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#16 不可避の運命

―地下6階 12/23 午後3時 残り42時間―


僕はこの女性が喋っている間にも能力の正体を考えていた。

パッと思いつくのは、"瞬間移動の能力"、"幻を見せる能力"、"数秒間自分を霧状にさせる能力"ぐらいだろうか。

この際、常識は全て捨ててあらゆる可能性を考える。

何か判断出来る材料はないだろうか。


「しばらくここに居てもらうって言ったけど、どうやって私達を足止めするのかしら?」


夕姫が尋ねる。


「ふふふ・・・そうね、閉じ込めるっていうのもアリだけど、それだと貴方達何するか分からないものね。素直に眠ってもらおうかしら。あの娘のように。」


「あの娘だと?」


女性がこちらに歩いてきながら語りだす。


「そう、深夏とか言ったかしら。あの娘も可哀想ね。素直に裏切ってればそっとしといてあげたのにね。」


影山さんの顔に怒りに歪む。


「深夏を連れ去ったのはお前か!」


「そうよ。あ・・・」


そうよと言った瞬間、発砲音がしてまた女性の眉間に穴が空いたように見える。

しかし、先程のように身体は霧散して別の場所に出現する。

弾は後ろに貫通したのだろうか、弾が壁に当たったような鈍い音がする。

女性は少し不機嫌な表情で、


「会話の途中で発砲なんて礼儀知らずもいい所ね。いいわ、さっさと眠らせてあげる。」


女性が右手を振り上げる。

その瞬間、壁の数箇所が開いてシューという音と共にガスが送られてくる。

催眠ガスか何かだろう。

時間がない。ここを切り抜けるアイデアを見つけなければ。

手がかりがあるとすれば、2回目の発砲の時。

1回目と違う所は無かっただろうか。


「クッ、ここから逃げるぞ!前を突っ切る!」


後ろはシャッターで塞がれてしまっている為、今は前に進むしかない。

片手を口と鼻に当てて、影山さんは前へ走り出す。

切り抜けるアイデアを思いつく暇もなく、夕姫と僕は後に続く。

僕は一瞬前の光景に違和感を覚える。

何とも言えない違和感。そう、作り物のような・・・

女性がニヤリと笑みをこぼす。

そうだ、目の前の光景に少し亀裂が入ってないか?


「待って!影山さん止まって!」


「ん?」


ゴンッ

壁に頭をぶつけた鈍い音。

目の前の光景が通路ではなく、白い壁に変わる。


「ぐっ・・・何だこれは!?」


影山さんがぶつけた頭を抑えながら呟く。

白い壁には弾による傷が2つ。


「私達、全部映像を見せられてたってわけ!?」


夕姫の声に壁から返答が聞こえる。

壁の中にスピーカーが埋め込まれていたのだろう。


「ご名答。まんまと引っ掛かってくれたわね。


そして、チェックメイトよ。」


ガスが通路、いや、部屋に充満していく。

ガスを吸い込んでしまい、身体から力が抜けて床に倒れこむ。

視界がぼやけ、意識が遠のく。


「さーてあの子のほうもそろそろ終わってる頃かしら。」


そんな声が意識が無くなる前に聞こえた。



――――――――――――



ポタッ・・・ポタッ・・・


水滴の音だろうか。

自分の腕をふと見てみる。

腕が赤い。腕から赤い水滴がポタポタと落ちる。


「ひ・・・ひぃ!!!助けてくれ!!!」


目の前で少年は腰を抜かし、あたしに向かって叫んでいる。

うるさい。

少年の首を掴んで黙らせる。


「ガッ・・・ガハッ・・・」


少年の顔が一層恐怖が歪む。

首を絞める力を強め、骨を折っていく。

そして、引きちぎる。

温かいものがあたしに降りかかる。

首だけになった少年を投げ捨てる。


「冬樹待っててね・・・お姉ちゃん今行くから・・・」


血塗れの少女はゆらゆらと歩き出した。

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