【7−3】王子を見習え
ラスカは最近とあることで悩んでいた。
もしかしたら自分はアトレに嫌われているのではないかと思い始めたのだ。
というのも、近頃のアトレはリュカばかりと話している。同性というのもあるが、三人で行動していると偶に置いていかれることがあるのだ。
嫉妬ではなく普通に不安だった。
それにアトレの誕生日の日にプレゼントを渡し忘れていたのだ。
各々プレゼントを渡していて、アミュは描いた絵を、リュカは口紅とエキュートの限定グッズ、バルは食事に連れて行ったらしいが、ラスカは何もあげていない。
その時は後でもいいと言われたが、この件もあって余計にそう思うようになっていた。
そして、今ラスカは滞在先の村でバルに面と向かって相談していた。
「と言うことなんだ。やっぱ、俺何か悪いことでもしたのかな?」
ため息混じりに息つくとバルの顔を見た。
アトレとの付き合いが長い彼なら何か分かるかもしれない。
バルは「ふむ」としばらく悩み、やがて口を開いた。
「そうですね。お嬢様はリュカ様の方が話しやすいから、だけだと思います。やっぱり同性の方が気楽なのでしょう」
そうだよな、と思いつつ頭を抱えた。
自分の意識しすぎかもしれないが、なんとなく気まずい空気は作りたくない。
天を仰いで考えていると、バルがいい案を提示してくれた。
「ラスカ様。今度、お嬢様とデートしてきてはいかがでしょうか」
「デートか……デート?!」
突拍子もない答えに椅子から滑り落ちた。
「ええ、デートです。こう言ったものは本人に聞くのが最適ですよ」
「そう言われても、本人に直接聞くのはちょっと怖い」
椅子に這いずり上がりながら言った。
本人にこういった事を打ち明けるのが一番怖いのだ。
嫌われたらどうしようと思うほど、声が震えて言えなくなってしまうのだ。
拳を握りしめ、俯いているとバルは自信満々に言ってくれた。
「なら明日行ってきてください。わたくしがリュカ様とアミュ様を引き止めますので」
急な明日宣言で、エマニュエリの人間は速戦即決が好きなんだなと思った。
だけどそこまで言ってくれるならと、勇気が出て明日デートに誘おうと決めた。
「ありがとうバルさん。俺、明日行ってみるよ」
「お礼は要りませんぞ。ラスカ様ならきっと大丈夫です」
バルは微笑んで送ってくれた。
* * *
アトレが宿の部屋で一人で本を読んでいると、誰かがドアをノックした。
「アトレーいるかー?」
ラスカだ。
本に栞を挟み、椅子に置いてからドアを開けた。
そこには何やら真剣な顔をしたラスカが立って待っていた。
「どうしたの?」
アトレが首を傾げて尋ねると、何か大事な話がありそうな顔でラスカは言った。
「アトレ。明日、俺とデートしようぜ」
「へ?」
これまでにない気の抜けた惑いの声がアトレの口から発せられた。




