#19 過去
影山孝之はどこにでもいる普通の日本人だった。
・・・高校生までは。
幼い頃から柔道に打ち込み、大きな大会で優勝した経験もある為、実力のある選手だったのだが、所詮どこにでもいる普通の日本人に過ぎなかった。
しかし、高校生の時に家族で海外へ旅行に出掛けたときから人生は一変する。
なぜならば、旅先で家族と一緒にテロに巻き込まれた為だ。
テロに巻き込まれて家族は全員死亡。自分は奇跡的にも生還したが、彼が目が覚めた場所は病院ではなく、とある施設のベッドだった。
その施設は人体実験場で、彼は死と隣り合わせの生活を余儀なくされ、家族を失った悲しみも合わさって次第に心が摩耗していった。
やがて施設は軍によって発見され彼は救出されるが、既に書類上では死んでいることになっており、身寄りもなく彼は孤独だった。
そんな彼を救ったのはエドガーという軍人だった。
エドガーは彼を養子にすると共に、彼の柔道の腕を買って軍に入らせて彼を立ち直らせていった。
彼はジャックと名前を変え、エドガーを第2の父と思うようになり、エドガーの日本人の妻と幼い娘も家族と思うようになった。
彼は第2の人生を歩き始め、立ち直った矢先にまた悲劇は訪れる。
テロから15年ぐらい経った頃、エドガーの妻からエドガーが行方不明になったという情報を彼は耳にする。
エドガーを心配しつつ、軍の任務に就いたのだが任務先で彼は信じられないものを目にする。
黒い羽が生え、人間とは思えない体つきをした大男。
しかし、顔は紛れもないエドガーだった。
エドガーは彼の呼びかけに答えることもなく暴れ続け、彼の仲間を次々と惨殺。
彼はエドガーを撃つことが出来ず、その場から脱兎のごとく逃げ出した。
エドガーはその後軍の爆撃によって鎮圧されたが、彼は責任を問われて軍を追われる。
彼はエドガーの家族に顔向け出来ず、日本へ15年ぶりに帰国してフリーター生活を送る。
ジャックの名前を捨て、彼は影山孝之として空虚な生活を送る。
2年ぐらい経った頃、自宅にある少女が訪れる。エドガーの娘だった。
娘は有無を言わさず、憎しみのこもった目で彼をナイフで刺そうとする。
しかし、彼は避けようとはしなかった。気が済むまでやってくれとまで言った。
彼は娘に嘘を伝え、娘に罪がかぶらないようにしてその後自殺。
これが影山孝之の一生だった。
そして今、生き返ってしまった彼にもう一度悲劇が訪れる。




