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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。
ウィル17歳

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22/40

またまた大ピンチ!

 と。

 真っ暗な部屋の中でごそりと誰かが動く気配。


「……ねえ、きみは誰?」


 はぁ?

 なんだ、誰かいるのかよ! マジか!

 少し高温の声音。だが男だ。

 バサッと音がしたところを見ると、本でも読みながら寝落ちでもしていたのだろう。

 不用心なことだ。


 俺はサッと立ち上がると、声の方に背を向けて扉に手を掛けた。

 幸い、この暗さでは俺の顔はバレていないはず。このままとっとと逃げよう。


「すみません。扉が開いていたので、不審に思いまして確認に。まさか人がいるとは。空き部屋だと勘違いしておりました。失礼いたしました」


 言いながら部屋の外の気配を伺う。

 よし、人の気配はないな。行くか。

 アイスたちはまだ来ていないようだが、ここでコイツと居るするよりは外の方がマシだろう。


「失礼をお詫びいたします。では」


 とたん。カチという小さな音とともに、パッと部屋の中央に灯りが灯った。

 

「待って!」

「?!」


 急に灯った灯りと声に、反射的に振り向いてしまう俺。

 慌てて顔を背けたのだが、遅かった。


「わあ! ねえ、きみってすっごくキレイだ! もしかして、『スキル美の人』?! ボクはアルメルト国のミカエル・メルト。あのね、ボク新学期から……」


 学習した俺は、はしゃいだ声をあげた相手が近づいてくるより先に、大慌てで外に飛び出した。

 礼儀も何もかもかなぐり捨てて、逃げるが勝ち!


「急いでいるので失礼しまーーっす!!」

「あああーっ! ねえ、まってよお!」


 

 


 数分後。

 植木の陰にしゃがみ込んで隠れながら、俺は切ない気持ちで過去の自分を振り返る。

 ああ。フードか何かを被って来れば良かった。せめてメガネだけでも。俺の馬鹿。勝手知ったる王城だからと、油断しすぎだろう。

 行動指定範囲(王族専用棟)外に何があるのかを分かっていなかった。


「……坊……」


 ん?


「ウィル坊~~~おいで~~~」

「どこにいるのかな?」


 あの声は……!


「メルううう! アイスうう!」

「うわあっ! ウィル様! なんてところに!」

「ウィル! 良かった!」


 バッと飛び出したままの勢いで抱き着いた俺を、アイスがしっかりと抱き留めてくれる。

 そのまま俺の顔を抱え込むようにして、見えないよう隠してくれるアイス。


「無事で良かった。心配したんだぞ?」


 心底安堵したような声音と頬に伝わる早い鼓動に、相当心配させてしまったのだと分かった。


「ごめん……。なあ、なんで俺がここに居ると分かったんだ?」

「さっき誰かを探しているようなゼオライトを見かけてね。珍しく狼狽していたから、ウィルに会ったのかと思って……。大丈夫だった?何があった?」


 そうか、アイツか。思わずビクリと身を固くすれば、とんとん、と子供にでもするように背を優しく叩かれた。

 とたん、泣きたくなるほどの安堵が俺を包む。ここに居れば大丈夫だ、と心底ほっとした。

 すり、と無意識に頬を摺り寄せている自分に気付き、慌てて離れる。

 自分で自分が怖い。俺はいつの間にアイスにここまで依存していたんだろう。


「そうですよ。迷い込むにしても、どうしてよりにもよってこんなところに……」


 メル、それを言うな。俺だってそう思ってる。


「とりあえず、戻ろう。ここ、ヤベエよ」


 アイスとメルの袖を引くと、二人はハッとしたように頭を前に振った。


「だね。誰かに見つかる前に急ごう。気分が悪くなった友人を支えていることにするから、大人しくしていて」


 バサリと頭からアイスの上着を被せられ、二人に支えられるようにしてアイスの部屋に戻る俺。

 最初は抱きかかえられそうになったのだが、それは断固拒否した。いくら何でも情けなさすぎる。


 途中、幾人かの使用人とすれ違った。が、アイスが「すまない。友人の体調が……」と憂い顔でやり過ごしてくれた。王城での万能ガード、アイス。有難い。俺は今日ほどアイスを心強く思ったことはない。

 メルも俺を助けてくれたのだが、アイツは俺を猫の子でも呼ぶようにして探していやがったからな。いくら名を呼べないにしても、もう少し言いようがあるだろうが! あれは絶対に面白がっていた。





読んでくださいましてありがとうございます♡

少しでもいいねと思っていただけましたら、ぜひ☆をポチっと……|ω・)チラリ


作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。



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