ゼオライト3
あの遭遇のときには、顔を見られないように胸から下しか見ていなかった。
だがこうしてあらためて向き合ってみると、ゼオライトもなかなかの美形だ。
身長が高いのはいわずもがな。
少し癖のある肩までの淡い金髪に、この国には無いジルべリア王家特有の紫の瞳。
目の下のギリギリにある小さな泣きボクロが妙な色気を感じさせる。
口元には常に楽し気な笑みを浮べていて、その言動も相まって女たらし感が強い。
アイスが正統派美形とすると、こっちは……そうだなあ、退廃的美形?
「いや、ただの変態……?」
ポツリと口にした言葉に、横に居たアイスの気配が変わる。
「……ウィル? 私の知らないところで彼に何かされたのかな? 」
目がマジだ。いや、すまん。失言だった。
「俺の一方的なイメージというか……まあ、勝手な印象? アイスが正統派な美形なら、ゼオライトはなんていうか……女たらしっぽいなあなんて。で、会ったばかりの男の俺にもグイグイくるから変態なのかなって」
「「「ぶふっ! ……し、失礼いたしました」」」
「ブホッ……! も、申し訳ござません」
俺の顔を見ないようにして、入り口で空気となっていたゼオライトの側近と護衛が吹き出す。
「へ、ヘンタイ……この私が……?」
跪いたままのゼオライトの瞳からハイライトが消えた。
ここぞとばかりにアイスが追い打ちをかける。
「出会ったばかりの、しかもホスト国の王子の婚約者の前で膝まづいてチャンスを請うなんて、女たらしか変態と思われても仕方がないのでは? ふふふ。なかなかの強心臓ですよね。余程ご自分に自信があるのでしょう。残念ながらウィルの好みではありませんが」
やめてあげてくれ! もうオーバーキルだ! 跪いていたのが、乙女のようにぺたりと床にしゃがみ込んでしまっているじゃないか!
でも、狭量なアイスの追撃は止まらない。
アイスは太陽のような光り輝く笑みを浮かべて、こう付け加えた。
「ところで、ウィル。私のことを正統派美形だと思ってくれていたんだね。嬉しいな」
ウィル、と言いながらなぜゼオライトを向いて言っているんだ、アイス。
だがまあその通りだから黙って頷いておく。
俺のスキルなど関係なく、ゼオライトはコテンパンに打ちのめされてしまった。
一応来賓として迎えた相手に結構な対応をした自覚はある。変態とか言っちゃったし。
でも、そもそもの発端は、アイスの言った通り「ホスト国の王子の婚約者に岡惚れしたこと」なのだ。
下手に介入するとヤバいと判断したのだろう。ジルべリア国側の側近も護衛も見て見ないふり。
全力で顔と目を背け「我々な何も聞いておりません」「我々は何も見ておりません」「なにかあったのですか? あれえ?」とアピールしている。
うん。いいんじゃないか?
これならやりやすい。
一度折れた人間は御しやすいからな。
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