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魔法が使えない魔女は旅に出る  作者: 宮坂 たきな
第七章 恋愛戦争編
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【7−2】重症患者にはショック治療を

ルイは今年で二十歳です。

六歳のアトレからしたら十歳のルイは怖かったでしょう。


セレオが政治家なのは無理矢理させられたからでした。(議長職)

「アトレ。僕の婚約者になってくれ」

「絶対無理」

 アトレは速攻で心からのささやかな拒絶を捧げた。


 王子からの求婚。普通の女子なら卒倒するくらい喜んでしまうだろう。

 なんせルイは顔が究極的によく、女性へのエスコートができ、将来有望。その上第一王子とか言う最高の肩書きを持っている。

 つまり、彼は次の皇帝になる可能性が極めて高いのだ。

 その妃になるなら世の中の女子はこぞって自分の魅力をアピールするだろう。

 だけどアトレは違った。

 まず顔がタイプじゃない、気持ち悪い、うざい、政治に関わりたくない、気持ち悪い、そもそも妃に興味がない、というアトレにとって最悪な要素しか持ち合わせていなかった。


 ことの発端はアトレが六歳の時。

 たまたま父が宮廷のあるモンカルムのパーティーに招待され、それについて行ったことが原因だった。

 旧公爵家とはいえ、革命時には中立の立場をとっていたし、世間からの評判が良かったため現在の上流階級からはある程度の知名度があった。

 それでモンカルムに出向いた時、たまたま居合わせたルイに一目惚れをされてしまったのだ。

 それからというもの彼との付き合いで良いことがない。

 面倒くさい政治が嫌いな父からは適当にあしらってこいと言われ、どこかの式典に付いていくと大抵ルイがいて求婚される。

 その上エマニュエリ家は名が通っているし、特徴的な髪色と瞳のせいですぐに家バレしてしまった。

 そのせいで彼がフランクール法学校の生徒になり、よく家凸されたので本当にいい思い出がないのだ。


「よく聞こえなかったな。もう一度聞かせてくれ」

「死んでも無理」

 もう一度、キンキンに冷えた返事を返した。

 アトレ自身あんまり気にしたことはないが、相手は一応皇族だ。やすやすと悪口を言っていい相手ではない。

 そのことに気付いたラスカはアトレに耳打ちした。

「おいおい、流石に言い過ぎなんじゃないか?」

「大丈夫よ。ちょっと見てて」

 アトレは棘だらけの言葉をルイに放つ。


「さっきから何? 気持ち悪いんだけど」


 一瞬、ラスカにも言われたような言い方に思わず鳥肌がたった。アミュもアトレの後ろに隠れながらビクッとした。

 これには流石の王子様もお怒りだろうと顔を上げ、ルイの顔を見ると、なんだか嬉しそうな顔をしていた。

「見なさい。あれがこの国の王子の姿よ」

 ゴミを見るような目で見ると、ルイは余計に嬉しそうな顔をした。

 これではまるで……

「変態王子様……」

 アミュでも気持ち悪く思うほどだった。

 ルイは誰でも惚れるようなイケメン顔でアミュに話した。

「そうそう僕はこの国の変態王子……って違ーう! 誰が変態だクソガキー!」

「うぐぅ……」

 またしても暴れ出した王子はすぐに従者に取り押さえられた。

 一体誰が護衛対象なんだろうか……

 そして彼の怒りの矛先はラスカに向いた。

「てゆーかその男は誰だ! さっきから僕のアトレちゃんにまとわりついて!」

「はぁ……」

 アトレは呆れて肩を落とし、大きなため息をついた。

 王子の後ろから通行人の視線が気になる。一応、ここは路地裏なので、大量の黒服の従者と怒号をあげる若い男性の声が聞こえたら喧嘩だと思うだろう。

 だが、実際はただの求婚だった。

「アトレなんとかしてよぉ……俺の首が飛んじまう前にさぁ……」

 ついにラスカの気力がなくなってしまった。

 これではラスカとアミュが可哀想なので、さっさと蹴りをつけることにした。


「ルイ、聞いて。彼はラスカ。私の彼氏よ」


 ラスカとルイの目が点になった。

 ラスカはあたふたと、ルイは燃え尽きて灰になった。

 いよいよ事がややこしくなって不安になったのか、ラスカは小声でアトレに訊いた。

「ちょっと、なんで俺がお前の彼氏になんないといけないんだよ!」

「今は黙ってて。これが一番効果的なのよ」

 アトレがルイを指差した。

 ルイは従者の肩から滑り落ちて完全に萎れていた。

 しかも、「僕のアトレちゃんに彼氏……」なんてことをずっとボソボソ呟いている。

 刺激が強すぎる治療にラスカはドン引いた。

 これがこの国の次の皇帝である。

 そんなことをしていると、従者の一人が腕時計を覗き「そろそろ出発の時間ですね」と呟いた。

「殿下、出発のお時間です」

「うう……分かったよぉ。じゃあねアトレちゃん……グスン」

 さっきまで威勢の良い王子はどこに行ったのやら。

 情けなく従者に引きずられ、力無く立ち去った。

「別に悪い人じゃないんだけど、気持ち悪いんだよねアイツ」

 彼の名誉のために一応悪い人じゃないと言ったが、最後が余計だ。

 それほどアトレにとって面倒くさいのだ。

 邪魔がいなくなったし、ということでアトレは機嫌を直しアミュの手を引いて路地裏から抜け出した。

「アミュちゃん、今日はいっぱい食べるわよ!」

「アミュ、パフェ食べたい!」

 安心して肩を撫で下ろしたラスカは後ろから二人を追った。

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