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22/30

#20 変異

―地下5階 12/23 午後11時 残り36時間―


アナウンスと同時に部屋に着く。

急いで扉を開いて部屋の中へと入ったが、そこには目を疑う光景があった。

部屋は地下9階の大部屋と同じような構造になっていたが、至る所に穴が空いていたり、鉄柱が無残にも壊されている。そして、部屋の至るところに飛び散った血飛沫。

とても同じ部屋には思えなかった。

その広い部屋のど真ん中にあるものを見つける。

それは人らしき、いや、人であったであろう物体とよく見知った後ろ姿。


「深夏!」


最初に声を上げたのは影山さんだった。

深夏はその声に反応してゆっくりとこちらを振り向く。その瞬間、僕達3人は絶句する。

血塗れの服。血が滴る右腕。血塗れの体。

血、血、血。血一色。

そして、狂気に満ちた笑顔。正気とは思えない充血した目。

とてもあの深夏だとは思えなかった。


「ふふふ・・・ふふふ・・・」


不気味な笑いが部屋中に響きわたる。

僕達は声も出ず、その姿をじっと見つめるのみだった。


どれくらいの時間が経っただろうか。いや、多分一瞬だろう。

一瞬が何時間とも思えるほどの静寂。

深夏がこちらへゆっくり、ゆっくりと歩きだす。

その瞬間だった。


「あっ・・・あぐっ・・・うっ・・・あぁぁぁ・・・」


突然深夏が胸を押さえて苦しみだす。

ふと我に返り、声を掛ける。


「一体どうしたんだ!?様子が変だぞ?」


こちらの問いかけに答えるまもなく、深夏は胸を押さえたまま倒れ込んでこちらに片腕を伸ばす。

顔は先程の狂気に満ちた顔とは打って変わって、僕達が知っている深夏と近い感じになっていた。


「た、たすけて、み、んな・・・」


涙を流しながら掠れた声で僕達に助けを乞う。


「深夏!」


影山さんがすかさず走って手を掴んだ、その瞬間だった。


バリバリバリバリ


「うあああああああああああ!!!」


何かが、裂ける音。

その音は深夏から出ていた。


バリバリバリバリ


音の正体が姿を現し始める。

鳥の羽のようなものが背中から生えてくる。


「同じだ・・・あの時と同じ・・・」


影山さんは深夏の手を放し、後ずさりし始める。


「影山さん!あの時ってなんですか!?一体何が起こってるんですか!?」


影山さんはふと我に返ってこう告げる。


「流生!夕姫!今すぐここから逃げろ!いや、今のうちに奥の階段を登ってここから離れるんだ!」


慌てた様子で、いつもの冷静さは全くない。

何かに恐怖しているかのような目だった。

一体、何が起こっているんだ。


「影山さんはどうするんですか!」


「俺はここに残る!深夏を連れてすぐ追いつくから待ってろ!」


影山さんは少し笑みを浮かべながら僕達に言う。

でも、どう見ても作り笑いだった。


「僕達もここに残ります!」


「駄目だ!さっさと行け!」


「でも!」


不意に腕を引っ張られる。


「りゅうくん。」


無言で夕姫が僕を見つめて、首を振る。

察してあげよう?そんな夕姫の言葉が聞こえた気がした。

苦しむ深夏と無言の影山さんを横目に、僕と夕姫は無言で奥の階段へ走り、階段を駆け上がる。

駆け上がる途中で下からドーンという音が聞こえた気がした。



――――――――――――



この光景はあの時と同じだ。

軍の任務で違法な研究所を占拠しに向かったとき。

そこに親父、エドガーがいた。

親父は最初こそ普通だったが、次第に苦しみだして背中から黒い翼が生えた化物になった。

俺の同僚であり、親父の元部下だった奴らはほとんど化物と化した親父の手で殺された。

俺はその光景が幻だと思った。夢だと思った。

俺は咄嗟に逃げ出してしまった。

それを今でも後悔している。


目の前で苦しんでいた深夏が不意に立ち上がる。

最早それは深夏ではなかった。

銀翼が羽を散らしながら広がり、腕や足が歪に変形し始める。

顔には既に表情が残っておらず、ただ虚ろな目がこちらをじっと見つめるのみ。


「今、楽にしてやる・・・」


もう助からないだろう。

せめて俺の手で楽にしてやる。


俺はもう後悔しない。

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