていった。
しかも馬車ではなく自ら馬を駆って。(ちなみに公爵家で一番の駿馬を奪っていった)
つまりはそれほどの事態。
母は壊れた人形のようにひたすら宙を見つめたまま呟いている。
「うふふ……勇者ですって……! うふふふ! 息子がダブル特殊スキル! ええ! いいことだわ! だって勇者ですもの! これでウィルも怖いものなしよね! うふふふ!」
短時間にショックを与えすぎたようだ。
戻ってきてくれ、母上!
メルは諦めきった顔で淡々と膨大なメモを書き出した。
「新しい衣装が必要だな。夜会用10着、外歩き用10着。留学先の制服の手配。勇者というのなら、鎧やアンダーアーマーもそれなりのものを新調しないと。いっそ純白のレザーアーマーを作って……」
小さな頭の中が高速で稼働している。
有能な従者、というよりもこれは現実逃避だ。
実務をすることで現実から逃れようとしている。
「えっと……純白よりも漆黒の方がいいかな」
一応希望を言ってみたら「両方作りましょう」と言われた。マジか。
たんに「このスキルで制御したこの美貌を使って他国を誑し込み、この国に手出しさせないようにする」だけのつもりが、とんでもない方向に進んでしまった。
…………勇者、か。
美貌の勇者………。
うん。カッコいいな!
よし! 四の五の言っても仕方がない。もうスキル授与されてしまったものは、どうしようもないのだ。
「美」だけよりも「勇者」もあるほうがマシであることは間違いないのだ。
だって強いし! 史実では魔王だって倒しちゃったらしいし!
なんといっても「箔」が付く。
「特殊スキル美」を持つ令息を手に入れたいとたくらむ輩はいても、過去の教訓から「勇者を倒そう」と考えるものはいないからな。
あれ?
今回に限っては、女神、いい仕事をしたんじゃないか?
「クソ女神」訂正、これからは「面食い女神」と呼ぶことにしよう。
つくづく不憫なお母様。
お読みくださいましてありがとうございます!
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作者別作品、
「キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!」
「悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。」
もよろしければぜひ♡




