#17 死地に赴く兵士
夕姉を失って半年。
半年経った今でも心の傷は癒えないでいた。
夕姉のことが頭から離れず、常に虚無感を抱えながら生活を送っている、そんな日のことだった。
プルル プルル
携帯が鳴っている。
僕は出る気になれず、思わず無視してしまう。
プルル プルル
2回目。
僕は仕方なく電話に出て、元気のない声で応答した。
「はい、もしもし。」
「あ、及川流生くんかな?」
少し慌てたような声が聞こえてくる。
どうやら男性のようだが、僕に何か用なのだろうか。
「はい、そうですが。」
「流生くん、落ち着いて聞いてください。
君のお父さんとお母さんが事故に遭いました。」
「えっ?」
ふと我に返った。
父さんと母さんが事故・・・?
「重体なので、すぐに○○病院まで来てください。
すぐに家まで迎えの車が来ますので。」
携帯を床に落として立ちすくむ。
余りにも現実味のない知らせに思考がついていけなかったのだ。
僕はその後迎えに来た車に乗り、病院へ向かった。
そして集中治療室の前で座ること数時間。
父さんと母さんの死亡の知らせを聞かされた。
聞かされた瞬間、頭が真っ白になって何も考えることが出来なかった。
――――――――――――
―地下5階 12/23 午後9時 残り38時間―
目が覚める。
天井はもう見慣れてしまった白色だ。
起き上がり、周りを見渡す。
やはり、僕達が見慣れた白い個室のようだ。
しかし、他の部屋と違ってクローゼットやテーブル等があって生活感溢れる部屋になっていた。
どちらかといえば、ホテルの個室に近いだろうか。その割に飾りは質素すぎるが。
そしてふと見てはいけないものを見てしまい、気づかれないように寝たふりをする。
眼に焼きついてしまったピンク色を振り払いつつ、目を瞑って平常心を保った。
終わったのを見計らってもう一度起き上がる。
「あ、りゅうくんおはよう。」
夕姫が気づいて声を掛けてくる。
ボロボロになった制服から、黒いミニスカとYシャツに着替えている。
「おはよう。・・・1つ聞いていい?」
「うん、いいけど?」
「・・・他に服、無かったの?」
ミニスカにYシャツは流石に目の毒だ。
いや、僕が困るだけだけど。
「えー!しょうがないじゃない!動きやすそうな服がこれしか無かったんだから!」
夕姫は口を尖らせながら言う。
「他にはドレスだったりスーツだったりで、全然動きやすそうな服無かったもの。これが一番マシな服装よ。」
「は、はぁ・・・。」
ここを作った人の趣味か何かだろうか。
でもドレス姿の夕姫、ちょっと見てみたいなぁ。
「あ、私のドレス姿見たいとか思った?」
「そ、そんなわけないだろ!」
――――――――――――
こんな他愛のない会話をしていたら影山さんが部屋に戻ってくる。
「全員起きたことだし、とりあえずさっき俺が確かめてきたことを話しておこう。
ここは地下5階。しかもかなり"あの部屋"に近い。」
"あの部屋"とは勿論、招待状に書かれてあった部屋だ。
「私達がいたのは地下6階でしたよね。あの後眠らされてここまで運ばれたってことですか?」
「ああ、そういうことになる。あれから6時間も経ってるし、不可能ではないだろう。」
「ということは、やっぱり僕達をどうしてもあの部屋に一番乗りさせたいみたいですね・・・」
「そうだろうな。そして、そこには深夏に関する何かがある。」
どう見ても罠にしか見えないこの状況。
しかし、避けては通れない。
「行きましょう。ここでグズグズしててもしょうがないですよ。」
「そうだな。2人共気を引き締めろよ。」
「ええ、深夏ちゃんを助けにいきましょう。」
僕達は荷物を持って出発する。
誰もが死地に赴く兵士のような、緊張感のある表情だった。




