#5 拳銃とボウガン
―地下9階 12/22 午前10時半 残り68時間半―
なんとか気分も落ち着いてきた。
皆の様子を見てみる。
夕姫は壁にもたれ掛かって何か考え事をしている。
深夏は体育座りをして疼くまっている。
今は2人共声をかけずにそっとしておこう。
周りを見渡してみる。
気が動転して、とりあえず逃げるので精一杯だったから気づかなかったが、ここは小規模な物置になっているようだ。何か役に立つものがあるかもしれない。
僕は物置を探索し始めた。
ほとんどがガラクタばかりで、目ぼしいものがほとんど無かったが、奥に頑強なアタッシュケースを1つ見つける。
鍵は掛かっておらず、中は少し重い。ロックを外し、僕は慎重にアタッシュケース開ける。
「な、なんでこれが・・・」
中身は拳銃。
ベレッタ92と呼ばれる、警察や軍隊でよく使われている拳銃だ。
装弾数は15発で操作性や安全性が高く、世界で最も知名度が高いと言っても過言ではない。
僕の声に夕姫が近寄ってきて、アタッシュケースの中身に驚愕する。
拳銃の他にはナイフが一丁に発煙筒が2つ。
ナイフはサバイバルナイフのようなものではなく、登山などに使われるに折りたたみ式のナイフだ。
「物置の奥で見つけたんだ。まさか、こんなものが入っているなんて・・・」
拳銃。
少しは予期はしていたが、こんなにも早く現実に現れるとは。
夕姫は拳銃を手にし、マガジンを確認する。
「本物・・・みたいね。」
「夕姫、これどうする?」
「全部りゅうくんが持ってて。」
夕姫が真剣な表情で拳銃を差し出す。
「えっ、何で僕が?」
「私が持ってても仕方ないじゃない?それともりゅうくんには、撃てない?」
確かにその通りだ。
今の僕は能力が何かも分からない。そして、使うことも出来ない。
他のプレイヤーに比べて、余りにも無力だ。
「私にはりゅうくんに死んで欲しくないの。だから、もしもの為にもりゅうくんが持ってて。」
夕姫の真剣な表情と言葉に、僕はただ無言で頷いて受け取るしかなかった。
―――――――――――
部屋を出て20分ぐらい歩く。
ふと通路のT字になっている所に差し掛かると、周囲を徘徊しているロボット2機に出くわす。
ロボットと呼んでいいのかと思うほどの粗末な作りで、ドラム缶と形容してもいいぐらいだった。
しかし、手にはスタンガンのような武器が取り付けてあって、油断はすることが出来ない。
幸い、索敵の範囲が狭いせいかこちらには気づいていないようだ。
「私に任せて。」
夕姫が壁伝いに慎重に近づいていく。
ある程度近づいた所で、壁に手を置く。
すると凄まじい音で壁に電流が流れ、ロボットに襲いかかる。
耐電性はそれほどないのか、ロボットは2機ともショートして爆発し、動かなくなった。
「よし!ちょろいちょろい!」
夕姫がガッツポーズをし、笑顔で振り返る。
夕姫のその緊張感の無さに僕と深夏は緊張から解き放たれる。
とりあえず銃をいつでも撃てる状態にし、ロボットの様子を確認しにいく。
あれだけの電流を流されて爆発したのだから、ロボットは全く動く気配はない。
「う~ん、ちょっとやりすぎちゃったかな。」
「相手はロボットなんだから容赦する必要はないわよ。」
夕姫と深夏の会話が聞こえる、その瞬間だった。
通路の向こう側に人影が見える。
僕の目にはその男性の動きがスローモーションに見え、何をしているのかを察した。
「皆伏せて!」
僕は咄嗟に夕姫と深夏の頭を手で下げ、伏せさせる。
その瞬間、頭上を何かが通りすぎる。
僕には見えた。矢だ。
「チッ、外したか。」
男が新しい矢を装填しながら近づいてくる。
少し陰気そうな顔で眼鏡を掛けてスーツを着た若い男性だ。
「貴方がホールに居た人を殺したの?」
夕姫が態勢を戻しながら問いかける。
「ああ、あいつね。あいつは俺の能力の実験台になって貰ったのさ。」
「実験台・・・?」
「そうさ、そしてお前らもレベル2になった俺の実験台になってもらう!」
男はボウガンを発射しようと構える。
だが、その前に僕が拳銃が構える。
正直僕には撃つ勇気が無かった。
でも、このままでは誰かが死ぬ。
僕は引き金を引いた。だが、反動で腕が痺れ弾が逸れる。
弾は少し逸れたが、男のボウガンに当たり、すぐにボウガンを貫通して左手に当たる。
男は呻き声を上げながらボウガンを手放す。
「うぐっ・・・拳銃を持っているとはな・・・」
ボウガンと銃相手ではどちらが勝つかなんて言うまでもない。
男は後ろを向いて、逃亡を始めた。
「夕姫!」
「ええ!」
夕姫は床に手を当て電流を流そうとする。
しかし、男が右手で指を鳴らした瞬間、ボウガンが爆発し視界が煙に覆われる。
咄嗟に僕は2人を庇い、地面へ倒れこむ。
通路に響いていた男の足音は消え、辺りは静寂に包まれる。




