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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。
ウィル17歳

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25/40

婚約

 俺の言葉に陛下が急に「わっはっは!」と笑いだした。


「いやはや、全くその通りだ! うむ! さすがは私のウィル!」


 いや、アンタのウィルじゃないけどな? と心の中でツッコミを入れつつ、これまで俺を守ってくれていたと知ったから、黙っておく。


 陛下はパンパンと手を叩き、側近のエメット侯爵に命じた。


「騎士団長と、宰相を呼んでくれ! 大至急だ! 《《例の件だ》》と言えば分かる」

「ハッ!」


 俺の顔を見ないようにして素早く立ち去るエメット侯。

 王族ゾーンに出入りを許される面々が安心なのは、俺に対するこういう態度だ。

 俺の美を理解しているがゆえの「全力で抗う」「絶対に信頼を裏切らない」という意思を感じる。素晴らしい。


「さあ、座りなさい。サイラス(ウィルの父上)にも宰相にも話は通してある。すぐにやってくるだろう」


 父はもう陥落済みだったか。あの親バカな父が、と思ったが、父も「悠長にしてはいられぬ」と判断したのだろう。

 

「……なあ、アイス。なんだかんだいって、レグおじ様も、アイスも、ギリギリまで俺を尊重してくれていたんだな」


 思わず口にすると、アイスが「ようやく理解してくれたのか」と笑った。

 俺は単に「特殊スキル持ち」だからではなく、ちゃんと「ウィル」として大事にされているんだな。そう思ったら、口元がムニムニと動いてしまう。


「ふふふ。スキルがなくとも、父上も私もウィルのことが大切だし、大好きだからね」

「当たり前だろう! 我が息子と同じように愛しておる。まさかそれを疑っていたわけではあるまいな?」

「いや、それは疑っていませんが、俺の顔が好きだからなのかな……なんて……」


 そう思われても仕方ないくらいの溺愛ぶりだもん。

 そう言えば、レグおじ様の表情が明らかにしょんぼりとしたものになった。


「まさか、まさかそのような……! 弟同然のサイラスの息子なのだ。ウィルが生まれる前からウィルに会うのを楽しみにしていたのだぞ?」


 あまりにもガッカリした様子に、そんな誤解をしていたことを申し訳なく感じる。


「あの……俺、レグおじ様のこと、好きですよ? 第二の父親のように思っております」


 言い訳じみて聞こえるが、嘘ではない。

 レグおじの俺への愛は、信者たちが俺に向けるものとは違った。だからこそ、俺はおじが嫌いじゃなかった。むしろ、あそこまであけすけに好意を示され、嫌えるわけがない。うっとおしいと思うこともあったが、俺もレグおじのことがちゃんと好きなのだ。王族に対して失礼かもしれないが、家族のように俺もレグおじを愛している。


 するとレグおじの顔からするりと表情が消えた。

 いくらなんでも失礼だっただろうか?


 と。

 ボタボタボタっとレグおじの目から涙が零れだした。


「わああっ! レグおじっ! どうしたっ?!」


 思わず素になって叫んだ俺は、次の瞬間、テーブル越しに身を乗り出したレグおじに抱き締められていた。


「……初めて言うてくれたな。嬉しいぞ、ウィル」


 そうか。言ってなかったか。

 俺はレグおじから一方的に好意を受け取るだけで、返してはこなかった。

 

「……父にも母にも言っていませんよ。だって……照れくさいでしょう? 息子とはそういうものです」

「ははは。そうだな」


 ぽんぽんとその背を撫でるようにしてみたら、幼い頃には途方もなく大きく見えた背中はいつの間にか俺が手を回せるほどになっていた。

 こんな小さな背中で、この人はこの国を背負ってきたのか。


「……レグおじやアイスにだけ背負わせてすみませんでした。これからは、俺も背負います。婚約者として、アイスと同じ気持ちは返せなくとも、家族として、親友として俺も戦います!」

「……そうか。無理はするなよ?」

「あはは! 大丈夫。女神の愛し子ですし?」


 カラッと笑って見せる俺に、レグおじがほっとしたような表情になる。

 無理をしているわけではないと伝わったのだろう。


 すると、バタバタと言う足音と共に、父が飛び込んで来た。汗だくになって焦っている姿なんぞ珍しい。

 

「ウィルが来ていると聞きました! まさか、本当にアレを?!」


 言いかけて、机越しに抱き合う俺とレグおじを見て目を丸くした。


「……あー……どういう状況だ? いったい何があった?」


 ブハっと耐え切れずに噴き出したのは、メルだ。

 我慢の限界だったらしい。

 集まった視線にそっと目をそらし「私は知りませんよ?」とそ知らぬ顔で澄ましている。バレバレなのに。


 こほん。

 アイスが咳ばらいをひとつ。


「ウィルが承知してくれたというので、父上が喜んでしまってね」

「はぁ……」


 解せぬ、という顔でそれでも父は納得した。

 許可も取らずにアイスと反対側の俺の横にドカリと腰を下ろす。


「ウィル。無理をしてはいないな? どうしても嫌ならば、この父がなんとかしよう」


 父よ! 王族の前だぞ?

 だがこの気の置けない関係こそが、父とレグおじのこれまでなのだろう。

 

 アイスとレグおじの祈るような視線が俺に刺さる。

 分かってる。大丈夫だって。もう腹はくくったんだ。


「俺が決めたのです。父上、今まで俺を護ってくれてありがとうございます。俺も戦います。このスキル『美』でね。このスキルが何のためにあるのか、分かったんです」


読んでくださいましてありがとうございます♡

少しでもいいねと思っていただけましたら、ぜひ☆をポチっと……|ω・)チラリ


作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。



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