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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。
ウィル17歳

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俺のスキルの意味

 俺だって色々考えたんだ。


 昔むかし、まだ魔族のいた時代に与えられた特殊スキル、「勇者」「魔術師」「大賢者」「聖女」。

 特殊スキル持ちの彼らは、その類まれな剣と魔法、知恵と癒しの力で魔王を倒し、人類を救った。

 魔王が居なくなったおかげで、徐々に世界から魔物が消え、平和な時代が訪れた。


 次に特殊スキルが与えられたのは、今から120年前。

 魔王から人類を救ったというこの国に対する恩義を忘れ、平和な時代に慣れた他国がこの国の発展を妬み、この国の恵みを奪おうと画策しだしたころ。

 またしても特殊スキル「勇者」「聖女」が授けられた。

 勇者が戦場で先頭に立って兵を率い、聖女が兵士の傷を癒す。

 元々の武器の質の良さ、スキル「体術」「剣術」持ちにより鍛えられた兵の質の良さもあり、我が国は圧倒的な勝利を収めた。

 それにより、この国は再び長の平和を手にする。


 そしてまた現れた特殊スキル持ち、俺。

 その特殊スキルは、「勇者」でも「賢者」でも「聖者」でもなく、「美」。

 各時代、女神はこの国の危機に先んじて、その危機を退けるにふさわしい特殊スキルを与えてきた。

 とすれば、一見平和に見えるこの時代、必ず何かが起こるということ。

 それはなんなのだろう。

 戦? それとも災害かなにか?

 いずれにせよ、「美」でいったい何ができる? 

 単なる見目の良さで防げるような危機など、あるのだろうか?

 考えて考えて。考えて考えて。

 5年経ち、10年経ち。それでも何も起こらなかった。

 俺が何をすべきなのかも分からない。


 そこで俺は考えるのをやめた。

 スキル「美」は、女神のきまぐれ。意味なんてない。

 そう結論付けたのだ。




 だが今分かった。分かってしまった。

 平和な時代の戦、それは静かなる頭脳戦。

 知略と策謀。外交という名で敵はこの国にじわじわと手を伸ばしてくる。

 表向きは友好的に。野心の刃をその笑顔の下に隠して。

 だからこそ「スキル『美』」が俺に与えられたのだ。

 中途半端な美しさは、争いや諍いを生む。しかし、全てを調節した圧倒的な美は、ある意味絶対的な力となって周囲を従えるのである。

 武器で戦う時代は終わった。必要なのは、人の心を従える絶対的なもの。


 これまで俺はこのスキルを「使おう」と意識したことはなかった。

 だから()()()使()()()()ができなかったんだ。

 でも、これからは違う。

 俺はこのスキルの意味を正しく理解し、受け入れた。


 悪かったな、女神。

 これまでさんざん罵った言葉は取り消せないが、その分だけの働きはしてやるよ。




 俺はすっくと立ちあがり、自身に満ちた口調で告げた。


「陛下、父上、俺に外交の権限を与えてください」


「……は?」

「何を言っている? 外交などさせられるわけがなかろう! 他国がどれだけお前のことを欲していると思っておる!」

「無謀にもほどがある」


 四方八方から上がる否定の言葉。

 だろうな。こうなることは分かっていた。

 さあ。

 俺のスキルを今こそ披露しよう。


 俺はスッと片手を上げて注目を集めた。

 そしてゆっくりとひとさし指をたて、そっと唇に当てる。


「しー。静かに」


 小さな呟き程度の音量。

 でも、みんな呆けたような顔で口を閉じた。

 俺の顔から眼が離せないでいるようだ。

 うん。いいぞ。

 満足した俺は、穏やかな微笑みを浮かべて褒めた。


「ありがとう。そのまま静かにしていてくれるか?」


 こくこくこく。

 無言で頷いたのを確認し、俺は陛下と父上に向かって、先ほどと同じことを口に。


「もう一度言うぞ? 俺に外交官の権限を与えて欲しい。俺なら他国を牽制できる」


 いいよね、と微笑みかけると、レグおじと父上が俺を見つめたままゆっくりと頷く。

 ここでハッと夢から覚めたような顔をしたアイスが、慌てて叫ぶ。


「父上!」


 どうやら常に俺と一緒にいたアイスにはそれなりに「スキル『美』」への耐性ができていたようだ。

 俺はそんなアイスを見つめ、優しく微笑んで見せた。


「大丈夫だ、アイス。見ただろう? 俺のスキルを。俺は特殊スキル持ちだぞ? この時代に俺しか特殊スキル持ちがいないということは、俺だけでなんとかなるということだ。俺を信じてくれ」


 はく、と息を吞んだアイスがゆっくりと頷いた。


 よし。

 パン! と大きく手を打ち鳴らすと、部屋の空気が一変する。


「ハッ! な、なんだ、今のは。ウィルの言うことならばなんでも叶えてやりたいと思ってしまったぞ?」

「うむ。反対するつもりだったのに、いつのまにか同意させられてしまった」


 頭を振りながら青ざめるレグおじと父上。

 アイスはアイスで、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。


「悔しいが、確かにウィルの言う通りだ。外交に向いている。ウィルに微笑まれながら頼まれれば、断れるものはいないのではないか? ウィルの顔に慣れている私や父上たちでもそうなんだ。免疫のない他国のものなら、ひとたまりもない」

「確かに。ある種の魅了に近い効果がある。しかも、実際に経験してみると、これは魅了とは別のものだ。絶対的なものにたいする畏怖に近い」


 言い得て妙だ。

 そう。これは「絶対的な美」によってそのほかの理を全てねじ伏せる、いわば禁じ手。

 俺自身、ここまで上手くいくとは思ってもいなかった。

 マイナスからゼロにするつもりが、マイナスからプラスに。つまりは、俺が意識的に使う俺の「スキル『美』」の威力はそれほどだということだ。

 以前アイスが「ウィルだからこそ授けられたのだろう」と言っていたが、確かに。

 悪用する気になればなんでもできてしまう、とんでもないスキルだ。


「いや……俺がいうのもなんだが……ヤバいですね、俺のスキル。思った以上の威力でした」


 アハハ、と笑えばみんなの目が死んだ魚のような目になった。

 すまん。やりすぎた。




読んでくださいましてありがとうございます♡

少しでもいいねと思っていただけましたら、ぜひ☆をポチっと……|ω・)チラリ


作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。



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