↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/22

第20話 魔族の影 ―静かに森へ滲む蒼霧の四天王―(魔族視点)

すみません投稿遅れました

 魔族領ヴァルガンの西端。

 黒霧が薄く漂う国境の森へ向かう道を、

 蒼霧の四天王 リュシア と影部隊が静かに進んでいた。


 人族の調査団が森へ入ったのとほぼ同じ頃――

 魔族側もまた、森へ向かっていた。


---


 影部隊は魔族の中でも特に気配を消すことに長けた精鋭。

 彼らの足音は、砂を踏む音すらほとんど響かない。


 隊員の一人がリュシアに声を潜めて話しかけた。


 「リュシア様……森の魔力が、いつもと違います」


 リュシアは歩みを止めず、淡い霧を指先に纏わせながら答える。


 「眠りの魔力だ。

  柔らかく、深い……

  まるで森そのものが夢を見ているようだね」


 別の隊員が眉をひそめる。


 「眠りの魔力がここまで届くなど……

  主の誕生は本当なのですか?」


 リュシアは静かに頷いた。


 「ええ。

  魔王様が“主の気配”を感じ取った。

  あの方の感知は絶対だよ」


 影部隊は互いに視線を交わし、緊張を深めた。


---


 森の入口に到着すると、空気が一変した。


 影部隊の一人が思わず息を呑む。


 「……これは……」


 森から流れ出る魔力は、

 人族が感じた“優しい眠り”とは違い、

 魔族にはより鮮明に、より深く伝わってくる。


 「心が……沈むような……

  いや、落ち着く……?」


 「眠りの魔力に触れると、精神が安定するんだ。

  だが油断すると深く沈む。

  気を引き締めて」


 リュシアは森の奥を見つめ、静かに言った。


 「この森は、主を守っている。

  私たちは“客”として入るんだ。

  森を荒らさないように」


 影部隊は無言で頷き、森へ踏み入れた。


---


 森の中は、まるで夢の中のようだった。


 木々は眠り、魔物たちは丸くなり、

 鳥たちは枝の上で静かに目を閉じている。


 影部隊の隊員が囁く。


 「……魔物まで眠っている……

  こんな現象、見たことがありません」


 リュシアは霧を漂わせながら、森の魔力を読み取る。


 「眠りの主は、森と繋がっている。

  森全体が“ねどこ”になっているんだ」


 隊員が首をかしげる。


 「ねどこ……?」


 「眠る場所、という意味だよ。

  主にとって森は家そのものなんだ」


 影部隊は静かに森の奥へ進んでいく。


---


 進むほど、眠りの魔力は濃くなっていく。


 影部隊の一人がふらりと足を止めた。


 「……少し……眠気が……」


 リュシアが霧を纏わせ、隊員の肩に触れる。


 「深呼吸して。

  魔力を整えれば耐えられる。

  眠りの主は害意を持っていないけれど、

  魔族は魔力に敏感だから影響が強く出るんだ」


 隊員は息を整え、再び歩き始めた。


 「……ありがとうございます、リュシア様」


 「無理はしないで。

  森の中心はもっと濃いはずだからね」


---


 森の奥へ進むほど、

 リュシアの霧が淡く震え始めた。


 隊員が気づく。


 「リュシア様……霧が……」


 「ええ。

  主の気配が強くなってきた。

  この先に“核”がある」


 影部隊は緊張を高めながら進む。


 森の中心へ向かう道は、

 静かで、神聖で、どこか暖かい。


 リュシアは小さく呟いた。


 「……眠りの主よ。

  あなたが敵でないなら、

  私たちはあなたを守る側に回る」


---


 森の主が眠る中心へ――

 人族と魔族、二つの影が近づいていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。