魔王のスキル:レベルドレイン
さっさと賞金首を倒して金を得たいが、その前に準備がある。
1つは冒険者ギルドで正式に依頼を受ける事。
もう1つは仲間集めだ。
魔王時代なら単独で突き進んだが、今の俺はか弱い人間だ。
報酬が減るとはいえ、慎重に行動しないといけない。
そんな訳で、顔を隠す真っ黒な仮面をつけた後、夜遅くの冒険者ギルドに入る。
カランカランと気持ちの良い鐘の音とともに扉が開く。
「夜遅くにどうした?」
夜間担当のレイが受付に座って煙草を吸っていた。相変わらず態度が悪い。
「賞金首の討伐クエストを受けたい」
「賞金稼ぎか。そんな気持ちの悪い仮面を付けるとは、さぞかし色男なんだろうな」
レイは皮肉を言って、受付に賞金首リストを広げる。
「手ごろなのはハイパーウルフの討伐だ。ウルフは本来集団で行動するが、こいつは群れからはぐれたらしい。家畜に被害が出ているから、そこそこな額の懸賞金がかけられている」
1,000ゴールド。確かにそこそこ良い額だ。
だがアンリの薬代は1,000ゴールド。一瞬で無くなる。
「D級ダンジョンに潜む盗賊団はいくらだ」
「あいつらの首を狙っているのか?」
レイは緊張した顔で、盗賊団のリストを指さす。
「一人頭10,000ゴールド。10人居るから100,000ゴールド。親分の首は100,000ゴールド。計200,000ゴールドだ」
かなりの額だ。
「これが良い」
「別にいいが、先客がいるぞ」
レイは冒険者ギルドの奥に目を向ける。
数人の男女が座っていた。
「やるならあいつらに断りくらい入れておけ」
「面倒だな」
「賞金稼ぎの天敵は賞金稼ぎだ。分け前が減るからな。横取りになんてなったら殺し合いだ」
レイは言うだけ言うと、再度煙草を咥える。面倒ごとはごめんらしい。
「仲間が欲しいと思っていたし、仕方ないか」
正直、雰囲気からして仲間にしたくない奴らだ。傲慢な空気がプンプンする。
しかし、贅沢は言っていられない。
男女の前に立って声をかける。
「話がある」
「あ? こんな夜に何の用だ?」
男女は装備を整えている最中だった。
「盗賊団討伐のクエストに参加させて欲しい」
「兄ちゃん? 寝言は寝てから言えって言葉を知らねえのか?」
ヘラヘラと仲間たちで笑いあう。
「金が必要だ。頼む」
「金が必要か? 俺らも今月のつけを払うのに必要だ」
剣を抜く。荒っぽい奴だ。
「なぜ剣を抜く?」
「同業者は殺すのが筋。横取りされちゃたまんねえからな」
男女は武器を構えると、俺を取り囲む。袋叩きにするつもりか。
「まあ! お前は新顔だから殺しはしねえ」
「腕を二三本ぶった切るだけで許してあげる」
剣が四方から同時に振り下ろされる。
「遅いな」
紙一重で避けると、全員の腹に拳をねじ込む。
「ガ!」
それで奴らは動けなくなった。
「弱いな」
悶える馬鹿どもを見て、あることを思いつく。
「だが利用価値はある」
倒れる男の頭を掴む。
「レベルドレイン」
グッと手に力を込めると、力がグングンと体に満ちていく。
レベルドレイン。その名の通り、相手のレベルを吸い取る魔法だ。
この魔法は魔王ガイの固有スキルだ。
原理は相手の生命力と魔力を吸い取る黒魔術の応用だ。
触れなければ吸い取れないという弱点はあるが、発動してしまえば強力だ。
何せ、吸い取られた相手はレベル1の最弱になる。
このスキルのおかげで、魔王ガイは最強の存在となった。
「成功だ」
ちゃんとスキルが使えて安心する。
「お、お前……何をした?」
レベルを吸い取られた男は、荒い息で声を震わせる。
最弱になったから、立ち上がることもできない。
「お前たちの力を貰っただけだ」
残りの奴らもレベルを吸い取った。
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レベルを吸い取ったことでかなり力を取り戻した。
全盛期には程遠いが、雑魚盗賊団を討伐するくらい簡単だ。
「あいつらとは話を付けた。このクエストは俺が受ける」
再度受付のレイに話しかける。
「……お前、何者だ?」
レイは奥に転がる馬鹿どもを見る。
「あいつらは素行こそ悪いが、実力は本物だ。それをやすやすと返り討ちにするなんて……」
信じられない様子だった。
「俺があいつらよりも強かった。それだけだ」
無駄話はさっさと切り上げたい。
「分かった。詳しくは聞かない」
レイはサラサラと書類にペンを走らせる。
「名前だけ聞いて良いか? 偽名でもいい」
名前か。考えたことも無かった。
「ダークキングってのはどうだ?」
適当にカッコ良さそうな言葉を言う。
「ダークキング! 面白い名前だ。馬鹿らしくて誰でも偽名って分かるぜ」
うるせえな! 偽名なんだから良いだろ!
「これがクエストの詳細だ。敵の戦力や戦術が載っているからしっかり確認しろ」
紙束を受け取り、パラパラと内容を確認する。
「盗賊ギルドの離反者か」
犯罪者も集まれば独自のコミュニティーを形成する。
盗賊ギルドはその中でもヤバい集団だ。
「生かして連れて帰れば、盗賊ギルドの足が掴めるかもしれない」
「だから大金がかかっている訳か」
トントンと紙束を整理すると、鞄に納める。
「一人で行く気か?」
踵を返すと、レイに呼び止められる。
「賞金稼ぎの敵は賞金稼ぎ。信頼できる仲間が見つかるまで、一人でやるさ」
それに、一人で戦えるだけの力は取り戻した。




