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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。
ウィル17歳

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19/40

王族の牽制

 俺の行動が制限されていたのは、使用人たちに誘拐されたり、会う人を魅了してしまうからだけではなかった。

 俺のスキル「美」は、他国にとっても利用価値がある。それに気付いていないのは俺だけだったのだ。

 王も父も、当初からそのことに気付いていた。

 周囲は俺が「政治的に利用しようとする他国に連れ去られること」をこそ警戒していた。だから俺は、家と王城、教会の往復だけしか外に出ることを許されなかったのだ。


 王族と俺の家族は、俺を守るため一計を講じた。

 俺を王城に通わせることで「王族に嫁ぐ予定」だとあえて周囲が誤解するよう仕向けたのである。

 この国の法律では同性婚はできないまでも、暗黙の了解での事実婚は多い。だからアイスと俺を常にセットとして扱うことで「ウィリアムは事実上のアイスリードの婚約者である」と周りに匂わせたのだ。

 これまでの特殊スキル持ちは、王族だったり、王族に嫁いだりするものが多かった。そのこともその誤解に拍車をかけた。


 学園に入ってからも、アイスがさり気なく周囲を牽制していたらしい。

 どうりで熱狂的な信者はいても、俺に直接触れて来るようなヤツはいなかった。

 言われてみれば全て「なるほど」と合点がいく。これは気付かなかった俺がうかつだったというほかない。


 そもそも、高位貴族の半数は学園入学するまでに婚約者を決める。

 残りの半数も、遅くとも高等学園入学までに婚約をする。それが貴族の当たり前。

 だが俺には婚約者がいなかった。アイスにも。

 俺は、俺とアイスに婚約者がいないことを考えないようにしていた。

 アイスに関しては政略婚になるのだろうと思っていたのもあるし、俺に関しては、周囲が俺の寵愛を競いあうのにうんざりし、口にするとなんだが「ご令嬢って怖い」と思わなくもなかったからだ。

 婚約者のいない状況は俺にとっても都合が良かったから、あえて聞こうともしなかった。

 誰も何も言わなかったから、婚約の打診がありすぎて全て断っているのかと思っていたし、こんな言い方は偉そうに聞こえるかもしれないが「俺と婚約したがる相手は沢山いるから、ギリギリまで婚約しなくてもいいだろう」なんてたかをくくっていたのだ。


 だが真実は、俺が思っていた以上に残酷なものだった。

 俺の美貌に並ぶ勇気がある相手が居ないというのが半分、残りの半分はアイスの牽制のせいだった。

殿下(アイス)と争って勝てるわけがない」というので、俺には()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


「なんてことだ! 俺、知らないうちに囲い込まれてる! もう詰みじゃないか!」

「ウィルってば、全く気付いていなかったよね。親友だと思って油断していたんだろう? でも、君の身の安全のためにも、君は私の婚約者になるのが一番だと思うよ?」


 悪びれることなくクスクスと笑うアイス。

 この野郎! 俺のこの状況はお前のせいだったのか!

 いや、俺を守るためにだから、ここは感謝するべきなのか?


 怒りかけて「あれ?」と首を傾げる俺に、メルが呆れたような声を上げた。


「気付いてます? 今もアイスリード様に丸め込まれるところですけど」

「はっ!そ、そうだ! 騙されるところだった! これまでだって大丈夫だったんだから、婚約しなくても、そのフリだけで良くないか? なんで今さら婚約だなんて言い出したんだ?」


 俺の言葉にアイスが口元を歪め、苦々しい笑みを浮かべた。


「状況が変わったんだよ。悠長なことを言っていられなくなってきた」

「どういうことだ?」

「私と君が婚約していないことが他国にバレた」

「……は? それに何の問題があるんだ?」


 アイスの目がキラリと光る。


「この120年、この国に攻め込もうなどという猛者はいなかった。でもね、この国は富みすぎたんだよ。牽制し合っていた諸外国が手を組んだ。彼らは争いではなく『婚姻』と言う形で特殊スキル持ち(ウィル)を手に入れることにしたらしい。ウィルのスキルはこの国を出ても有効だからね。来年、ジルベリア国、アルメルト国、サバナ国の第二王子が直々にこの国に留学してくる。彼らはみな私たちと同学年だ。高等学園入学と同時にというのならまだしも、卒業年になってそろって編入学してくる理由は、君だ。君にはもう後が無い。この国で同性婚が可能となった以上、私と君の()()()()()()()()がないというのは不自然だからね。みななりふり構わずに君を手に入れようとしてくるだろう。政略のつもりで来たのだとしても、君に会えばみな君に魅了され、そうせずにはいられなくなるはずだ」


 留学自体は友好国ではよくあることだ。

 だが、数か国から同時に、しかも皇太子自ら、しかも最終学年になっていきなり編入学してくるなどというのは、あり得ない。

 その目的が……俺?いや、そんなわけない。

 仮にそうだとしても、おかしくないか?


 俺は一番重要なことを叫んだ。


「俺は男なのに! なんでみんな王女じゃなくって王子を送り込んでくるんだよ!」


 するとメルが俺を小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。


「馬鹿なんですか? 王女を送り込んだら、この国に王女を嫁がせて終わりになるじゃないですか。ウィルが欲しいのなら、ウィルを娶って連れ帰るしかないんですよ」

「なんて勝手なんだ! 俺の意志は?」

「国と国の政略婚に、本人の意志など関係ありません。いわゆる人身御供ですね。高位貴族の義務としての」

「メル! お前は誰の味方なんだよ!」

「一般的なことを口にしたまでです。あなたの味方に決まっているでしょう」



読んでくださいましてありがとうございます♡

少しでもいいねと思っていただけましたら、ぜひ☆をポチっと……|ω・)チラリ


作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。



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