第2話 初めての“目覚め”と、人型の誕生
誤字や変な所あれば教えてください。
――光が、満ちていく。
僕の球根は、まるで呼吸するように脈動していた。
殻の内側が熱を帯び、蕾がゆっくりと開いていく。
眠っているはずなのに、何かが変わろうとしているのがわかる。
「……ああ……また眠くなってきた……」
進化の兆しすら、僕にとっては心地よい眠気の一部だった。
けれど、世界は違った。
森の空気が震え、周囲の生き物たちが一斉に逃げ出す。
鳥の羽ばたき、獣の走る音、木々のざわめき――
すべてが僕の周囲から遠ざかっていく。
僕はただ、眠っていた。
◆
蕾が完全に開いた瞬間、僕の意識はふっと浮かび上がった。
暗闇の中に、光の粒が集まっていく。
それは人の形を作り、輪郭を描き、僕の“外側”へと押し出される。
――ふわり。
重力の感覚がない。
風の流れが、肌のようなものを撫でる。
「……これ……僕?」
初めて“視界”が生まれた。
淡い光に包まれた腕。
指先は細く、半透明で、植物の繊維のように揺れている。
髪も同じく、光と植物が混ざったような質感だ。
僕は、球根の上に浮かぶ“霊体”として存在していた。
下を見ると、地面に根を張った球根――僕の本体が眠っている。
「……二つ……?」
不思議と混乱はなかった。
むしろ、二つの体があることで、眠りやすくなった気がした。
霊体の僕は、ふらりと揺れながら地面に降り立つ。
足が地面に触れた瞬間、土の温度が伝わってきた。
**「……あったかい……」**
初めての感覚だった。
けれど、同時に――
「……眠い……」
霊体になっても、眠気は消えなかった。
◆
周囲を見渡すと、森は静まり返っていた。
魔物の姿は一匹もない。
僕が眠っている間に、吸収されてしまったのだろう。
霊体の僕は、ふらふらと歩き出す。
歩くという行為は、思っていたよりも面倒だった。
足を動かすたびに、眠気が増していく。
「……やっぱり……動くのって……疲れる……」
けれど、霊体の体は軽く、風に乗るように進むことができた。
森の奥へ向かうと、倒れた魔物の残骸がいくつも転がっていた。
その一つに触れた瞬間、また“何か”が流れ込んでくる。
温かい記憶。
冷たい恐怖。
走る感覚。
牙を剥く衝動。
〈夢想〉が発動しました。
対象の記憶を一部吸収します。
夢の中で見た景色が、現実の感覚として繋がっていく。
「……これが……魔物……」
ようやく、僕は“魔物”という存在を理解した。
牙を持ち、爪を持ち、瘴気を纏う生き物。
僕を食べようとしたのかもしれないし、ただ興味を持っただけかもしれない。
でも、どちらでもいい。
僕は眠っていただけで、魔物は勝手に倒れ、吸収されていった。
「……眠るだけで……全部終わるなら……」
霊体の僕は、ふわりと笑った。
「……やっぱり……寝ていたいな……」
◆
その頃、森の外では。
冒険者たちが森の入口に到着していた。
「……静かすぎる」
「魔物の気配がない……?」
「依頼どおり、異変が起きてるな」
彼らはまだ知らない。
森の中心で、眠るだけで世界を変える存在が“目覚めた”ことを。
そして、彼らの誰かが――
後に僕へ“名前”を与えることになる。
●所持スキル
• 〈養分吸収〉
• 〈花粉〉
• 〈不動〉
• 〈安眠〉
• 〈夢想〉




