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第16話 王都揺らぐ ―眠りの波動と未知の存在―(人族視点)

短めです。

 王都エルディア王城に、緊急の報せが届いたのは早朝だった。


「国王緊急事態です!」

大臣が国王寝室に駆け込み叫んだ


「寝室に入ってくるなど何事だ!」


アルヴェルト国王は驚きつつ声を荒げた。


「そんな事言ってる場合ではありません!

 東方の森から“強力な魔力の波”を感知しました。」


 「緊急会議を開く首脳部を集めよ」

報告を受けた国王は、瞬く間に宣言した。


---


 重厚な扉が開き、王国軍の将軍、宮廷魔術師、文官、貴族たちが次々と入室していく。


 中央の席に座るのは、大臣――

 セオドア・レインハルト。


 国王の幼なじみで、

 王国の“頭脳”と呼ばれる人物だ。


 「……全員揃ったな。報告を始めろ」


 文官が震える声で書類を読み上げる。


 「は、はい……!

  昨夜、東方の森周辺にて“広範囲に眠りの魔力”が発生。

  近隣の街道や町、村等で人や家畜、魔物等が眠りに落ちていると予想されます。」


 室内がざわめく。


 「魔族の仕業ではないのか?」

 「毒か? 呪いか?」

 「森の魔物が進化したのでは?」


 ガルド将軍が手を上げ、静寂が戻る。


 「宮廷魔術師団はどう見ている?」


 魔術師団長の老魔術師が前に出た。


 「……魔族の魔力とは性質が違います。

  攻撃性がなく、むしろ“安らぎ”に近い波動……

  しかし、規模が大きすぎる。

  自然発生とは考えにくい」


 「では何だ?」


 「……“未知の存在”による魔力現象と考えられます」


 室内が再びざわめいた。


 ガルド将軍は机を叩いた。


 「街道が封鎖されれば、物流も軍の移動も止まる。

  これは立派な“国防問題”だ」


 貴族の一人が声を上げる。


 「森を焼き払うべきではないか?

  未知の脅威は早期に排除するべきだ!」


 別の貴族が反論する。


 「しかし、被害は“眠り”だけだ。

  死者も怪我人も出ていない。

  性急に動けば、逆に危険を招く」


 魔術師団長が静かに言う。


 「……この眠りは“害意”を感じません。

  むしろ、魔力の質は……優しい。

  しかし、強大すぎる。

  このまま放置すれば、王都にまで届く可能性もあります」


 大臣は腕を組んだ。


 「森の調査はどうなっている?」


 文官が答える。


 「ギルドに依頼していた調査隊が、

  昨日、森へ向かったとのことです。

  まだ報告は届いておりません」


 国王は短く息を吐いた。


 「……ギルドの報告を待つ。

  だが同時に――」


 室内の空気が張り詰める。


 「王国軍は“森の警戒態勢”に入る。

  必要とあらば、討伐隊を編成する」


 ミナたちの知らぬところで、

 王国はすでに“戦の準備”を始めていた。


---


◆王城・魔術観測塔


 同じ頃、王城の高塔では、

 魔術師たちが巨大な水晶球を囲んでいた。


 水晶球には、森の方向から流れる“淡い紫色の波動”が映し出されている。


 若い魔術師が震える声で言う。


 「……これが……眠りの波……?」


 老魔術師が頷く。


 「そうだ。

  だが……これは“攻撃”ではない。

  まるで……子守歌のようだ」


 「子守歌……?」


 「うむ。

  だが、魔力が大きすぎる。

  このままでは王都にまで拡大するかもしれん」


 魔術師たちは顔を見合わせた。


 「森に……何がいるんだ……?」


---


 夕刻、王城に号令が響いた。


 「東方森周辺に警備隊を派遣せよ!」

 「魔術師団は観測を継続!」

 「ギルドからの報告を最優先で受理せよ!」


 王国は動き始めた。


 まだ誰も知らない。

 その眠りの中心にいるのが――

 ただ眠りたいだけの、小さな蕾だということを。


---


 その頃、森の中心。


 ネムリネの蕾は静かに光を放ち、

 森全体へと魔力を流していた。


 ドラゴンがその前で目を閉じる。


 「眠りの子よ……

  外界は騒がしい。

  だが、恐れるな。

  この森は……お前の“ねどこ”。

  我が翼の下にある」


 蕾は、まるで返事をするように光を強めた。


 森は静かに、しかし確実に――

 新たな主の誕生を待っていた。

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