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特殊スキル「美」を持つ令息は、道端の石になりたい。  作者: をち。


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アイスとの話し合い

 こうして馬車を走らせやってきた、勝手知ったる王城なのだが……。


「無理だよね。王命だもの」


 頼みの綱だったアイスにあっさりとそう言われ、俺は途方に暮れた。


「いや、だってお前、俺だぞ? 俺とお前は兄弟みたいなものだろう? いくら俺が美しくたって兄弟と婚約するとか、無理だよな? 政略婚するにしても、後継ぎはどうする? メリットなんてないだろう」

「兄上と婚約と言われれば無理だけれどね。ウィルとなら話は別だ」


 アイスから出るとは思いもしなかった前向きな言葉に、俺は馬鹿みたいに口をパクパクさせてしまった。

 いや、だって、相手は俺だぞ?


「はぁ? じ、じゃあお前、俺と……その……キスとかできるのかよ? 」


 さすがに気恥ずかしくて口ごもる。

 結局のところ俺は、友情と愛情の違いは「そういう目で見られるかどうか」だと思う。

 逆に政略婚だというのならばそれはそれでいいのだ。その場合は「友情婚」ということで安心して今まで通りの関係で居られる。俺に対する虫よけにもなってくれるから、ある意味助かるともいえよう。

 アイスに限って大丈夫だとは思うが、何しろ俺の美はあらゆるものを超越してくる。念には念を入れてそこのところをはっきりさせておきたい。


 視界の端でメルが「あーあ、言っちゃった」と額に手を当てている。

 俺だってできればここまで言いたくなかった。でも俺の安心安全のためだ。しょうがないだろう?

 俺としては笑い飛ばすか、「それは無理だ」という言葉を期待してのセリフだったのだが……。

 

 アイスがふと表情を消して、俺の腕を掴んだ。

 

「お、おい、どうした?」


 グイとアイスに引き寄せられ、至近距離で見つめられる。

 近づく顔。それは俺の唇に触れる寸前で止まった。

 少しでも動けば触れてしまいそうなそれに、動けない。

 吐息がかかるほどの距離に、アイスの唇があった。


「できないとでも思った? ()()()()()()。この際だから言っておくが、私は君のことが好きだ。ゆえに私から王命に横やりを入れることはない。だからウィルも諦めて?」


 アイスの瞳のエメラルドが、その色を濃くしている。

 俺は知っていた。アイスが本当に欲しいもの好きなものを見るとき、その瞳の色は濃くなるのだ。

 まさか俺にそうなるなんて。

 あまりのことに愕然とする俺。見慣れたアイスの顔が別人のように見えた。

 と、掴んだ腕を引かれ、アイスの胸に倒れ込んでしまう。


「!!」


 チュ! 

 

 俺の額に一瞬だけアイスの熱が触れ、素早く離れた。


「おま、おまえ、何を……! 」


「ふふ。信じてくれた? もう一度言うね。()()()()()()? ウィルにとっては不本意だろうけれど、もう私たちも待っていられないんだ。逃してあげられない」


 ここでガラリと口調を変え、まるで日常会話のように暢気な口調で俺にこう尋ねた。


「ねえ、ウィル、気になる女性が居たりする? 」


 突然変わる話についていけない。が、先ほどまでのなんだか怖いアイスよりは、よほどマシだ。

 俺は困惑しながらも正直に答えた。


「い、いや、居ないが……」

「じゃあ、聞き方を変えよう。ウィルと婚約したい女性が居ると思う? 」

「そりゃよりどりみどりだろう? 大抵の女性なら俺と婚約したがると思うが」


 当たり前のことを返したつもりの俺に、アイスはクスクスと笑った。


「ふふふ」

「何がおかしい」


 学園に俺の信者が溢れかえっているのをお前も知ってるだろうに。

 

 すると、アイスが急に真面目な表情になった。

 そして、あくまでも穏やかに、まるで聞き分けのない幼子にでもいうかのように俺を諭す。


「あのね、ウィル。確かに君に心酔する信者は多い。だけど、君と婚約したい女性はいないと思う。酷なようだがこれは真実だ」

「は? 何でだよ。俺への貢物の数々、知ってるだろう? 」

「うん。でもね、だからこそ、そんなウィルの横に並ぶ自信がある女性が居ると思う? ウィルのスキルは美なんだよ? ウィルと婚約した女性がどうなると思うの? 周りからの嫉妬、嫌がらせ、それに人気のある婚約者が誰かほかの女性を見初めないかという疑心暗鬼……。普通の女性には無理でしょう。耐えられない」


 そんなことくらい、と言おうとして口を閉じた。

 だって崇拝されている本人の俺だって、重過ぎる好意は少し怖い。その俺への好意が形を変えて婚約者への刃となれば……。


「それに、ウィルを守れるだけの家じゃないと認められないよね。あのね、ウィルは君が思っている以上に危険な立場にいるんだよ? 120年ぶりの特殊スキル持ちである君が、襲われもせずに平穏に暮らせていられるのはどうしてだと思う? 」


 これには答えられるぞ。


「そりゃ、俺の特殊スキルが美だからだろう? 勇者や賢者と違って何の力もないし、ヒーラーと違ってこのスキルには使い道がない。ただ美しいってだけだからな。せいぜいが、昔街に行ったときみたいに門番にこっそり見逃してもらうだとか、その程度だろう? 」


 すると黙って聞いていたメルが呆れたように口を挟んで来た。


「ウィル様、その程度ではありませんよ」

「ええー? 返せない好意を寄せられて、困るだけのもんだろ? 剣術とかのスキルの方がよほど役に立つ。いっそのこと陶工とかの方がまだいいレベルのもんだぞ? 」


 はあ、とため息をついたアイスがメルに肩を竦めて見せる。


「……こういうところだよね」

「ええ。こういうところなんですよねえ……」

「なんだよ? 」

「うん。ちょっとウィル。座って話そうか」



読んでくださいましてありがとうございます♡

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作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。



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