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Chron0//≠BreakerS  作者: 時任 理人
第五章 DUAL LUMEN-双灯祭DAY2-編

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211/216

EP216. 天城DAY2――天使は二度、祭りを開く

 DAY2の朝、天城の中庭に出た瞬間、僕は少しだけ目を細めた。


 世界は、嘘みたいに明るかった。


 さっきまで僕たちは、十五時の危険を潰すために生徒会室で言葉を積み上げていた。御影シオンの変更案。ログアウトの即時退避。未選択は未選択。観測者代表案の削除。アスミを最終選択者にしないという再定義。


 それらは、必要な手順だった。


 けれど手順だけでは、祭りは始まらない。


 祭りを始めるには、誰かが前に立って、みんなに「楽しんでいい」と言わなければならない。


 その役目を引き受けたのが、二階堂サツキだった。


 DAY1で、彼女は天使のように双灯祭を開いた。


 そしてDAY2の朝。


 彼女はもう一度、天使になる。


 ただし今度は、祭りを始めるためだけではない。


 最後まで、誰も帰れない物語にしないために。


 中庭へ出た瞬間、世界は嘘みたいに明るかった。


 さっきまで僕たちは、生徒会室で十五時の話をしていた。


 ログアウト。未選択。観測者代表。非常停止。御影シオン。藤堂コウ。矢那瀬アスミ。


 そういう言葉は、どれも光を吸う。


 だから扉を開けた先に広がっていた双灯祭DAY2の朝は、少しだけ現実離れして見えた。


 中庭のステージには、天城総合学園の旗と、影村学園の旗と、紅華女学院のリボンが並んでいた。DAY1よりも装飾は増えている。けれど、うるさくはない。紅華のバルーンは高すぎず、低すぎず、出口と空を塞がない位置で揺れている。ピンクはある。かなりある。だが、去年のような支配ではない。空を奪う色ではなく、空を祝う色だった。


 焼き菓子の匂い。


 紅茶の湯気。


 ステージ袖で誰かがコードを巻く音。


 中庭を埋める生徒たちの声。


 朝の光が校舎の窓に反射して、足元に細かい白い斑点を落としている。


 双灯祭DAY2。


 本当に始まる。


「……眩しい」


 アスミが低く呟いた。


 彼女はもう毛布を持っていない。代わりに腕を組み、眉間に皺を寄せている。ムスッとしている、と言えばそれまでだった。


 でも、僕には分かった。


 怒っているのではない。


 切り替えようとしている。


 ヒカルの家。黒い本。リツコ。リリ。シオンの言葉。最終選択者という削除済みの文字列。それらを全部いったん胸の奥へ押し込めて、今だけは双灯祭の朝へ自分を接続し直している。


 チイロが隣で小さく笑った。


「量子ネコさん、朝日との相性悪そう」


「悪くない」


「じゃあ何その顔」


「光量が多い」


「猫じゃん」


「猫じゃない」


「でも箱は好きでしょ」


「好きじゃない!」


 トウタが端末を出しかける。


「【速報】量子ネコ、DAY2朝日と和解失敗――」


「立てるな」


 僕とアスミの声が重なった。


 トウタは端末をしまう。


「了解。DAY2開始前からBANされたくないし」


 ミサキはアスミの顔色を見て、少しだけ頷いた。


「心拍は高め。でも今は許容範囲。怒りより緊張。悪くないよ」


「診断しないで」


「医療的に褒めた」


「それも嫌」


 レイカはステージを見上げて、胸に手を当てていた。


「いい朝ね。舞台としては少し明るすぎる。でも今日みたいな日は、それでいい。暗い幕は、まだ下ろさなくていいもの」


 ミナトは無言で中庭全体を見ていた。視線はステージではなく、人の流れ、左右の導線、影村側の配置、紅華バルーンの高度、音響スピーカーの角度へ順番に走っている。


「視界ラインは確保されている。紅華側は本当に人流を塞いでいない」


「リリアンちゃん、感情は暴風だけど仕事はするからね」


 チイロが言う。


「紅華文法、侮れない」


 ハザマはサツキの後ろで進行表を確認していた。表情はいつもの無機質な制御系だが、端末操作は明らかに速い。たぶん、サツキが壇上で予定外の言葉を増やした時に備えて、全ルートの時間補正を想定している。


 そして、サツキはステージ袖にいた。


 王冠を直し、マイクを受け取り、深呼吸している。


 昨日のサツキは、祭りを始めるために輝いていた。


 今日のサツキは、祭りを終わらせるために輝いていた。


 その違いが、僕には分かった。


『それでは、双灯祭DAY2、開幕セレモニーを開始いたします』


 放送委員の声が中庭に響く。


 拍手が起きた。


 その拍手に、僕は一瞬だけ身構えた。


 拍手SEではない。


 録音でもない。


 本物の手の音だ。


 それでも、僕たちは拍手という音に対して、もう完全に無防備ではいられない。


 アスミの指が、ほんの少しだけ握られる。


 僕は何も言わなかった。


 ステージ中央へ、二階堂サツキが歩いていく。


 昨日より王冠の角度が綺麗だった。


 昨日より歩幅が安定していた。


 昨日より、笑顔が明るかった。


 なのに、昨日よりずっと重いものを背負っている。


 サツキはマイクの前に立ち、軽く一礼した。


 その一礼だけで、中庭のざわめきが一段落ちる。


 DAY1の時もそうだった。


 彼女が大舞台に立つと、空気が変わる。


 紅茶をこぼす生徒会長ではなくなる。


 議題を増やす破天荒な会長でもなくなる。


 王冠カチューシャをつけた、騒がしい少女でもなくなる。


 その瞬間だけ、彼女は本当に、天城に降りた天使みたいになる。


 ハザマが以前言っていた。


 天城には天使がいる、と。


 今なら、その意味が分かる。


「皆さま」


 サツキは、最初だけ静かに言った。


「天城総合学園生徒会長、二階堂サツキですわ」


 声は澄んでいた。


 高いのに、浮ついていない。


 明るいのに、軽くない。


 中庭にいる全員の耳へ、まっすぐ届いていく。


「双灯祭DAY2へようこそ。まずは昨日、DAY1を共に作ってくださった皆さまへ、心からお礼を申し上げますわ」


 サツキは両手を胸の前で重ねた。


「COEで紅茶とミームと黒メイドの秩序に巻き込まれた方。盤上干渉戦で一手ごとに息を止めた方。シュレディンガーの仮面で、物語の揺らぎを見届けた方。影村との同期企画に参加された方。紅華の空を見上げた方。そして、ただ友達と笑って、ただお菓子を食べて、ただ校内を歩いてくださった方」


 少しだけ笑いが起きる。


 サツキも笑った。


「その全部が、昨日の双灯祭を作ってくださいましたの」


 拍手が起きる。


 今度は柔らかい拍手だった。


 誰かを急かす音ではない。


 昨日という一日を、みんなで受け取る音だった。


「昨日は、完璧な一日ではありませんでしたわ」


 サツキは、そこで声を少しだけ落とした。


「混雑もありました。驚きもありました。反省点も、改善点も、今日へ持ち越すべき課題もございました。けれど、それでも昨日の終わりに、多くの方が笑って帰ってくださいました」


 中庭の空気が、少しだけ静かになる。


 サツキは、その静けさを怖がらない。


「だからこそ、DAY2がありますの」


 王冠が朝日に光る。


「昨日より明るく。昨日より楽しく。昨日より安全に。昨日より油断なく。今日の双灯祭を、私たちは必ず最後まで走り切りますわ」


 その言葉に、僕は息を止めかけた。


 DAY1の宣言が「最後まで、ちゃんと生きて笑うこと」だったなら、DAY2のこれは、その続きだった。


 ただ始めるのではない。


 昨日を受け取り、今日を終わらせる。


 二日間の物語を、ちゃんと閉じる。


 サツキは、ステージの上でそれをやろうとしている。


「双灯祭は、二つの灯りのお祭りですわ」


 サツキは空を見上げた。


 紅華バルーンが風を受けて揺れる。


「天城の灯り。影村の灯り。そして今年は、紅華の空の灯りも、私たちを見守ってくださっています」


 紅華側の生徒たちから歓声が上がる。


 たぶんリリアンがどこかで泣いている。


 いや、泣きながらバルーン高度を調整しているかもしれない。


「灯りは、ときどき喧嘩をしますわ。強く照らしすぎる灯り。近づきすぎて眩しくなる灯り。違う色を持っているからこそ、混ざる時に少しだけ戸惑う灯り」


 サツキは微笑む。


「でも、灯りは暗闇を嫌うという点では同じですの」


 中庭が静かに聞いている。


 サツキは続けた。


「昨日、私たちは一つ目の灯りをともしました。今日は二つ目の灯りをともします。昨日の続きを、ただなぞるのではありません。昨日できなかったことを、今日やります。昨日見えた課題を、今日直します。昨日笑えた人は、今日もっと笑ってくださいませ。昨日少し怖かった人は、今日はすぐ近くのスタッフに声をかけてくださいませ」


 その言葉は、演説でありながら安全説明だった。


 でも安全説明に聞こえすぎない。


 祭りの言葉へ翻訳されている。


「本日の予定は盛りだくさんですわ!」


 ここでサツキの声量が一気に戻った。


 中庭の空気が跳ねる。


「COEは引き続き営業! 黒メイドの礼法と、混沌のミームが皆さまをお迎えいたします!」


 アスミが隣で小さく呻いた。


「全校に言う必要あった?」


 チイロが小声で返す。


「ある。DAY2の観測条件として重要」


「営業条件としてじゃなく?」


「両方」


「最悪」


 サツキはさらに続ける。


「盤上干渉戦は、いよいよ本戦! 天城代表、立花ミナトさん、野々村ハザマ! そして影村代表との知性の火花! 盤上に灯る二つの灯りを、どうぞ最後まで見届けてくださいませ!」


 ミナトは小さく息を吐いた。


 ハザマはステージ袖で無言のまま一礼した。


 トウタが拳を握る。


「実況、燃えてきた」


「燃やすのは盤上だけにして」


 ミサキが言う。


「人は燃やさない」


「了解。デス禁止」


「そしてお昼には、『シュレディンガーの仮面』後編!」


 サツキの声が、今度は舞台の宣伝用に艶を帯びる。


「昨日、皆さまの観測によって揺れた物語が、今日、結末へ向かいます。泣いてもよろしい。息を呑んでもよろしい。語り合ってもよろしい。ですが!」


 サツキは、ビシッと指を立てた。


「感動しすぎても、退場導線は守ってくださいませ! 感情は豊かに、導線は清らかに! これがDAY2の合言葉ですわ!」


 中庭に笑いが起きた。


 レイカが目を細める。


「いいわね。感情は豊かに、導線は清らかに。舞台人としても悪くないわ」


 チイロが呟く。


「サツキ会長、勢いで安全標語を生成する才能ある」


 そして、サツキは少しだけ声を落とした。


 中庭の空気が、わずかに変わる。


「最後に、十五時の特別企画についてですわ」


 僕たちは、ほぼ同時に呼吸を整えた。


 アスミの横顔が硬くなる。


 ミナトの視線がスピーカーへ走る。


 ミサキは生体モニターを確認する。


 チイロは笑わない。


 トウタも端末を出さない。


 レイカは舞台袖を見るような目で、サツキを見ていた。


「本日十五時、天城と影村を繋ぐDual Lumen Sync Session、そしてEXIT:CODE Core Phaseが実施されます。これは、二つの学園の灯りを重ねる、大切な企画です」


 サツキは一拍置いた。


「大切な企画だからこそ、わたくしから皆さまへ、もう一度、約束いたします」


 王冠が、朝の光を受けて輝く。


「少しでも苦しくなったら、離れてくださいませ。怖くなったら、声を出してくださいませ。退出したいと思ったら、退出してくださいませ」


 中庭が静まる。


「それは失敗ではありません」


 サツキの声が、柔らかくなる。


「逃げることは、恥ではありません。休むことは、負けではありません。誰かに助けを求めることは、弱さではありません。帰れること。休めること。もう一度笑えること。それこそが、双灯祭の成功ですわ」


 誰も茶化さなかった。


 この宣言は、サツキなりの非常停止権限だった。


 専門用語を使わない。


 危険を煽らない。


 それでも、全員に出口の存在を伝えている。


 アスミが小さく息を吐いた。


「……やるじゃない」


 チイロがにやりとする。


「量子ネコさんから高評価入りました」


「黙って」


 サツキは、まっすぐ前を見た。


「昨日より明るく。昨日より楽しく。昨日より安全に。昨日より油断なく。そして最後には、昨日より大きく笑って終わりますわ」


 彼女の声が、一段強くなる。


「わたくし二階堂サツキは、天城総合学園生徒会長として宣言します」


 風が止まったように感じた。


「今日の双灯祭DAY2を、必ず、無事に、楽しく、最後まで終わらせますわ!」


 拍手が起きた。


 大きな拍手だった。


 でも、誰かを縛る音ではなかった。


 誰かを急かす音でもなかった。


 サツキの言葉に返ってくる、生徒たちの手の音だった。


「皆さま! 本日も一日、どうか全力で楽しんでくださいませ! 勝利角、最大仰角! 双灯祭DAY2、開幕ですわぁぁぁっ!」


 歓声が上がった。


 旗が揺れた。


 バルーンが空を渡った。


 放送委員が次の案内を入れ、ステージ横で吹奏楽部が短いファンファーレを鳴らす。


 双灯祭DAY2が始まった。


 僕は、ステージの上のサツキを見ていた。


 昨日より天使みたいだと思った。


 それは、ただ明るいからではない。


 ただ可愛いからでもない。


 サツキは今、自分が理解しきれない危険を、それでも生徒会長として受け止めようとしている。


 難しい話は分からない。


 でも、誰かが帰れなくなるのは嫌だ。


 誰かが傷つくのは嫌だ。


 誰かが泣いたまま終わる祭りにはしたくない。


 その単純さが、今は何より頼もしかった。


「ユウマ」


 アスミが呼んだ。


「何?」


「ぼーっとしない。行くよ」


「分かってる」


「本当に?」


「本当に」


 彼女はまだムスッとしていた。


 でも、その目はさっきより前を向いている。


 ノード・ゼロに半分残っていた彼女が、ようやく現在へ戻ってきたように見えた。


 チイロが両手を叩く。


「はい、NOX集合。開幕セレモニー後の恒例、円陣タイム」


「恒例だったか?」


 ミナトが聞く。


「今から恒例にする」


「捏造じゃないか」


「伝統は初回が一番大事」


 トウタが乗る。


「いいじゃん。DAY2出陣式。スレタイは――」


「立てるな」


「まだ言ってない」


「言う前に止めた」


 ミサキが笑いながら一歩前へ出る。


「円陣、短くね。心拍を上げすぎない範囲で」


 レイカは優雅に手を差し出した。


「幕が上がったなら、舞台袖の祈りは必要ね」


 ハザマも、少し迷ってから手を重ねた。


「私は天城側手続き監査ですが、今は臨時参加ということで」


「ハザマも入るの?」


 トウタが言う。


「会長が紅茶をこぼした場合、即時対応する必要がありますので」


「それ円陣関係ある?」


「あります」


 サツキがステージから戻ってきた。


「わたくしも入りますわ! 当然ですわ!」


「会長、次の挨拶が」


 ハザマが言いかける。


「三十秒だけですわ!」


「二十秒でお願いします」


「では二十五秒!」


「承知しました」


 サツキの手も重なる。


 王冠が近い。


 朝の光を受けて、妙に眩しい。


 最後に、アスミがため息をついた。


「こういうの、ほんと苦手」


「知ってる」


 僕が言うと、彼女は僕を睨んだ。


「でも、やらないとは言ってない」


 そう言って、アスミは手を重ねた。


 NOXと天城生徒会の小さな円陣。


 中庭の端。


 歓声の裏側。


 祭りの朝の中で、僕たちは声を潜めて集まった。


 チイロが言う。


「今日の目標。誰も死なせない」


 ミサキが続ける。


「苦しくなった人を見逃さない」


 ミナトが言う。


「同期を監視する。盤上は勝つ」


 レイカが言う。


「物語は閉じる。現実へ戻す」


 トウタが言う。


「ミームで空気を流す。変なスレは立てない」


「本当に?」


 アスミが刺す。


「本当に。今日は安全ワード優先」


 ハザマが言う。


「手続きと導線を固定します。会長の暴走は必要範囲で許容します」


「許容って何ですの!?」


 サツキが反応する。


 チイロが笑う。


「サツキ会長は?」


 サツキは胸を張った。


「止める時は止めます! 楽しむ時は全力で楽しみます! そして、最後は全員で笑って終わりますわ!」


 最後に、アスミが少しだけ目を伏せた。


 ヒカルの家。


 黒い本。


 昭和のアスミ。


 アキラ。


 リツコ。


 リリ。


 全部がまだ、彼女の中にある。


 それでも、彼女は手を重ねたまま言った。


「私は、安全監査。危険なら止める。選ばせない状況を作る。……あと、COEは必要最低限でやる」


「最後、逃げ腰」


 チイロが言う。


「うるさい」


 僕は、自分の手の上に重なった全員の手を見た。


 軽い手もある。


 硬い手もある。


 震えている手もある。


 それぞれ違う。


 でも、今だけは同じ一点を向いている。


「行こう」


 僕は言った。


「DAY2を越える。十五時を越える。誰も帰れない物語にはしない」


 全員の手に、少しだけ力が入る。


 そして、サツキが空気を吹き飛ばすように叫んだ。


「双灯祭DAY2! 勝利角、最大仰角ですわ!」


「声が大きい!」


 アスミが叫ぶ。


 中庭の端で、僕たちは笑った。


 笑えた。


 それだけで、まだ大丈夫だと思えた。


 ステージでは、次の企画紹介が始まっている。


 COEの看板が開き、盤上干渉戦の実況席にスタッフが走り、講堂ではレイカの舞台衣装が運び込まれ、空では紅華のバルーンが出口を塞がない高さで揺れていた。


 双灯祭DAY2。


 昨日より明るく。


 昨日より楽しく。


 昨日より安全に。


 昨日より油断なく。


 僕たちは、それぞれの持ち場へ歩き出した。


 DAY2の開幕セレモニーは、表向きにはただの学園祭の挨拶だった。


 昨日の感謝。


 今日の予定。


 COEの宣伝。


 盤上干渉戦と演劇の紹介。


 そして十五時の特別企画への案内。


 けれど僕たちにとって、あれは別の意味を持っていた。


 サツキは、全校生徒の前で出口を宣言した。


 怖くなったら離れていい。


 苦しくなったら休んでいい。


 退出は失敗ではない。


 帰れることが、祭りの成功だ。


 その言葉は、御影シオンの仕様書より強かった。


 専門用語ではない。


 技術的な制御でもない。


 でも、全員の記憶に残る。


 だから効く。


 DAY1の天使は、二日間を始めるために降りてきた。


 DAY2の天使は、二日間を終わらせるために立っていた。


 十五時はまだ遠い。


 けれど、僕たちはもう一つ、条件を書き込んだ。


 誰も帰れない物語にはしない。


 双灯祭DAY2は、ここから本当に始まる。


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