#18 遺された研究
―地下5階 12/23 午後10時 残り37時間―
僕達は部屋から出発して数分も経たない内にあるものを目撃してしまう。
それは、血痕。
「かなりの血の量だな。廊下の向こうまで繋がってる。」
鉄の上に残った赤いシミが点々と残されていた。
それほど乾いておらず、最近残されたものだと推測出来た。
「これをやった犯人が近くにいるかもそれない。気をつけろ。」
「は、はい。」
僕と影山さんは銃を構え、夕姫は後ろを向いて警戒しながら慎重に血の跡を辿っていった。
血の跡を辿っていくと、案の定僕達が予想していたものが待ち受ける。
死体。
ただし、壮絶な死に方をしていた。
左腕を切断(血の跡はここから出た血で出来たものだろう)され、胸部を鋭い物で一刺し。
どうみても即死だった。
そして、どこかで見たような顔。
「こ、この人って・・・。」
「う、うん。」
ボロボロになったスーツに眼鏡。
地下7階で僕達を襲ってきた男だ。
あの狂った爆弾魔が何故このようなことに。
「2人共、こっちに来てくれ。」
影山さんが僕達を呼ぶ。
「ポケットの中に入っていたものだ。」
色んなものが散乱している。
その中に名刺を見つけたので、手に取って見てみる。
志賀宗二郎 学者、ねぇ・・・。
陰気そうな顔で予想はしていたが・・・これがマッドサイエンティストというものなのだろうか。白衣でも着たら似合いそうだ。
「ん?これは?」
「手帳のようだな。かなり血に汚れてるが、読めないこともないだろう。」
手帳を開いて読んでみる。
かなり汚れていて見にくいが研究についての記録が書き綴られているようだ。
研究内容については外国語で書かれている為よく分からないが、最後のページに気になるものを見つける。
11/--
この手帳が----手に渡っているならば、既に俺は死んでいるだろう。
なぜなら俺は--すぐ死ぬ。
奴らに--れる。そう、--に。
俺の研究だけは奴らに渡すわけ--いかない。
俺の研究データは-----
どうやら読めるのはここまでのようだ。
所々汚れていて読めないが、この志賀という人物が死んだ理由は研究データをあるものに狙われて殺されたからみたいだ。
そして、ここでまた死んでしまっている。
「影山さん、この手帳に書かれていることって分かります?」
「ん?どれどれ・・・。内容は訳が分からないから、とりあえずまとめっぽい部分を読み上げるぞ。
この研究によって人の精神状態を意図的に操作することが可能である。錯乱状態にすることも出来れば、平静な状態にすることも出来る。
しかし、1つ注意すべき点がある。それは過剰に操作しすぎると性格にとても重大な悪影響を与えてしまう点だ。
落ち着いた物静かな青年が、凶暴で残忍な性格に変わってしまったという事例も報告されている。
この研究が悪用されてしまえば、とんでもない被害を引き起こすに違いない。」
精神状態を意図的に操作する研究・・・。
とても危険な研究をこの人物が携わっていたのか。
そう考えると、この人物の異常な行動と言動の原因はこれによるものではないかという気さえする。
いや、考えても仕方ない。もうこの人は2度目の死を迎えているのだから。
「・・・」
影山さんが険しい表情で手帳を見つめている。
「影山さん、どうかしました?」
「い、いやなんでもない。」
影山さんは慌てて手帳を自分のポケットにしまい、他の物を死体のポケットにしまう。
何か思い当たる節があったのだろうか。
「おーい!こっちにまた血の跡が続いてるよ!」
夕姫が通路の向こうで呼んでいる。
行ってみると、また新しい血痕が続いていた。
さっきのは刺された側の血痕だったし、ということはこっちの血痕は返り血を浴びた加害者の方だろう。
「これ、あの部屋の方に続いてますね。急いだほうがいいと思います。」
「どうやらそのようだな。急ごう。」
3人で血痕を辿りながらあの部屋の方へ進んでいく。
もうすぐ到着する、その時だった。
アナウンスが鳴る。
「No.009番が5階のボスを撃破しました」




