ゼオライト
とりあえず一番の強敵から制す。もとい、味方にしよう。
ゼオライトは出会った早々俺を口説いてきやがった変態ではあるが、その分御しやすそうではあったからな。
そうこうするうちに、ヤツの部屋の前に着いた。
ジルべリから来た護衛だろうか。
屈強そうな男が二人、扉を守っている。
「やあ。ご苦労様」
俺を背に隠し、アイスが二人に向かって片手を挙げた。
さすがに勢ライトの同級生になるアイスの顔は知っているようで、「は! 滅相もございません!」と慌てて礼を取る二人。
「ああ、楽にしてくれ。実は、殿下に私の婚約者を紹介したいと思ってね。いいかな?」
「ご婚約者様を?」とアイスの後ろを覗き込もうとする男の視線から、さりげなく俺を隠すアイス。
「すまないが、私の婚約者は恥ずかしがりやなんだ」
「し、失礼いたしました! 確認してまいりますので、少々お待ちください」
慌てて中に確認に行く二人を見送った俺は、アイスの横腹を肘でつついてやった。
「おい、恥ずかしがりやって誰だよ」
「ウィルかな。だって、顔を見られたくないでしょう?」
「そりゃそうだけどさあ……!」
「しっ! 二人とも、静かに! 戻ってきたようですよ」
メルの言葉と同時に扉が開いた。セーフ!
「どうぞ。殿下がお待ちです」
「ありがとう」
通された客室は、第二王子であるアイスの部屋よりも豪華だった。
「おお……!」
コッソリ感嘆の声を上げた俺に気付き、アイスが小声で囁く。
「私はスッキリした装飾が好みなんだ。ここは特別な来賓用だからね。我が国の威信をかけたしつらえとなっているる」
そこは廊下と同じだな。
と。
部屋の奥からあの変態の声がした。
「やあ、アイスリード。よく来てくれたね。噂のご婚約者を紹介してくれるそうだね。とても光栄だよ。ぜひお会いしたいと思っていたんだ」
「ゼオライト、約束もなしに突然すまない。時間を頂いて感謝する。実は、私の婚約者も学園で君のクラスメートになるはずだったんだ。でも事情が変わってね。せめて紹介だけでもと思って」
事情が変わって、というところでゼオライトの目がキラリと光った。
「ふうん。事情が……ねえ? ところで、後ろのお二人は? そちらの方の金の髪には、見覚えがある気がするのだけれど……」
よし!
俺はヤツに見せつけるかのようにグイっと顔を上げ、アイスの横に並んだ。
「初めまして。アイスリード殿下の婚約者、バークレー公爵家が嫡男、ウィリアム・バークレーと申します。どうかウィリアムとお呼びください」
ハッとゼオライトが息を吞む。
「……ウィリアム……。ふ。フィンメルじゃないんだ?」
含みのある視線を寄越すのに、しれっと笑顔で言い断言してやった。
「ええ。ウィリアムです。フィンメルはそちらにいる私の侍従です」
「失礼いたします。ウィリアム様の侍従、フィンメルと申します。お見知りおきを」
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