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#3 能力不明

―地下10階Aブロック 12/22 午前8時 残り71時間―


僕と夕姫は廊下に出た。

部屋とは違い、頑丈な壁で覆われた無機質な廊下になっている。


「とりあえず、他のプレイヤーを探しましょう。地下10階は攻撃禁止だし、私達と協力してくれる人もいるかもしれないわ。」


夕姫が端末を差し出しながら言う。

端末には地図のようなものが映し出されていた。


「これが地下10階の地図よ。詳細は分からないけど、同じような部屋もあるみたいだし。」


初めて会ったときは少し天然っぽかったが、とてもしっかりしていて頼りになりそうだ。彼女に従おう。


「はい、分かりました。夕姫さんに従います。」


「も~何でさん付けなの~?名づけ親なんだから呼び捨てでいいよ」


口を少し膨らませながら夕姫が言う。

確かに僕が名付けたんだから、さん付けはちょっと不自然だ。

でも、なんかちょっと照れるな・・・。


「は、はい・・・ゆ、夕姫。」


「よし!じゃあ早速行きましょ!」


夕姫は僕の手を取って走り出す。

顔を真っ赤にしながら走ること10分弱。一つの部屋の前に辿り着く。


「うーん、一番近くで私達の部屋によく似た構造なのはこの部屋だわ。開けてみましょ」


夕姫は慎重にドアを開いて中を確かめる。

そこには部屋の真ん中で呆然と立ち尽くした、中学生ぐらいの女の子が居た。

身長は夕姫より一回り小さめ、髪は茶髪でショート、服装は黒のワンピースにロングブーツ。

見た目はちょっと活発そうな女の子だった。ただ表情は固く、何かに悩んでいる様子だった。


「あら、こんにちは~」


突然の声に女の子はびっくりしてこちらを見る。


「あなたも"プレイヤー"かしら?」


女の子はスッと表情を戻して、少し考えてから言った。


「うん、そうだよ」


「私は夕姫。で、こっちはりゅうくん。私達もプレイヤーよ」


りゅうくんって紹介はちょっと駄目なんじゃないかな・・・

そんなことを思いながら相手の返答を待つ。


「あたしは榊原 深夏(さかきばら みなつ)。あたしに何の用?プレイヤーなら敵同士じゃないの?」


深夏は少し敵意を交えながら言い放つ。

それもそうだ、このルールなら普通プレイヤーは敵同士のはずだ。


「深夏ちゃん、私達は殺し合いに来たんじゃないの。しいて言うなら・・・交渉かな?ここから何が起こるのか分からないし、共同戦線を組めればなって思って。

地下10階にはまだ敵は居ないみたいだけど、9階に上がったら間違いなく出てくるだろうし、ボスも居る。レベル1じゃ何かと心配だから、1人でも味方が欲しいの。」


夕姫は笑顔で深夏にそう言う。

もっともな理由だ。これなら協力して貰えるかもしれない。

しかも、相手はまだ中学生の女の子だ。何かと不安に違いない。

深夏はまたしばらく考えた末に、


「じゃあ協力する。でもあんた達を信用したわけじゃないから。」


と仏頂面だがそう言ってくれた。


「ありがとう、深夏ちゃん。これからよろしくね。」


夕姫と僕は深夏に近寄っていき、そう笑顔で告げる。


「ああ、うん。」


少し俯いた顔で深夏は言う。

僕もよろしくと伝えた後に、突然夕姫が深夏の奥にある棚に近づいていき、木製の小さな箱を取り出す。


「この箱だけ部屋と雰囲気が合ってないわね。開けてみましょう。」


箱には鍵が掛かっておらず、中には小型のメモリのようなものが1つ。

Ability diagnostic program と書かれてある。

端子の形に見覚えがある。


「これさっきの端末に接続するんじゃないですか?端子の形が同じだし。」


「たぶんそうね。りゅうくん、ちょっと挿してみて。」


「あ、はい。」


メモリを端末に挿し込む。すると端末がプログラムをインストールされる。

インストールはほんの数秒で終わり、画面が切り替わる。端末を夕姫に差し出した。


「夕姫、こんなものがインストールされたんだけど。」


「どれどれ・・・ふむ、能力を調べるプログラムのようね。この際だし、皆調べてみる?深夏ちゃんは私達に知られたくないなら、1人で調べてもいいけど。」


夕姫は画面を少し眺めた後、そう言う。

能力はプレイヤーにとって最も重要な情報だ。おいそれと他のプレイヤーに教えるわけにはいかない。

夕姫もそれを気遣ったのだろう。


「いい。あたしも調べる。」


相変わらずの仏頂面で深夏が言う。


「じゃあ、まずは私からね。」


夕姫は端末を手の平に置き、数秒後電子音が鳴る。


...レベル1 電撃使いエレクトリックマスター デス


夕姫は納得したように頷く。


「ふむふむ・・・電撃ねぇ・・・ あ、皆も調べて調べて」


夕姫が端末を手渡し、次は深夏が調べ始める。


...レベル1 巨人(ギガント) デス


深夏は意味が分からず、首を傾げる。


「あ、出来た。ねえねえ、これのことでしょ?」


僕達が夕姫のほうへ振り向くと、夕姫の手が雷のようなものに覆われて、帯電していた。

これが、能力。非現実的で凄いが、恐ろしい力だ。


「結構応用が効きそうね、これ。」


そう夕姫が言うと帯電していた手が元に戻る。

夕姫は深夏のほうを向き、診断の結果を見た後こう告げた。


「深夏ちゃん、ちょっと棚を叩いてみて。ちょっと強めに。」


「うん。分かった。」


深夏は訳が分からなさそうにしながら、棚の方へ近づき、叩いてみせる。

その瞬間、信じられないことに棚が深夏が叩いた所を中心に真っ二つになる。

そう、まさに巨人が叩いたかのように。

深夏は自分がやったことが信じられないといった風に驚いている。


「な、なにこれ・・・」


驚くのも無理もない。

実際、僕も目の前で起こった事実を信じることが出来ない。

また、僕にその能力があるということも。


「次はりゅうくんの番よ。」


「は、はい。」


恐る恐る端末を手の平に置き、目を瞑る。

どんな能力なのか。

あと70時間超、付き合っていかないといけない僕の能力。

たった数秒がとても長く感じる。

遂に電子音が、鳴った。


...エラー。能力測定不可能。レベル1"能力不明"







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