第12話 調律の刻(とき) ―眠りの波動と問いかけ―
更新遅くなりました。
話全然まとまらなくて時間かかりました。
週1くらいで更新していこうと思いますので、気長に待っててください。
ミナが小瓶を両手で包み込み、僕――ネムリネの本体の蕾の前にそっと膝をついた。
「ネムリネ……いくよ」
小瓶の中で揺れる青白い光は、まるで僕を呼ぶように震えていた。
ドラゴンが低く言う。
「泉の水を……蕾の中心に注げ。
だが決して触れるな。泉の魔力は繊細だ」
ミナは慎重に小瓶を傾けた。
ぽたり……
青白い雫が蕾に触れた瞬間――
世界が、揺れた。
◆
「……っ!」
僕の霊体が、強い力に引っ張られる。
「……え……? まって……!」
抵抗する間もなく、霊体は光に包まれ、
本体の蕾へと吸い込まれていった。
スウッ……!
ミナが驚きの声を上げる。
「ネムリネの霊体が……戻っていく……!」
カイルが魔力視を発動し、息を呑む。
「……本体と霊体が……完全に重なった……!
調律が始まったんだ!」
ドラゴンが頷く。
「ここからが本番だ。
眠りの子の魔力が……目覚める」
◆
蕾が強く光り始めた。
最初は淡い光だった。
だが次第に、眩しいほどの白光へと変わっていく。
レオンが腕で目を覆う。
「うおっ……! なんだ、この光……!」
ミナが不安そうに叫ぶ。
「ネムリネ……苦しくないの……!?」
僕は本体の中で、意識が揺れながら答えた。
「……ねむ……い……
でも……あつい……」
胸の奥が燃えるように熱い。
眠りたいのに、眠れない。
眠りと覚醒がぶつかり合い、身体の奥で渦を巻いている。
カイルが震える声で言う。
「ネムリネの魔力が……膨れ上がってる……!
このままだと……!」
ドラゴンが低く唸る。
「来るぞ……“魔力の波動”だ」
◆
次の瞬間――
ドンッ!!
蕾から、巨大な眠りの波が放たれた。
ふわり……ふわり……
柔らかいのに、圧倒的な力を持つ波動。
ミナがその場に崩れ落ちる。
「……あ……ねむ……」
レオンも剣を落とし、膝をついた。
「く……っ……これは……抗えな……い……」
カイルは抵抗しようとしたが、すぐに瞼が落ちた。
「……ネムリネ……すご……」
三人はそのまま、静かに眠りについた。
◆
眠りの波は森へ広がり――
さらに森の外へ、国境へ、街道へと広がっていく。
森の動物・魔物たちは次々と倒れ、
木々はざわめきを止め、
風は静まり返った。
森の外で警備していた兵士たちも、
馬車を引く馬も、
遠くの村の住人たちも――
すべてが、深い眠りに落ちていった。
◆
そして――
僕の意識は、深い深い闇の中へ沈んでいった。
暗闇の中で、声がした。
――眠るか?
それとも、目覚めるか?
「……だれ……?」
声は続く。
――お前は“眠り”そのもの。
だが、眠りは終わりではない。
眠りは“始まり”でもある。
胸の奥が熱くなる。
――選べ。
深く眠り、世界を包む存在となるか。
それとも……
目覚め、歩き、世界と関わる存在となるか。
「……ぼく……?」
――お前の“進化”は、どちらにも向けられる。
眠りを広げるか。
眠りを守るか。
眠りを導くか。
声は優しく、しかし重く問いかける。
――眠りの子よ。
お前は……何を望む?
僕は答えられなかった。
でも、胸の奥が震えた。
「……みんな……
ミナ……レオン……カイル……
ぼく……いっしょに……いたい……」
その瞬間、声が微かに笑った。
――ならば、歩む力を得よ。
眠りを“分け与える”だけでなく……
眠りを“選ぶ”力を。
光が差し込む。
――目覚めよ、眠りの子。
進化の時は……近い。
◆
光がゆっくりと収まり、
蕾の震えも静まっていく。
ドラゴンがゆっくりと頷く。
「眠りの子よ。
お前は一歩、成長したな。
次は――“根を畳む”時だ」
僕は霊体のまま、ふらふらと揺れながら言った。
「……ねむ……
みんな……ねてる……?」
本体の蕾は、
まるで返事をするように、静かに光を放った。




