盗賊退治
D級ダンジョンの前に立つと、すぐさま盗賊たちの足跡を見つける。
近くには食べ残しやポーション瓶などのゴミが散乱していた。
ここで生活している証拠だ。
「痕跡を残す。意外と大したことの無い連中だ」
手練れならゴミを埋める。それをしないのは三下の証拠だ。
「腕試しには丁度いい」
深呼吸して集中する。埃っぽさで喉がイガイガする。
「アラクネ召喚」
魔王の権能で蜘蛛の魔物、アラクネを召喚する。
「……だれ?」
力が戻っていないため、子供のアラクネが出てきた。
「お前の主人だ」
抱きかかえて、頭を撫でる。
「ふにゅ……」
気持ちよさそうに目を細める。
「天井を這って俺についてこい」
「いいよ」
素直な子だ。
「動く奴が居たら糸を吐いて動きを封じろ」
「たべていい?」
ここら辺は魔物だな。
「あとでご飯を上げるから、食べるな」
「わかった」
アラクネは素直に頷く。
「お前はクーちゃんと名付ける。これからよろしく頼むぞ」
「くーちゃん?」
「蜘蛛のくから取った。分かりやすいだろ」
「わかんない」
分かんないのかよ!
「行くぞ」
それはそれとして、心強い味方が出来た。
アラクネは獲物を捕らえる天才だ。捕縛なら右に出る者は居ない。
「わかった」
クーちゃんはニコッと笑って、天井に張り付いた。
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殺風景な洞窟のダンジョンを進む。
するとすぐに盗賊の気配がした。
「仲間と酒盛りしてるのか」
ちょっとした広間のようなところで盗賊たちが呑気に酒を飲んでいた。
さすがに多人数を相手するのは分が悪い。
「たべる?」
天井でクーちゃんが首を傾げる。
「待ってろ。すぐに分断させる」
さらに魔王の権能を使って羽虫の魔虫を呼び出す。これは肉食のハエのようなもので、殺傷能力こそ低いが非常に不愉快な存在となる。
「クーちゃんはここら辺に蜘蛛の巣を張れ」
「うん」
そしてクーちゃんは逃げ道に大きな蜘蛛の巣を張り巡らせる。
アラクネの糸は強靭で、猛牛すらも絡めとる。
子供とはいえ、三下の盗賊では切ることすらできない。
「行け」
ブーンと羽虫の魔虫を盗賊たちに飛ばす。
「なんだ?」
「なんで虫が?」
盗賊たちはペッペッと羽虫を追い払う。
「痛!」
「噛みつきやがったぞ!」
しかし噛みつかれると一気にパニックになる。
「まだまだ羽虫は居るぞ」
ブーンと数百の羽虫を絶え間なく送り込む。
「なんだこりゃ!」
「逃げろ!」
盗賊たちは破れかぶれに剣を振りながら、こっちへ来た。
「く、蜘蛛の巣だ!」
「なんでこんなデカいのが!」
飛んで火にいる夏の虫。一人残らず蜘蛛の巣に引っかかった。
「初めまして」
初対面なのでとりあえず挨拶する。
「あんだてめえは!」
「さっさと助けろ!」
盗賊たちは喧しく騒ぎ立てる。
「それは無理だな」
身動きできない盗賊たちの喉元を掴み、レベルドレインでレベルを吸い取る。
「こ、これは……」
盗賊たちはレベルを吸われると、衰弱して気絶した。
「いっちょ上がり」
楽勝だ。




