【5−3】ラジオネーム:ユリイカさんからのお便りです
ルミネが作った夕食を食べたアトレは、届いた手紙を確認していた。
大量の郵便物が詰まったドアポストから引っ張り出し、テーブルに並べて読んでいる。
だいたいの送り主はラビナだったが、封筒の中にはたまに恋文が入っていた。どうやら学校では、アトレファンクラブなるものが存在しているらしい。
アトレが手紙を整理していると、今度はどこかで見た名前が出てきた。
「ユリイカ・セントレイ……」
「俺の姉だ……」
「わたくしの友人の娘ですね……」
「ユリイカさんからお手紙来てたのね〜」
手紙を見ていたアトレとバルとラスカの視線が、ルミネに集まった。
「師匠! 俺の姉になにしたんですか!」
急に出てきた実の姉の名前に、ラスカは二つの意味で驚いた。
もちろん、急に出てきたこともあるが、それよりもこの滅茶苦茶な師匠が姉に何かやらかしてないかで、頭が埋め尽くされた。
だから、ラスカは自分の師匠なのにも関わらず、ルミネの肩を揺らした。頭がぐらぐら暴れている。
「落ち着いて〜」
ルミネは相変わらずニコニコしている。
ラスカが落ち着いて肩から手をどかすと、ルミネは口を開いた。
「ユリイカさんとはね〜お手紙友達なの。こっちにくる時、プラトーさんの工房に寄って出会ったの〜。そしたらまさかの同い年で意気投合! それからこうして、お手紙を送り合っているのよ」
ルミネがベルソンに引っ越す時、歩いたり、馬車に乗ったりして楽しみながら来ていた。
だけどエーベルを離れる時、どうしてもジャンプして越境したかった。
そこで、バルの友人であるプラトーの家に泊まった時にユリイカと会って、それからこのように手紙を送り合う仲に発展した。
ルミネは自由人という言葉がよく似合う女性である。
「じいやのお友達さんというのは知ってたけど、ラスくんのお姉さんなのは初めて知ったわ〜。世間って狭いのね」
世間が狭いのはアトレも言いたくなるほど思っていた。
それに、ルミネはこんなことを言っているが、ユリイカからの手紙が届いたのは三ヶ月も前だ。「遅い!」って言っているユリイカの顔が目に浮かぶ。
その後、四人で夜遅くまで談笑し、アトレたちは就寝した。
三人が突然やってきたので、まだ部屋の準備が済んでいないということなので、アトレはルミネの部屋で一緒に寝た。街のアパートなのに随分広いからバルとラスカの部屋があったのだろう。
ルミネが明かりを消すと、横にいるアトレに小声で話しかけた。
「ねえアト。明日、お姉ちゃんは学校があるから一緒に遊んであげられないの。ごめんね」
「ううん。私こそ、なにも知らせずに来ちゃったから。迷惑だった?」
「アトがいるから迷惑なんかじゃないよ。ふふっ、おやすみなさい」
アトレはおやすみと返すと、目を閉じてすぐに夢の世界に入った。
* * *
アトレが完全に寝静まったのを確認したルミネは、体を起こして静かにリビングに向かった。
こちらはまだ電気がついている。
バルが立ってルミネのことを待っていた。
「アトレお嬢様は?」
「すっかり寝ちゃったわ。さて、ホットミルクを作るからそこに座ってて」
座るよう促されたバルは、物音を立てないように木の椅子に座った。
ホットミルクを作ったルミネは、自分の席とバルの前に置く。
そして、ルミネも物音を立てないよう、静かに腰を下ろす。
「ねえじいや。アトちゃんにあのこと、まだ言っていないのよね」
ルミネは小さな声で話し出す。
声色に、昼間のおっとりさはなく、アトレのような貴族そのものだった。
「もちろんです。ルミネお嬢様こそ、まだ言うつもりはないのですよね」
ホットミルクをすすり、口を開く。
「アトが知るにはまだ早いわ。わたしが、<———>であることを」




