ゼオライト6
「そこまで全部俺たちに言ってしまっていいのか?」
様式美として聞いてみた俺に、ゼオは困った顔で苦笑い。
「良くはないが、今さら取り繕っても意味がないでしょう? なら、正直に言うことで私に絆されてくれないかと思って」
確かに、最初の態度と比べれば雲泥の差だ。
出会ったときの彼にとって、俺は「獲物」だった。
だが、今は逆に彼のほうが俺の獲物、いや……飼い犬?
こんな風に思っている時点で、俺は絆されかかっているのかもしれない。
アイスはそんな俺の甘えを許さなかった。
ゼオとの間にきっちりと線を引く。
「確かに取り繕っても意味がないね。だが……ウィルは絆されても私はそんなに甘くはありませんよ? ご自身に対する過大評価には、聞いているこちらの方が恥ずかしくなってしまう。ジルべリアの皆さんはみな自信家のようだ」
「アイス、言いすぎだ! 俺が規格外なだけで、ゼオだってジルべリアではそれなりに整った容貌なんだって! でなきゃこの俺に色時掛が通用するだなんて恥ずかしい勘違いはしないさ。 自意識過剰なのは仕方がないだろう? ゼオの知る世界ではゼオが一番だったんだよ。寛大な心で許してやってくれ」
「それなりに……勘違い……」
ショックを受けたような表情でゼオが深く反省している。
頭をガクリと前に倒し「は、はは……私は……そうだな、とんだ勘違い……」と繰り返しているから、きっと同じ間違いは侵さないに違いない。
そんなゼオを見て、アイスとメルが口元を覆って震えだした。
「ふ、ふふ。そうだね、確かに。でなければ……っ、ふはっ! そんな恥ずかしい勘違いは、しないだろうからね。うん。私も寛容な心でゼオライトに接することにするよ」
「それなりに……ですか。ええ、ウィル様と比べれば誰であろうとそれなりですよね。ゼオライト様も現実をしっかりとお知りになられたことでしょうし。そうして差し上げてください」
「あの、そ、それ以上は……!」
意を決したようにまた口を挟んで来たゼオの側近。
測らずしも俺の顔を直視してしまう形となり、あんぐりと口を開けたままぼうっと俺の顔に魅入ってしまった。
メルがスッとそいつの方に向かい、その目の前でパンと手を鳴らす。
「はい。正気に戻ってください。ウィル様を見てしまったら、すぐに目を逸らすようにしてくださいね」
ハッと正気に戻った側近が、慌ててゼオの横にしゃがみ、そっとその背に触れた。
「……ゼオライト様、諦めましょう。さすがは女神様の愛し子。我々にどうにかできるような方ではございません」
「……は、はは……自意識過剰か……恥ずかしい勘違いか……。ふふふ。そんなことを言われたのは初めてだ……」
ゼオはまだまだ反省し続けているようだ。
俺の顔を見ないように微妙に視線をそらしながら、側近が初めて名乗った。
「アイスリード殿下、バークレー様、我が主人が大変失礼を致しました。おくらばせながら、どうか名乗ることをお許しください」
「うん。遅いね。だが許すよ」
しれっと嫌味を言うアイス。
こら。可哀そうな中間管理職をイジメるなよ。
「まあ、そう言ってやるな。話がすすまないじゃないか。いいよ、名乗って」
「は!」と側近が深々と腰を折った。
「私はジルベルト国、タガー公爵家が次男、ハインツ・タガーと申します。我々にバークレー様を害する意志はございません! どうかお許しください」
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