無敗を誇る美は、カッコいい俺を許してくれない
こうして俺のスキル授与は終わった。
ちなみにアイスはこの後、サラっとスキル「権謀術数」を手に入れていた。
これは珍しいスキルではあるが、王族には割とあるスキルだ。希望通りのスキルで良かったな、アイス。羨ましくなんてないんだからなっ! ちくしょう!
認めたくはないが、俺は神聖な洗礼式を台無しにしてしまった。
だが、それなのに俺には一切お咎めなしだった。そう、通常ならば家になんらかの通達がなされてもおかしくないほどのことをしてしまったのに、何の罰も与えられなかったのである。
なぜか。
それは、俺が「存在するだけで国は安泰」だと言われる特殊スキル持ちだったということもあるが、それ以上に王のお気に入りだからだ。
そう、今さらだが、俺は美しい。スキルを授与される前から、美しいという言葉では語り尽くせぬほどに、王にも溺愛されるほどに美しいのだ。
これは自慢ではなく客観的判断によるもの。
俺の祖父は先代王の弟にあたる。つまり今代の王、レグルス陛下は父のいとこなのだ。その王に俺は生まれた時から溺愛されているのである。
俺が生後三か月になったころのことだ。父が俺の生後半年のお披露目会を開くのを待ちきれず、王は「仲のいい従兄弟の子」に会うため、公爵家に先触れも無しにお忍びでやってきた。
そして俺を一目見たとたん「地上に天使が降臨した」のだと言い張り、俺を膝に抱っこして離そうとしなかったのである。そのうえ、「じゃあまたな」とさりげなく俺を抱いたまま王城に帰ろうとしたのだという。その結果、王は激怒した父に「公爵家出入り禁止」を言い渡された。
騎士団長である父は、後にこのときのことを俺にこう語った。「常識人の王妃様のおかげで無事だったが、下手をしたらお前は王家に養子に取られていたかもしれない」と。「王家と一戦交えることになるところだった」と。
怖い。怖すぎる。
それでも諦めきれなかった王は、次の手を考えた。「行くのがダメなら、来てもらえばいいんだ! まさか、王家の要請を断らないだろう?」と言ったかどうかは知らないが、とにかく王は、俺が二歳になったとたん「同じ年齢の息子の側近候補として」赤子の俺を王城に招くことにした。具体的には、毎月一度の茶会参加を義務付けたのである。
職権乱用にもほどがあるだろう。大丈夫か、この国。
こうして通うことになった王城。
だが意外なことに、そこは俺にとって大変居心地のいい場所となった。
第一王子のレオリード様は弟を溺愛する兄のように俺を可愛がってくれたし、俺と同じ年の第二王子アイスリードは、まるで弟のように俺に懐いた。(今ではアイスは俺の唯一の親友だ)
こうして図らずも手にした俺の「王城フリーパス」。
今では城は俺にとって第二の我が家と言ってもいい。なにしろ王城に俺の居室が用意されるくらいだからな。さすがにそれは断固として固辞した。俺が泊まる部屋は、俺の私物がありまくるのだが一応は「客間」ということになっている。
いずれにせよ幼いころから馴らされたおかげで、俺は王城に居ても我が家と変わらないくらい寛げる。俺のスキルを思えば、公爵家以外にも安心できる場所があるというのは非常に助かる。そう考えると、王の「職権乱用」も俺にとっては結果オーライなのかもしれない。
問題といえば、王が俺に「レグパパと呼ぶように」と主張することくらいか。
いくらなんでもそれはない。大丈夫か、この国?
とりあえず妥協点として「レグおじ様」と呼んでいる。
ちなみに、王城には俺が17歳になった今でも、幼いころの俺を描いた「地上に降臨した天使」の画が飾られている。レオ兄上とアイスの絵よりも数が多いのが、地味に辛い。レグおじ、どんだけ俺のこと大好きなんだよ……。
こういった事情でレグおじに息子のように溺愛されているがゆえ、お披露目会でしでかしたにもかかわらず、俺にはお咎めなし。
それに対して、どの貴族からも糾弾の声ひとつ上がらなかった。
代わりに上がったのは、こんな声だ。
「あまりの驚きに我を忘れてしまったのでしょう。まだ五歳なのです。当然ですわ」
「きっと混乱されていたのでしょう。お可哀そうに」
そう。居合わせた被害者がみな俺の顔に篭絡されていたのだ。
いっそ怒ってくれた方がどれだけ良かったことか。
複雑な気持ちになった俺は、五歳までずっと貯めて来た小遣いを全て「お詫び」として教会に寄付した。
しょっぱい思い出だ。
※※※※※
そんな誰もを魅了する俺の容姿がどんな風なのか、気になるだろう?
そうだなあ、一言で言うと「あまりの美しさに全身から光を放っているかのように見える」。
具体的にはこんな感じ。白磁のように滑らかで透き通った肌(どんな不摂生をしてもつるっつるなのだ)。印象的な目はくっきりとした二重のアーモンドアイで、瞳の碧の鮮やかさから「空を映した至上の碧」と評され、詩にも詠われている。スッキリ通った形の良い鼻梁。薔薇の蕾に例えられる艶やかな唇は紅を塗ったかのよう。それらが絶妙なバランスで配置されている小さな顔を、絹糸のように滑らかな黄金の髪が優しく彩っている。
一応言っておくが、これは俺が言っているんじゃない。全て周りに言われる言葉をまとめたものだ。
お気付きだろうか。
そう、残念なことに俺は男らしい容姿ではない。
女っぽいわけではないのに、どこをどう見ても「美しい」のだ。
ちなみに決して小さくはない。身長は現在17歳にして183センチ。平均よりも少し高いといったところ。
身体だって鍛えているし、腹筋だって六つに割れている。スラリとしたスレンダーな身体はユキヒョウのようにしなやかで高い戦闘力を誇り、その辺の破落戸ならば10人くらい軽くあしらえるだけの能力はある。自慢なのだが、男としては理想的な身体だといえよう。
それなのに、この顔がそこに乗るだけで「カッコいい」よりも「美しい」「麗しい」が勝ってしまうのだ。しかも圧倒的に。
「身体を鍛えたら……」などという希望的観測などとっくの昔に捨てた。無敗を誇る美は、カッコいい俺すら許してくれないのである。
ちなみに俺のこの美貌は女神に与えられたスキルによるものではなく、生来のものだ。
実際、生まれた瞬間その場にいたものをすべて魅了し、両親のみならず俺を取り上げた医者ですら「天使!」とその場に崩れ落ちたという。つまりは赤子のときから美赤子だったのである。
先述の通り、生後三か月の俺ですら、美形一家で有名な王族を一目で篭絡し、誘拐されそうになったくらいなのだ。察して欲しい。
だからこそ「スキルの意味が分からん」と言っているのだ。
これ以上俺を美しくしてどうなる! トラブルを呼ぶだけだろうが!
俺に必要なのは、俺の身を守る「戦闘スキル」だったのに!
読んでくださいましてありがとうございます♡
少しでもいいねと思っていただけましたら、ぜひ☆をポチっと……|ω・)チラリ
作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。




