第17話 魔族領揺らぐ ―魔王が見た“眠りの波”―(魔族視点)
今回も短めです。
魔族領ヴァルガン。
黒き山脈と深い霧に囲まれたこの地は、
常に濃密な魔力が渦巻く世界だった。
魔族は生まれながらに魔力に優れ、
魔力の流れの変化には敏感だ。
その魔族領の中心――
魔王城の最上階で、異変は起きた。
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魔王城の玉座の間。
黒と紫の魔力がゆらめく空間で、
魔王 ルナ=ヴァルガン は静かに瞳を閉じていた。
彼女は魔族の頂点に立つ女性であり、
魔力感知能力は魔族随一を誇る。
そのルナが、突然目を開いた。
「……これは……」
側近がすぐに駆け寄る。
「魔王様、何か……?」
ルナはゆっくりと立ち上がり、
玉座の周囲に漂う魔力を手で払った。
「西方の森から“眠りの波”が流れてきた。
しかもこれは自然の眠りではない……
“主”の気配がある」
側近は息を呑む。
「主……森の守護者が誕生したということですか?」
ルナは静かに頷いた。
「魔力の質は柔らかく、優しい。
だが規模が大きすぎる。
人族領側にまで届いている」
「すぐに主要メンバーを招集します!」
「頼む。
四天王、魔術開発長、参謀長……
全員を会議室へ」
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魔王城の会議室。
黒い石造りの円卓の周りに、魔族の精鋭が集まった。
・四天王
・魔術開発長
・参謀長
・魔王直属の側近
・魔力観測塔の責任者
魔族領の頭脳と武力が一堂に会する、滅多にない場だ。
ルナが席につき、静かに口を開いた。
「西方の森で“眠りの魔力”が広がっている。
“森の主”が誕生した可能性が高い。
観測塔の報告を」
魔力観測塔の責任者が前に出る。
「森から発生した魔力は“眠り”属性。
攻撃性はなく、精神安定・治癒・結界などに適した魔力です。
しかし規模は魔族領まで届くほど強大……
自然発生とは考えられません」
四天王の一人、炎の四天王 ヴァルド が腕を組む。
「眠りの魔力で街道が封鎖されるなど、人族にも魔族にもできん。
これは……本物の“主”だな」
魔術開発長が興奮気味に言う。
「眠りの主……!
もし魔族領に迎え入れられれば、精神魔術の研究が飛躍します!」
参謀長が冷静に言う。
「しかし、人族も動くでしょう。
未知の魔力を恐れ、討伐隊を出すはずです」
ルナは静かに頷いた。
「だからこそ、魔族が先に動く。
ただし――」
円卓の空気が張り詰める。
「森へ向かうのは四天王とする。
目的は戦闘ではなく、交渉と観察だ」
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リュシアが静かに立ち上がった。
「魔王様……私が行きましょう。
眠りの主は攻撃性を持たないようですし、
刺激を与えれば逆に危険です。
私なら森を荒らさずに接触できます」
四天王の中で最も穏やかな性格を持つのは、
蒼霧の四天王・リュシア。
青い霧を操る魔族で、
戦闘よりも調停・交渉・観察を得意とする。
ルナは満足そうに頷いた。
「リュシア、頼んだ。
影部隊を数名つける。
人族の討伐隊より先に森へ入り、
“眠りの主”の所在を確認しなさい」
リュシアは胸に手を当て、深く礼をした。
「御意。
森の主に害意がないなら……
魔族領の友として迎え入れましょう」
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リュシアは影部隊を率い、
静かに 西方の森へ向けて出発した。
魔族の影部隊は、
闇に紛れ、森を渡り歩く精鋭たち。
彼らは戦うためではない。
“眠りの主”を観察し、
必要なら守るために。
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その頃、森の中心。
ネムリネの蕾は静かに光を放ち、
森全体へと魔力を流していた。
ドラゴンがその前で目を閉じる。
「眠りの子よ……
人族も魔族も……お前を求めて動き始めた。
だが、恐れるな。
この森は……お前の“ねどこ”。
我が翼の下にある」
蕾は、まるで返事をするように光を強めた。
森は静かに、しかし確実に――
新たな主の誕生を待っていた。




