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#4 最初の犠牲者

―地下10階Aブロック 12/22 午前9時 残り70時間―


僕達は地下9階目指すために先ほどの部屋を出る。

端末のマップに階段らしきものが1つあったため、そこを目指すことにした。

・・・それにしても僕の能力。"能力不明"。

故障かと別の端末でも試してみたが、結果は同じ。

能力不明と出るということは、ナノマシンが入っていることは間違いないのだが・・・。

もしかして、自分には能力はないのではないか。そんなことを思ってしまう。

夕姫の足でまといになるのが、僕には一番辛かった。


「どうしたの?りゅうくん。」


夕姫が僕の表情を見て話掛けてくる。


「いや、何でもないですよ。」


「ならいいけど。りゅうくん、ちょっと思いつめた顔してたよ?」


「何でもないですってば。」


僕は何とかごまかして歩き続ける。

初めて出会ったときは天然っぽいという印象だったが、今は全然違う。

とてもしっかりしたお姉さんのような印象だ。

それが思わず夕姉と重なってしまって、もっと夕姫を好きになってしまう。

でも好きになってしまう程、この自分が何も役に立たないこの状況が辛くなっていく。


「ねえ、夕姫さんと流さんって本当に初対面なの?」


深夏がさっきの会話を聞いて、不思議そうに訊ねてくる。


「そうだよ~。気がついたら同じベッドの上で2人共寝てたの。」


「同じベ・・・ごほん。その割にはあたしには凄く仲良さそうに見えるけど。」


「そう?そう見えるなら嬉しいな~。ね、りゅうくん?」


夕姫が僕の腕をしがみついて言う。


「ちょっと夕姫・・・やめてくださいって。」


胸が。胸が腕に当たってる。


「その他人行儀な話し方をやめたらもっと仲良く見えるのにな~。」


夕姫は口を尖らせながら不満そうに言う。

確かに呼び捨てなのに敬語なのはおかしいけどさ・・・。


「私ここに来る前の記憶ってないけど、りゅうくんとは初めて会った気がしないんだ。深夏ちゃんはここに来る前は何してたの?」


「あたしは入院してる弟の所へお見舞いに行った帰りに車に轢かれて、気がついたらここに居たの。」


深夏は少し暗い表情で話す。

車に轢かれた・・・?


「車に轢かれたって・・・今は何ともないの?」


「うん、平気。」


ナノマシンの影響だろうか?

僕も飛び降り自殺をしたんだから、そう言えば無傷なのもおかしい。

ナノマシンにはまだまだ謎な部分も多いようだ。

そしてこのゲームにも。



――――――――――――――――


僕達はマップで見た、地下10階の階段らしきものに辿り着く。

予想通り、そこは少し長い階段になっておりどうやら地下9階に進めそうだ。


「ここからは何が起こるか分からないよ。皆、覚悟はいい?」


「はい」「うん」


「じゃあ行くわよ!」


3人一斉に階段を駆け上がる。

息を切らしながら駆け上がった先に待っていたのは、

ホールのような空間。

別の場所からも階段が1つ伸びている。

そしてホールのど真ん中に無視出来ないものが一つある。


一人の男性の死体。


全身血まみれで倒れている。

そして辺りを漂う焦げ臭いの匂い。そこら中に飛び散った血飛沫。


「うっ・・・」


少し吐きそうになるが寸前で堪える。

隣を見ると、夕姫が深夏の目を手で隠していた。

僕は死体に近づき、様子を調べてみる。

死体はかなり焦げ臭い。

胴体の部分、特に腹部の損傷がひどく、破裂してしまっている。

破裂は身体を中心にして周囲に飛び散り、無残な光景になっている。

胴体の損傷の割に顔の損傷は少ない。見た目から察するに中年ぐらいだろうか。

しかし、その表情は驚愕で歪んでいる。


「酷いですねこれは・・・」


これが今自分達が直面している現実。

この男性が自分達であってもおかしくない、そういう現実。


「ええ、焦げ臭い匂いから察するに爆弾のようなもので殺されたのでしょうけど、腹部だけが破裂してるって妙ね・・・

しかもこの飛び散り方、まるで体内から破裂したみたいな飛び散り方だわ。」


夕姫が至って冷静に話す。

確かに。

外部から爆弾で吹き飛ばされたらこんな飛び散り方にはならない。

しかも、腹部だけ破裂して他の損傷も少ないというのも不自然だ。


「夕姫、これって・・・」


「ええ、普通に考えてプレイヤーの能力だと思うわ。」


夕姫は思い悩んだ表情で話す。

見るからに人殺しの為にあるような能力。

こんな相手に僕達は立ち向かっていくのだろうか。


「な、なんで皆こんなに冷静なの?」


深夏が夕姫に目を隠されながら話す。


「僕だって今にも吐きそうだよ。吐くのを我慢して見てるんだ。夕姫は?」


「うーん、私は何故かそれほど動揺してないの。記憶がないからかしら?」


夕姫はまた思い悩んだ表情で話す。

記憶がないからってこの光景を見て動揺しないはずはない。

もしかして、見慣れてるとか?

でも夕姫に限ってそんなことはないと思う。制服着てるからたぶん学生だろうし。

いや、こんなことを考えている場合じゃない。


「とりあえず急いでここから離れよう。これをやった奴がまだ近くにいるかも。」


「うん」


僕達は10分ほど走った先にある部屋に逃げ込む。

僕は緊張が抜けて、へなへなと座り込んでしまう。


「これがこのゲームか・・・」


10人のプレイヤーの内、早くも1人が死んだ。

これがこのゲームなのだ。

僕達もいつ死ぬか分からない。


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