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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。
ウィル17歳

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38/40

留学の準備

 こうして怒涛のように俺とアイスの婚約がなされ、かつ俺の外交大使任命、俺とアイスの留学(受け入れ国側の許可は得ていないが、レグおじに親書を送ってもらうからたぶん大丈夫だろう)が決まった

 巻き込み事故のようで申し訳ないが、アイスの側近、ルドとフィスも護衛を兼ねて俺たちに同行してもらうことになるだろう。

 もちろん強制ではないが、半分強制のようなものだろうな。すまん、二人とも。将来の約束された地位のため、頑張って耐えて欲しい。

 ちなみにメルは当然のようにカウントしている。だって俺の側近、メルしかできないし。これは仕方ない。母が「ウィル付手当」なるものをメルにつけまくっているから、それでチャラだ。



 俺のお陰で急に忙しくなったオルシス国勢。

 一方、新学期から留学生として学園に通うはずだったゼオ。彼もとんぼ返りすることになり、大忙しだ。


 ゼオには連合勢のとりまとめも頼んだ。要するに、連合国側から同じように留学生としてやってきたアルメルト国のもうひとり(名前は忘れたが、あの薄暗い部屋にいたヤツ)に、事情が変わった(攻略対象が国を出ることになった)ことを説明してくれ、という面倒ごとの丸投げだ。

 だってアイツ、なんか怖かったんだもん。

 真っ暗な部屋で何してたんだ、とか。それなのにあんなハイテンションで近づいてきたこととか。

 お互いに顔が見えなかったことだけが救いだ。

 一人で対峙するには、怖すぎる。間には絶対にアイスとゼオ、できればメルたち側近勢も嚙ませたい。


 それと並行して、「アイスリード殿下とその婚約者である特殊スキル持ちの令息が、外交大使として連合諸国を訪問したいと望んでいる。最初の訪問地として連合代表のジルべリアを希望しているのだが……」という感じでジルべリアに遣いを出し、謁見の機会を作ってもらう。

 俺の身の安全のため、婚約者であるオルシス国第二王子アイスも同行する「国賓待遇」。

 連合で画策していたことの一切合切が徒労に終わることも含め、ジルべリア側にもそれなりの根回しや準備が必要だろう。

 そのあたりを、うまいことゼオに頑張ってもらいたい。


 あれ?

 なんかゼオの負担が多いような……。いや、気のせい気のせい。

 連合側が俺について勝手に画策してやがったのがいけないんだ。

 俺のせいじゃない。





 とりあえず大急ぎで婚約者(仮)になったアイスを連れて公爵家に戻ると、母がロビーを行ったり来たりして待ち構えていた。


「ウィル! 戻ったの? どうなったの? 何か詳しいことは分かった? お父様とはあちらで会えたかし……


 言いかけて俺の後ろのアイスを見て顔色を変えた。


「まあ、アイスリード殿下! ようこそお越しくださいました。ウィルがなにかご迷惑をおかけしていないといいのですけれど」などと言いながら、「どうなっているのよ⁈」と俺に鋭い視線を寄越す。

 どうなったのかを言ったら卒倒しそうだ。

 なんとかオブラートにくるめないものか……


 などと俺が思案している間に、アイスがやらかした。

 すっと母に歩み寄ると、満面の笑みを浮べ、こうのたまったのだ。


「先ぶれもなく突然お邪魔して申し訳ない。気持ちが逸ってしまって。王家から婚約の打診を送らせていただいたのだが、それについてウィルから直接返事を貰いまして。無事に婚約者となることができました。もちろん、ヘンリー叔父上の了承も得ております」


 言っちまった! オブラートも何もなく、いきなりの直球だ。


 ヒュ、と息を吞むような音がした。

 と同時に母の身体がゆっくりと後ろに倒れていく。


「わああ! 母上!」


 慌てて手を伸ばし、床に倒れる前になんとか抱きとめることに成功した。

 危なかった。本当に失神するとは思わなかった。


 ひとまず椅子を持ってこさせ、そこに母をそっと座らせる。

「目を覚ましたら教えてくれ」と後ろに控えていた執事に母の介抱を頼むと、俺はアイスに猛然とくってかかった。


「……アイス……! もう少し言い方は無かったのかよ? せめてサンルームに場所を移してからとかさあ!」


 振り返ると、アイスが驚きと反省と困惑の入り混じったような顔で、手を差し出したポーズのまま固まっている。


「い、いや、まさかそこまでとは……」


「俺が言うのもなんだが、母上はもともと気苦労が多いんだよ! なにせ誘拐に次ぐ誘拐、学園に入ったら入ったで連日の信者詣で。ようやく落ち着いたところで、ダメ押しのように王家からの王命だ。弱ったハートにはダメージがデカかったんだろう」


「だな。王命だが、もしやという希望があったんだろう。それが一瞬で打ち砕かれたと……」


 俺とメルで、責めるような視線をアイスに送る。


「い、いや、でも、ウィルも納得してくれただろう⁈」

「そりゃそうだが、言い方ってもんがあるだろう。徐々にやんわりと伝えればよかったんじゃねえの?」

「う、そ、それは……」


 ここでメルが無異常なひとこと。


「ウィル。外交大使や留学の件も伝えるんですよね?……大丈夫か?」

「あー……。…………どうやってやんわりさせる? アイス、いい案はあるか?」

「…………とりあえず、目を覚ましたら長椅子に移動していただいてから話すほうがいいだろうね。いつ倒れてもいいように」







なんだかんだ、ゼオとお母様が一番の被害者に……

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