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第81話 ツッコみきれない人形劇

【エサリカ村・ジパング大使館】

応接室の外。

襖に魔道具を当て、こっそり盗み聞きしているステラ、カイ、リラの三人。

グラバーが語る『20年前の元老院の出来事』を耳にして、固まっていた。


全員、呆れ果てたような表情を浮かべている。


ステラ「……なんなのよ、その話」


ステラは半目のまま、深いため息をつく。


カイ「いや……ほんとっすよ……」


カイは受話器のような魔道具を耳に当てたまま、軽く眉をひそめる。


カイ「もっとこう……外交会談って、ピリピリした駆け引きとかあるもんじゃないんすかね」


リラ「ま、まあ……結果的には、場の空気は和んだみたいだし……?」


苦笑いしながら、控えめにフォローを入れるリラ。


ステラ「和み方がおかしいのよ」


間髪入れず、ステラが即答する。


ステラ「なんで元老院が爆笑の渦に包まれてるのよ……。以前にナオちゃんたちの付き添いで行ったけど、とてもそんな雰囲気の場所じゃなかったわよあそこ」


カイ「20年前からナオさんのあの帽子、何一つ変わってないってことっすね……」


リラ「……スーツ姿の明太子、ですもんね……」


三人は目を合わせて再び沈黙する。

ステラはこめかみを押さえながら、小さく首を振る。


ステラ「……いや、ちょっと待って?それよりなにより」


カイ「はい…」


リラ「ええ……」


三人は、ゆっくりと顔を見合わせ同時に口を開く。



三人「‟衝撃の明太子‟ってなに!?」



カイ「やっぱそこっすよね」


ステラ「なんでロバとニワトリのやりとりから、急に明太子が出てくるのよ!」


カイ「しかも話聞く限り、めちゃくちゃダンディな親父っぽいですしね」


リラ「最初は、帽子の上で可愛らしい人形劇が始まるのかなって思ってたんですけど……。一気にイメージ崩れましたね……」


ステラ「っていうかさ、その時出てきたのって全部人形なのよね?てことは」


二人に向かって、少し身を乗り出す。


ステラ「当時のセンポさん、自分の意思でそのやりとりを演じてたってこと!?」


その言葉にカイとリラは思わず顔を合わせる。


カイ「……ナオさんみたいに帽子が勝手に開いて変なのが出てくるわけじゃなくて、ってことっすよね」


リラ「た、たしかに……」


一瞬、三人の間に妙な静寂が落ちる。


リラ「……な、なんかすごい胆力ですね……ナオさんのお師匠さん……」


ステラ「胆力っていうか……」


わずかに間を置いて、ため息。


ステラ「無謀よ、それは……。普通なら処罰されるわよ、そんなの」


カイ「元老院のど真ん中で、しかも会談中にまとまりのない人形たちの劇っすからね……」


と、その時。

応接室の中から、突き抜けるような笑い声が響いた。


ナオ「ハハハハハハ!!センポさんらしいですね、その話!」


外の三人は、思わずビクッと肩を揺らす。


グラバー「フハハハ!だろう?なんのまとまりもないのに、妙に魅入ってしまう!あいつの寸劇には、そういう妙な魔力があったのさ」


ナオ「いやぁ……想像できてまいますわ……」


まだ笑いを引きずりながら、軽く息を整える。


ナオ「ところでなんですけどね」


帽子のツバをつまみ、笑いを堪えながら問いかける。



ナオ「その“衝撃の明太子”って、なんですの?」



外の三人もその問いかけに、同時に前のめりになる。



グラバー「私にもいまだにわからん!!」



灰皿に葉巻の灰を落としながら、グラバーは肩を揺らす。


グラバー「センポの奴もあの後、『なんだったんでしょうね、アレ』と言っていたぐらいだからな」


ナオ「ハハハハハ!!」


グラバー「フハハハハハ!!」


二人は再び爆笑する。

襖の外では、三人は思わずズッコケそうになる。


ステラ「(いやグラバーさんも分かってないんかい!!)」


カイ「(せめて当時の杉原さんは、分かってやってたもんだと思うじゃないっすか!?)」


リラ「(えぇぇ……!?)」


三人はそれぞれ小声でツッコむ。


ナオ「なんというか……さすがはセンポさん、という感じですわ」


少し懐かしむように笑いながら続ける。


ナオ「自分なんてこの前、ハヌス卿との会談で『河童の仕出し屋』が出てきた時、内心めちゃくちゃ焦りましたし」


ノノは思わず大きく頷く。


ノノ「は、はい……!あの時は本当に……!」


グラバー「ああ、ハヌスくんからその話は聞いたよ」


笑いながら、葉巻をくゆらせる。


グラバー「彼は『帽子の混沌がアップデートされている』と笑っていたな」


ナオ「ええように言わんでくださいよ……ただのバグが、よりひどくなってるだけですわ」


グラバー「ハハハ!あの後、秘書のギュースケン君は二日ほど寝込んだらしいがな!」


ナオ「まあ、それが普通の反応やと思いますわ」


再び、応接室の中に笑いが広がる。

ひとしきり笑いが落ち着いたあと、わずかに間が空く。


その空気の中で。

ノノが、おずおずと口を開いた。


ノノ「……あ、あの……」


ナオとグラバーが、視線を向ける。

ノノはびくっと肩を震わせるが、なんとか続ける。


ノノ「その……えっと……その後って……どうなったんですか……?」


グラバーは、にやりと笑った。


グラバー「……ああ、あのロバとニワトリと明太子のやりとりか」


ノノ「は、はい……」


グラバーは思い出すように天井を仰ぎ、ゆっくりと煙を吐き出す。


グラバー「今度は、猫までそのやりとりに加わったよ!」

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