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魔法が使えない魔女は旅に出る  作者: 宮坂 たきな
第五章 金星と月の青い君編
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【5−6】趣味で作った魔法を弟子にぶつける滅茶苦茶な師匠

 勝負が始まったというのに、ルミネはずっとニコニコしている。

 ラスカには師匠の意図がよく分からない。ものすごく不気味だ。

 それに加え、ルミネは攻撃する素振りを全く見せない。

(師匠が何もしないなら今しかない!)

 ラスカはルミネの頭上に数え切れないほどの水の針を作り出した。。

「貫け! 水針!」

 腕を振り下ろすと同時に、水の針が降り注いだ。

 雨のような攻撃だ。

 ラスカは間髪入れずに魔法を詠唱し、炎の矢をルミネに向かって放った。

 水の針と炎の矢が触れて蒸発し、あたりに霧が立ち込めた。

(流石の師匠でもこの量と威力じゃ、かすり傷くらいできるだろ)

 ラスカが愉悦に浸っていたその時、霧の中から一本の水の針が飛んできた。

 間一髪のところで避けたが、それは頬をかすめ、切り裂かれたかのような痛みが伝わる。

 あまりの速さで、防御結界を立ち上げるのが間に合わなかった。


 ルミネの周りの霧が消えると、彼女は無傷でニコニコしていた。服も一切濡れていない。

「前よりも威力が上がっているわね〜。練習を続けているようで良かったわ」

 言い終わると、ルミネの顔が別人のように引き締まった。それから、長い詠唱を始めた。

(師匠は一撃で終わらせるつもりなんだ。ならばこの隙で決めるしかない)

 ラスカはしゃがんで地面に手をつく。

 そして、物質操作魔法を詠唱した。

「震えろ!」

 地面がゆらゆら動き出し、轟音を立てながらルミネに向かって岩が突き出す。

 圧倒的質量、圧倒的速度でルミネを全方向から貫く。

 ラスカの全魔力を使用した渾身の攻撃だった。

 だけど、ルミネに触れた岩はホロホロと脆い壁のように崩れ落ちた。

 正確には、届いてすらいなかった。

 詠唱を止めずに、ルミネは裏でピンポイントに防御結界を発動した。

 ただの防御結界では岩に負けてしまう。でも、ルミネはそれを承知の上でピンポイントに密度の高い結界を張っていた。

 それも「岩を崩す魔法」付きの、複合魔法であった。

「頑張ったね。そろそろお開きにしましょう」

 杖を前に出し、力強い声で言い放つ。


「ルミナス」


 眩い閃光とともに、真っ白な塊がラスカに向かって放たれた。

 魔法を少し齧った程度の人でもわかる。あの白い線は魔力そのものを圧縮したものと。

 それはアトレでも結界越しに理解できた。

 その魔力の塊「ルミナス」は一瞬のうちにラスカに届くと、目の前で離散した。

 頭で理解する前に撃たれてしまった魔法に、ラスカは呆然とした。

(音がしなかった……音がしないわけじゃない。音より速かったんだ)

 圧倒的な力量の差に、ラスカは自分の未熟さを思い知らされた。


* * *


(何? 今の魔法。初めて見たわ……)

 外で見ていたアトレも、今起きた状況を理解できなかった。

 一瞬の閃光が辺りを包み、瞬きする間もなく離散した。

 ただ、魔力の塊が見えていた。それだけしか、認識することができなかった。

「じいやはあの魔法知ってる?」

 横を覗いたが、バルも目を丸くして驚いていた。

「いえ初めて見ました。詠唱の長さからして民間魔法? ……ですがあんなもの、見たことがありません」

 バルはハンカチで額を拭った。

 ルミナスとは一体なんなのだろうか。アトレとバルが疑問を浮かべていると、ルミネがラスカを引きずって戻ってきた。

 たったまま伸びてしまったらしい。

 ルミネがラスカをベンチに座らせると、うーんと疲れたかのように背伸びをした。

「っん〜疲れたぁ〜」

「……お姉ちゃん、さっきの魔法って?」

「さっきの魔法って『ルミナス』のこと? あれね、わたしが作ったのよ〜!」

 ルミネは立ったまま嬉しそうに言った。

「ルミネお嬢様が作られたのですか」

「そうそう。趣味で攻撃魔法を作りたくなっちゃって。まだ未完成だから、出力の調整とか制御とか詠唱が長すぎるとかでまだまだなのよ〜」


 「ルミナス」を作るちょっと前、ルミネは閃いた。

「魔力をそのまま放出させればもっと強くなるかも!」

 魔力を水や炎などの物質に変化させる魔法は、誰でも簡単にできるくらい単純だった。むしろ、その方法しかなかった。

 だけど、ルミネはその逆転の発想をした。

 強力な魔法に変化できる魔力を、そのまま体外に圧縮して放つ方がエネルギーのロスもなくて強いのではないかと。

 それで大学の勉強の片手間に作られたのが「ルミナス」であった。

 まだまだ未完成な魔法だが、ルミネの予想通り魔力を圧縮して放つだけの魔法は、地面を抉り飛ばせるくらいの威力を持っていた。


「ところでお姉ちゃん、『ルミナス』の名前はどこから取ってきたの? ……まさか、自分からとか言わないわよね」

 アトレは心配そうに言った。

 だけどルミネは、その話題に振って欲しかったのか、さらに顔がぱあっと明るくなった。

「そうなの! 『ルミネ』から取ったのよ! 自分の名前がついた魔法が欲しかったのよ!」

 アトレが今一番聞きたくなかった言葉が返ってきた。

 まさか自分の姉が、まさか自分の名前がついた魔法を、まさか自分で作るなんて。

 アトレは頬を紅潮させ、手で顔を隠して言う。

「恥ずかしいから外では使わないで……」

 ルミネはアトレの顔を覗いた。


 有名な人名由来の魔法に年代測定魔法があります。

 フラシェーリアは昔、フラシェルという学者がいて彼が作ったことからその名がつきました。

 ちなみに、「ルミナス」がラスカの目の前で離散したのは想定外で、顔の横をかすめる予定だったそうです。

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